40-11.新装備開発
「ノアちゃん、今度は何出したの?」
「これです」
何? 綿棒? 爪楊枝?
いやでも、引っ掛ける所無いし、尖ってもいない。
受け取った綿棒(仮)を見て首を傾げていると、同じ物を手の平の上に生み出したノアちゃんがくるりと指先で回した。すると棒が伸びてノアちゃんの体格に丁度良い感じの棍に変化した。
「如意棒ね!」
「いいえ。正確には少し違います」
ノアちゃんがそう言って棒の端に持ち替えると、棒の形状が変わって今度は刀に変化した。
「これは何にでも変化する万能武器です。
勿論ナイフでも銃でも斧でも何でもござれです」
「なるほどね。良い考えだと思うわ。
その程度ならナノマシンで再現出来るはずよ」
「可能です。マスター。
早速詳細を詰めましょう。
ノア。付き合ってください」
「はい。是非」
これは限定的にこの世界の力を再現するようなものだ。何かイメージを伝える為の送信機のようなものが必要になるだろうけれど、それくらいの肉体改造ならば今更ノアちゃんも抵抗はあるまい。カノンとセレネは怒るかもだけど。
何か耳飾りとか髪飾りみたいなのも用意してもらおうか。
そんな明確な弱点を用意しておくのは微妙な気もするけど。
とは言え肉体改造を必要としない万能装備なら家族全員に支給できるだろう。ニクス世界へのシーちゃん技術持ち込み許可の件と合わせて、諸々上手くやってもらうとしよう。
「ハルちゃんは何か思いついた?」
「ネタぎれ」
「そりゃそうよね。
もう何度も潜ってるんだし」
「むずかし」
「そもそも武器なくても良いもんね。私達」
「そこがもんだい」
「ノアちゃんの如意棒も逆に思いつかなかったわ。
私の闇魔術も同じ事出来るし」
流石に銃とか機構の複雑な物は難しいけど。
取り敢えず私と同じ事を誰でも出来るようになるのは十分に有用なはずだ。そうやって一つ一つ再現していくのも悪くない手だ。
「霧化を再現出来るようなアイテムは思いつく?」
「ろぎあ」
「悪魔◯実?
それ再現出来るの?」
「ナノマシン」
「無理でしょ。元からナノマシンで出来てるならともかく」
「そうでもない」
「マキナ」
「でもほら。マキナは元々ナノマシンを扱えるように生み出されてるし」
「むむむ」
「もしかしてどうにかなるの?」
「なくもない」
「その様子だと改造が必須な感じなのね」
「そう」
「ならダメね。やっぱ」
「しゃあない」
後は何があるだろう?
「神威の再現って出来ないかな?」
「でんち?」
「そうそう。私が力を流しておけば使えるようなやつとか」
「おまもり?」
「そうそう。そんな感じ。
いっそ、どんな傷でも身代わりになってくれる的な」
「ふぁんたじー」
「ふふ♪ 流石にね♪」
「でもいける」
「未来知識?」
「そう」
ほんと、未来のハルちゃんは何でも出来るのね。
しかも残滓ですら膨大過ぎて、ハルちゃんでも全てを把握しているわけではないらしい。こうして思いついた事に引っかかる情報があるかを自ら調べないと引き出せないようだ。
「ならそれもお願いね。
シーちゃんが空いたら相談してみて」
「そっちも」
ああ。そっか。
ノアちゃんが今やろうとしている事のゴールもハルちゃんは知ってるわけか。
「そっちは任せてみない?
別に急ぐ事でもないでしょ?」
ぶっちゃけあれが完成しても戦力的には大して変化もないだろうし。むしろいきなりハイスペック過ぎるものを渡しても、皆使いこなしきれないだろうしね。
「おけ」
「ほどほど」
ちょっとは口出すのね。
まあいっか。あんまり回り道してもしょうがないもんね。
それに未来情報を与える事で、色々変化も現れるだろうし。
一度負けた未来のものより良いもの作った方がいいもんね。
「その間私はどうしてようかな?」
「でんち」
ハルちゃんが小さな勾玉を差し出してきた。
「これに神力を込めるの?」
「ちがう」
「かむい」
「それはまた難しそうね」
神威って自分自身と身に付けている物に纏わせるのが精々だもの。武器だって手放したら解けちゃうのだ。そもそもからして、流し込むって感覚じゃないしね。いくら溜め込む性質があるからって上手く流し込めるのかしら?
「やってみて」
「がってん♪」
試しに神威を纏わせてみる。
「なっ!?」
力が無理やり吸い取られてる!?
やばい!? このままじゃ!?
「すっとっぷ」
ハルちゃんが私の手から勾玉を取り上げた。
「今の何!?
全然制御出来なかったよ!?」
「れんしゅう」
「ひつよう」
そっちの!?
流す方じゃなくて止める方の!?
「がんば」
「改修出来ないの?」
「むりぽ」
まじかぁ……。
しゃあない。頑張ってみよう。




