40-27.即戦力
「そろそろ一度城に顔を出しておきましょうか」
「トニアさんをフロルに紹介するのですね」
「ええ。カノン達にもね。
先に話を通しておきましょう」
「念話で確認してみます。少々お待ちを」
ノアちゃんがフロル達に確認の念話を送る。
二人はすぐに了承してくれた。
どうやら丁度打ち合わせ中だったらしい。
皆が一緒にいるなら都合が良い。
「それでは移動します」
ノアちゃんの転移で指定された会議室に乗り込んだ。
「いらっしゃい。
紹介したいのってその人?」
あかん。カノンがお怒りだ。
見た目は笑顔なんだけど……。
「はい。トニアさんです。
Sランク冒険者でアルカのファンです」
簡潔過ぎる紹介だ。わかりやすい。
「トニアさん。こちらはカノンです。
隣が皇帝フロル。その妹のコレット。
それから隣国ムスペルの元王女、マノン。
エルフの方がセルフィーさんです」
まさかセフィ姉までいるとは。
軍に関する打ち合わせでもしていたのだろうか。
「なんだか私だけ特徴が無いみたいだわ」
「そんな事はありません。カノンは私達のブレインです。
それに最もアルカ好みの容姿でもあります」
何で知ってるの?
流石にノアちゃん相手に明言した事はないよ?
「ちょっと。ノア。
それってアリアに似てるってだけじゃない」
私がアリアをそう見てる事は周知の事実なの?
「そんな事はありません。アリアとカノンが一緒に居てもアルカの視線は四割くらいがカノンに吸い寄せられています」
「負けてるじゃない!」
「僅差です。四割五分くらいかもしれません。
ちなみにアリア以外となら六割は堅いです」
細かっ!
そんな事調べてたの!?
私も知らなかったよ!?
「アリアは仕方がありません。相手が悪すぎます」
「まあ、あの器量よしではな。
わらわも正直驚いたぞ」
「はっ!? 姉様! さては!?
浮気はいけません!!」
「え? フロル、まさかコレットちゃんに?」
「いつの間に手を出したのです?」
「んなわけなかろうが。主らじゃあるまいし」
「はいはい。お客さん放置して何時までも馬鹿話するのはやめなさい。ごめんなさい、トニアさん。改めて歓迎するわ」
「錚々たる顔ぶれね。カノンさんも元王族よね」
本当に何でも知ってるわね。
「それにエルフのセルフィーさんって伝説のSランク冒険者よね。アルカに負けず劣らず、」
「ストップ。その話は止めておこう」
「え? なんで?
セフィ姉、何したの?」
「昔の話しだよ。それより今はトニアの話しでしょ。
またカノンに怒られてしまうよ」
まあ良いや。後で教えてもらう。
「アルカには教えちゃダメだよ。トニア」
「承知したわ」
「なんでよ!?」
「恥ずかしいじゃん。今更昔の話しなんて」
「前は気にしてなかったじゃん!」
「前は前。今は今。
関係が深くなったんだから同じではいられないんだよ」
「むぅ~」
「ほら二人とも」
「「は~い」」
「ふふ♪ 本当に賑やかね♪」
「何時もこんな感じです。
きっとトニアさんならすぐに慣れますよ」
『ちょっとアルカ?
ノアはどうしちゃったの?』
『さあ? 何故かすぐに懐いちゃって。
よっぽど馬が合ったみたい』
ほんと、私も不思議なくらいだ。トニアが良い娘なのは間違いないけど、このノアちゃんの懐き具合は尋常じゃない。こんなノアちゃんはクレアの時以来かもしれない。
「それで? なにか大事な話しがあるんでしょ? この忙しい時にわざわざ新しい嫁見せびらかしにきたわけじゃないわよね?」
マノンがトゲトゲしい。
今日もマロンモードだ。
「トニアは帝国の現状にとっても詳しいの。
きっとフロル達の力になってくれるはずよ」
「そう。なら早速試してみましょう。
トニア。この国の人口と敵対派閥の割合は?」
いきなりその質問は難易度高すぎない?
あの世界みたいにネットやらがあるわけでもなし、そもそも国の人口なんて必ずしも公表されている情報でもないのだ。集計自体出来ているとも限らないし。
「国の総人口約七千万人の内、明確に敵対派閥に属する者は七割程よ。帝国内でも最も大きな力を持つギヨルド王国が中心となっているわ」
トニアは待ってましたとばかりにスラスラと語りだした。
「採用」
マノンから棘が抜け落ちた。
甘栗むいちゃいました。
「時間が惜しいわ。早速来て頂戴」
トニアの手を引いてズンズン歩き出すマノン。
カノンも慌ててついて行った。
「あらら。連れて行かれちゃった」
「私も様子を見てきます」
「お願いね。ノアちゃん」
「まったく。皇帝はわらわじゃぞ。
主らまで軽んじおって」
「もう。そんなつもりはないってば」
「そうです! 姉様!
主様はそんなお方ではありません!」
「くっ……コレットまですっかり懐きおって」
「イジケないで。私も何か手伝うから」
「言いおったな? ならば今すぐ向かっておくれ。
片付けねばならん雑事が山のようにあるのだ」
「嵌められた!?」
「人聞きの悪い言い方をするでない。
元はセフィに頼むつもりだったのだ。
だが訓練の方もあるでな。難儀しておったのだ。
代わりと言ってはなんだが、案内にコレットをつける。
二人で帝国内を軽く回ってきておくれ」
「承知致しました! 姉様!」
「そういう話し合いだったわけね。良いわ。やりましょう。
ノアちゃんとカノンにはよろしく言っておいてね」
「うむ。任された」
しめしめ♪
フロルは私の外出が制限されている事は知らないようね♪
折角だからコレットちゃんとのデートも楽しんじゃおう♪
「アルカ。まだ私が居るのも忘れないで」
そうだった。セフィ姉は外出制限知ってた。
まあでも、止めるつもりはないようだ。私の考えはお見通しみたいだけど、それだけ余裕が無いのだろう。
まあ大船に乗ったつもりで任せたまえ♪
ちゃちゃっと片付けてくるわ♪




