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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
40.白猫少女と帝国動乱・前編

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40-25.就職面接

「じゃあ先ずは、弊社を志望した動機について、は聞くまでもないわね」


「良いの?

 アルカ、本当は私のことあまり覚えてないんでしょ?」


「それは……ごめんなさい」


「ううん。気にしないで……って言うのも変だけど、少なくとも謝る必要は無いわ。私はアルカの事をよく知っているもの。正直思い出してくれただけで驚いているくらいなの」


「うぐっ……」


「あ! ごめんなさい!

 私ったらまた!」


 やっぱり心の中では不満なんじゃない? 無理もないけどさ。人生賭けて追いかけてきた相手が全然覚えてなかったんだし……。



「私の方こそ思い違いをしていたわ。さっきノアちゃんの話を聞いてそう思ったの。ごめんなさい。アルカの事勘違いしてた。まだまだ私の知らないアルカがいるってわかったの。私はそれが知りたい。だからお願い。私を側に居させて」


 つまりそれが志望動機と。最初に私の事を知ろうと思ったキッカケはわからないけれど、今のトニアにとってそれが何より大切なのであろうことはなんとなく伝わった。



『もはやファンと言うよりマニアですね』


 お姉ちゃんだけで十分だと思うんだけど……。


『気が合いそうじゃない。

 あのミユキの部屋も見せてあげましょうよ』


 それは勘弁して……。




「前向きに検討させて頂きます。

 それでは次の質問に移りましょう」


「なんでそんな堅苦しいんです?」


 うるさいやい。



「あなたの得意な事を教えて頂けますか?」


「続けるんですね。その感じ」


 お約束だからね。



「特技は諜報活動です♪」


 うん。知ってた。

まさか正直に言ってくるとは思わなかったけど。



「冒険者としては前衛職を主に務めているわ。

 魔術も多少は扱える。攻撃魔術より補助系が得意よ。

 武器は短刀メイン。暗器類も一通り」


 Sランク冒険者らしからぬ堅実なスタイルだ。


 正直予想外と言うか、むしろ少々疑わしいと言わざるを得ない。勿論この状況でトニアが嘘を付いているとも思えないけど。


 と言うのも、そもそもSランクはまともにやっていて到達できるランクではないからだ。ドラゴンを一撃で葬れる火力を持つとか、単独で魔物の巣を壊滅させられるとか、何かそういった強みが必要なのだ。


 今現在、Sランクの人数は十人もいなかった筈だ。私とクレア、それにセフィ姉は事実上引退したようなものだし。少なくとも私が会った事があるのは他に二人だけだ。それも殆ど知っているだけで親交があったわけでもない。仕事の都合で引き合わされた事があるだけだ。あの頃の私はまともにコミュニケーションなんて出来なかったからね。向こうも私の事なんて覚えてないだろう。……覚えてないよね?



『覚えてるんじゃない?』


 イロハは何かそれっぽい記憶見たの?


『ふふ♪』


 思わせぶりね。イロハはやっぱり意地悪だわ。



「言いたいことはわかるわ。アルカ。本当に私にSランクを名乗るだけの技量があるのか疑問なのよね。正直に言いましょう。私はSランクの中では最弱よ。けれど間違いなく実力で勝ち取ったものよ。少なくともアルカの前に顔を出しても恥ずかしくないと自負しているわ」


 まあ正直現状の実力は大した問題じゃないのだけど。どうせ育てる事にはなるんだし。今のトニアの実力が想像以上だったとしても、アリアより強いと言う事はあり得ない。



「それは大きく出ましたね。

 一度私と手合わせしませんか?」


「喜んで♪」


 実技試験もやるの? しかもノアちゃんが試験官?

それは厳しそうね……。


 まあいいけど。どうせノアちゃんは採用したい側だし。本当にただ実力を見てみたいだけだろう。というか遊びたいのだろう。あと自分の力を大好きなトニアお姉ちゃんに見せたいのだろう。ノアちゃんはそういう子だ。



「その話はまた後でね。

 えっと、動機と特技は聞いたわね。後は……趣味とか?」


「人間観察よ」


 即答だ。普通に考えたら当たり障りのない回答にも聞こえるけど、特技諜報活動の人が言うと若干ニュアンスが違うわよね。



「後は旅も好きよ。趣味と実益を兼ねているとも言えるわ」


 楽しく生きていたようで何よりだ。縛り付けてしまった身としては。下手するとレリアや偽神に直接手を加えられているのかもだし。



『ちがう』


 え?


『はんにん』

『ママ』


 え? お姉ちゃん?

しかも結局ネタバレするの?


『しゃあない』


 なんか面倒くさくなってる?


『そんなとこ』


 ハルちゃん、未来記憶封印したら?

ハルちゃんは秘密にするのって向いてないと思うよ?


『いちりある』


『私がやるわ。融合しましょう。ハル』


『おけ』


 そんなあっさり。

また直前でごねそうね。


 まあ、それはそれとして。

問題はトニアとお姉ちゃんの話よ。

二人にどんな関係があるの?


『みてた』

『ずっと』

『さいしょ』


 私がお姉ちゃんの下を旅立った後って事よね。

まあそれは何となく察してはいたけども。


『おせっかい』

『なかよく』


 暗示でもかけたの?

私と友達にさせたくて?


『そう』

『ききすぎた』


 なるほど……。謎が全て解けちゃったわね。

後でお姉ちゃんになんて言うべきかしら。


『叱るにしても今更よね。

 いっそ感謝してみたら?』


 それは違うでしょ。


『だからこそよ。ミユキは問い詰められなければ黙ってやり過ごすタイプよ。叱っても今更反省なんてしないでしょう。けれど敢えて感謝を伝える事で罪悪感を刺激できるわ』


 なんでイロハがそんなに詳しいの?

お姉ちゃんはまさにそんなタイプだけどさ。


『見てればわかるわよ。それくらい。

 と言うかアルカが知っている事を私が知らないわけ無いでしょ』


 それはそう。

イロハは私の記憶だって全部見てるもんね。


『よかったわね。ミユキに全部おっ被せれば今回ばかりはカノン達も怒らないかもしれないわよ』


 それは無しでしょ。


『冗談よ。ほら、話に戻ってあげなさい』


 そうね。今の話は後でまた相談しましょう。



「旅も楽しいわよね。私も色々落ち着いたらまた旅をしたいと思っているの。その時は一緒に行きましょう」


「約束よ♪」


「私も行きます」


「ええ勿論。ノアちゃんも一緒よ」


 後は誰が来たがるかな?

コマリは間違いなく来るわね。



「さて。次の質問に移りましょう」


「まだあるんですね」


 ノアちゃんもそろそろ話をしたいようだ。いつの間にかテーブルの上の食事は綺麗さっぱり片付いてる。あと二つ程質問したらまた場所を移すとしよう。帝都観光と実技試験もやらなくちゃだからね。



「トニアは今後どんな事をしたいと思ってる? もしくは思ってた? 私達のお願いとは別に、トニア自身の展望を聞かせてほしいの」


「アルカを見つけ出してもう一度友達になる事。

 それが私の夢だったの」


 原因を知った上でその話を聞くと改めて罪悪感が刺激されるわね。身内の犯行だったわけだし。何時か絶対お姉ちゃんにも謝らせよう。



「その夢は叶ったわ。ちょっと形は違うけどね。

 私はトニアを家族として迎え入れたいと思ってる」


「ありがとう♪ 本当に嬉しいわ♪」


 まだ半分くらい罪悪感とか未来知識ネタバレが理由だけど。けどトニアに対して今の私が好意的な感情を抱いているのは確かだ。



「友達になった後は?

 してみたい事とか話したい事もあったのでしょう?」


「それは語りきれないわね。けれど一つだけ。真っ先にお願いしたかった事はあるの。私はアルカともう一度冒険に行きたかった。どんな些細なものでも構わない。また薬草採取に行くのでもいい。あの時ちゃんと友達になれなかったから。今度こそはって。私はやり直しがしたかったの」


 トニアのこの想いはお姉ちゃんの細工だけが原因ではないのかもしれない。当時の私の態度や、あの今にして思えばちっぽけな魔物から皆を守った事とか、私の行方を追う中で聞いた話とか、そういう幾つもの要素が積み重なって今があるのかもしれない。



「そう。それは是非行きましょう。何か依頼を受けるのでも、単なるピクニックでも。なんなら一緒に新人パーティーについて行ってみましょうか。その方が当時の事とかも思い出せるかもしれないし」


「うん……。ありがとう。アルカ」


 あらら……。泣いちゃった……。


『罪悪感を刺激されっぱなしね。

 素直に喜んだ方がトニアも嬉しいんじゃない?』


 無茶言わないで。




「逆にトニアから質問したい事はあるかしら?」


 少ししてトニアが落ち着いてから最後の質問を投げかける。



「今後の事には関係の無い質問だけど構わないかしら?」


「ええ。もちろん。何でも聞いてみて」


「アルカが旅した中で一番の思い出は?」


「……」


「私の事は気にしないで。

 他の人の話だって大丈夫。

 アルカの事は何だって知りたいの。

 お願い。教えて。アルカ」


「……ノアちゃんと二人で二度目の旅に出た時の事かな」


「二度目? それはどうして?」


「う~ん。どうしてかしら。自分でもわからないの。

 ただ今の質問で真っ先に浮かんだのがその時の光景なの」


「どんな光景?」


「ノアちゃんと二人で空を飛んだの。

 夕暮れの雲の上で。その光景が綺麗だったから。

 記憶に焼き付いてるの」


「とっても素敵な思い出ね♪」


「今度トニアも連れて行ってあげるわ」


「是非! って言いたい所だけど、それはやめておくわ」


「そうですよ。アルカ。

 あんまり気安く広めているとまたセレネが怒りますよ」


「あれ? ノアちゃんに言ったっけ?」


「セレネから聞きました」


 あらら。

まあでも。絶対怒るわね。セレネなら。



「セレネもノアちゃんから聞いてせがんだ側なのに」


「アルカ」


「はい。ごめんなさい」


「ふふ♪」


 良かった。トニアが落ち込んでいなくて。

トニアの望む思い出の形は先に提示されていたものね。

何時かその夢を叶えるとしましょう。


 その為にももっと私とトニアが仲良くならなくちゃだ。

今行ったってトニアの望む形になるとも思えない。

私の記憶にだって根付く事はないだろう。


 その自信が付いたら誘ってみるとしよう。

トニアもそのつもりなのだろうから。

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