40-13.修業の成果
長かった。本当に長かった。
結局私だけ四半世紀くらい籠もっていたんじゃないかしら。
遂に長い長い修業編も終わりを迎えた。
私がしていたのはただの家族サービスだったけど。
ひたすら皆とイチャイチャしてただけだったけど。
肝心のイオスが結局戻ってこなかったのだ。ずっとマキナの改造に付きっきりだったようだ。しかもまだ残るつもりのようだ。と言うか女神は全員居残りのようだ。
なんか私の深層とイオスの拠点も繋いだらしい。それで力の供給も問題なく出来るそうだ。ニクスが嬉しそうな、けど同時に不満たらたらな様子で教えてくれた。イオスの勝手な行動に文句はありつつも、どんな形であれ私の側にいられる事が嬉しいのだろう。可愛い。
「ニクスぅ~!」
「アルカぁ~!」
「ほら、いい加減にして下さい。早く戻りますよ。良いじゃないですか。どうせアルカの主観ではすぐにニクスと再会出来るのですから」
それはそう。
「じゃあ頑張ってね。ニクス。
マキナにもよろしくね」
「そんなぁ……あっさり……」
「ほらお母様。こはるを開放してあげて」
ノルンが私に縋り付くニクスを優しく引き離した。
「大丈夫よ。こはる。
お母様とマキナの事はわたしに任せておいて」
「ついでにへーちゃんとミーシャの事もお願いね」
「ふふ♪ もう。こはるったら♪」
全員ノルンに任せてしまおう。
仕方ないね。一番頼りになるからね。
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「アルカぁ~~!!!!」
深層から出るなり、すぐにニクス達も現れた。
しかもついさっき見たニクス達とは完全に別物だ。
いったいあの後どれだけの期間修行を続けていたのだろう。
中でも特にマキナはずば抜けている。
ニクス達より明らかに上位の格を備えている。
しかも何やら自信に満ちあふれているようだ。
相変わらずなニクスを微笑ましそうに眺めている。
「さっきぶり♪」
「久しぶりだよぉ!!」
知ってるってば。
ただの冗談だって。お茶目だって。
だからそんな本気で泣かないでよ。
お~よちよち。
「小春! 次はあなたの番よ!」
「え? もしかして深層行くつもり?」
「必要ないわ! ついでに仕込みも済ませたもの!」
ねえ? 私の心の奥底に何仕込んだの?
「今の小春なら全て受け止めきれる筈よ!」
「!?」
あ、やば……。
「アルカ!?」
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「久しぶりね。この感覚」
どうやら私は意識を失っていたようだ。
きっと以前ノルンと契約した時と同じ現象だ。
流れ込む力の量が多すぎたのだ。よく目覚めたわね。私。
「アルカぁぁぁああ~~~~!!!」
涙でグチョグチョのニクスが縋り付いている。
「おはよう。ニクス。
大丈夫よ。今回も問題は無かったわ」
「~~~~!!!」
ダメだ。会話になりそうにない。
他の子は近くにいないのだろうか。
今度はいったい何日寝ていたのだろうか。
「おかーさん!」
今度はルーシィが現れた。
いきなり虚空から私の真上に降ってきた。
私のお腹の上に縋り付いていたニクスが、げふんと潰れた。
「流石ルーシィね。
真っ先に私の目覚めに気付いてくれたのね」
「おかーさん!? 何言ってるの!?
ルビィだよ! 忘れちゃったの!?」
え?
……え?
「いや、騙されないわよ。ルーシィ。
まだルビィとはパス繋いでないもん。
あなたはルーシィよ。間違いないわ」
「ハーちゃんが繋いでくれたの!
何時でもわかるようにって!」
まじ?
いやいや。無いって。それは無いって。
十年以上眠ってた事になっちゃうじゃん。
それじゃヴァガルとっくに戦争起きちゃってるじゃん。
「パスなんか無くてもわかるわ。
あなたはルーシィよ。おかーさんの目は誤魔化せないの」
「きっと寝ぼけてるだけだよ!
ちゃんと目を覚ましてよ!
ルビィを見てよ! おかーさん!」
食い下がるわね。
けどそんな筈はない。私の感覚は眼の前の娘をルーシィだと認識している。確かにルビィとルーシィは同一人物だけど間違えたりするわけがない。
ルーシィは何故ここまでするのだろう。
悪戯にしてもやりすぎではなかろうか。
仕方ない。そろそろニクスが窒息しちゃうし。
「……え? うそ?」
ルーシィに向かって抱き寄せ魔法を発動すると、腕の中にもう一人少女が現れた。お腹の上のルーシィもそのままだ。
え? 本当に?
本当にこっちがルビィなの?
え? え? え?
「ぷっ」
突然眼の前の少女が吹き出した。
そのまま腕の中にいる少女と共にクスクスと笑い始めた。
「「大成功~♪」」
二人の少女は寝台から飛び退いて、手を繋いでくるくるとダンスを踊り、まるで溶け合うように一人の少女に混ざりあった。
「まさか分体?」
「そう♪ 修行の成果見せたくてね♪
安心して♪ おかーさんが寝てたのは一晩だけだよ♪」
それはそれで短すぎない?
イオスの仕込みとやらのおかげかしら?
「もう。本当に驚いたじゃない」
「嬉しかったよ♪ 言い切ってくれて♪
でもどうせなら最後まで信じて欲しかったなぁ♪」
そう言う割には心底嬉しそうだ。まだ一人で小躍りしてるし。しかもまた分体を生み出してペアでも踊ってるし。浮かれ過ぎなくらい浮かれてる。ふわっふわだ。
「アルカぁぁ~~!!!」
ニクスはニクスでまだ泣いてるし。




