40-17.職場見学
ノアちゃんの新しい刀を受け取って(長い)刀談義が終わった後、私達はヴァガル帝国へと転移した。
爺さんは明日までに暫く店を空ける為の準備を済ませてくれるそうだ。驚きのフットワークだね。やっぱり店暇のかしら? 爺さんの腕なら引っ張りだこの筈なんだけどなぁ。
とにかく明日また迎えに行ってあげよう。
そう言えばギルド長の所にも顔出すの忘れてたわね。
明日は忘れずに寄るとしよう。
「カノンはどこかしら?」
「こちらです」
あら? ノアちゃん知ってるのね。
「フロルも城内にいるのよね」
「ええ。コレットもです。
後はセフィさんとマノンもですね」
「え? マノンも?
ダメよ。マノンは私の側に置くって決めてるんだから」
「我慢してください。マノンの知識は必要です」
そりゃあムスペルで英才教育は受けてたけどさぁ。
とは言えマノンはまだ十一歳よ? 任せるには早すぎない?
「代わりにマキナを付き添わせましょう」
それはノアちゃんの希望も混じってない?
「呼んだかしら?」
呼ぶ前に現れた。
「マキナ。あなたはアルカの側付きです。
今後は常にこちらを優先してください」
「喜んで」
ノアちゃんたら。
「よろしくね。マキナ」
「はい♪ お母様♪」
ダブル猫耳。両手に猫耳。悪くない。
「ところでシーちゃん」
『認めましょう』
それはよかった。
側近は枠が決まってるからね。
『今のマキナではマスターと同化出来ませんから』
ああ。そういう意味。
そもそも厳密な意味での側近とは認められてないわけか。
要するにノアちゃんと同じ扱いだ。
「側近とは別で四天王も決めちゃう?」
現在の三船霊はシーちゃん、ヤチヨ、ヒサメちゃんだ。
初代四天王の称号はノアちゃんとマキナに授けよう。
「良い考えです。是非そうしましょう」
「私とノアお母様と?」
「残り二人は誰にしましょうか。
順当に強さならルネルさんとルーシィですが」
「どちらも忙しいもの。私が連れ歩くわけにはいかないわ」
それに四天王って言うなら頭脳労働担当も入れたいところだ。当然その枠はカノンに決まってる。とは言えカノンも忙しいから側には置いておけないのだけど。
「ミーちゃんはどうしてるの?」
「ミユキお姉さんが連れ歩いています」
親子かな? 同一人物なのにやたらと仲良いよね、あの二人。似たような関係のルーシィとルビィはあまり接点ないけど。多分意図的だ。ルーシィが気を遣ってるっぽい。やっぱりついつい口出したくなっちゃうだろうしね。
「結局シーちゃんの弟子にはしなかったのね」
『少し様子を見ましょう』
そうね。未来のミーちゃんの事を思うとね。
「取り敢えずこのまま行きましょう。
いきなり四人も増やす必要はないわ。
成り行きに任せてみては如何かしら?」
そうだね。折角マキナを迎えたばかりだもんね。
暫くノアちゃんとマキナの二人と過ごしてみよう。
また一人ずつ親睦を深めていこう。
「着きました」
ノアちゃんが扉をノックしかけた手を止めた。
「出直しましょう。今は忙しいようです」
なるほど。早速修羅場ってるのか。
沢山の人がバタバタと動き回っている気配がする。
カノンとマノンのノンノンコンビは早くも受け入れられているようだ。皇帝陛下直々の命とはいえ、たった数日で大勢が従っているっぽい。また暫く忙しい日々が続きそうだ。今度差し入れでも持って来よう。
「セフィさんの所へ行きましょう。
今なら訓練中のはずです」
セフィ姉はどうかしら? 鬼教官やってるかしら?
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「やあ、アルカ。見学にきたの?
それとも参加してみる?」
「見学よ。冷やかしにきたの」
「邪魔はダメだよ。みんな真剣にやってるんだから」
「ええ。ほんと。驚いたわ」
ヴァガル帝国の軍人達はセフィの指導を素直に受け入れていた。当然最初からこうだったわけではあるまい。セフィがたったの二、三日で懐柔したのだろう。
まあ、うん。美人なエルフでめっちゃ強い指導官とか人気出るよね。なんかゲームや漫画みたいだ。帝国が滅びないよう頑張らないと。セフィ姉を酷い目にあわせるわけにはいかないからね。
「セルフィー教官!」
「今行くよ~!」
「じゃあまた夜に」
「うん。またね」
それからまた少しだけセフィ姉の教官っぷりを見学してから、今度はフロルの下へ向かう事にした。
「そう言えば私達の事普通に受け入れられてるわね?」
誰も声かけてこないし。
城の中勝手に歩き回ってるのに。
「ハルの仕込みですよ。
聞いてないんですか?」
そうなの?
『さいみん』
『かるく』
まあいっか。それくらいなら。
グッジョブ。ハルちゃん。
『ふへ』
『まかせろ』




