40-10.ブレインストーミング
「新装備ってこれ、ポ◯ラじゃないですか」
「さっすがノアちゃん♪」
「ひとめで」
「きづいた」
「零の称号は伊達ではありませんね」
「なんですその反応は? 何を誤魔化しているんです?」
「「「何も~」」」
「そうですか。ではセレネに」
「させません」
「むり」
「あきらめろ」
「もうここはアイリスの中よ。
ノアちゃんに抜け出す術は存在しないわ」
「……どういうつもりですか?」
「「「ふっふっふ」」」
「三人で声合わせるのやめてください。
なんか無性に腹立ちます」
あかん。ちょっと機嫌悪くなってきた。
「ごめんて。
ちょっと調子に乗りすぎたわ」
「あやまる」
「めんご」
「私も燥ぎすぎました。
ここからは真面目に進めさせて頂きます」
「ならいいですが。
それで? いったい何をするつもりなのですか?」
「要はブレストよ。案を出し合うの。
このポ◯ラは私の案よ。私が脳内に思い浮かべたのをアイリスを介してシーちゃんが形にしてくれるの。まあ、形って言ってもまだアイリスの中でだけの話よ。開発はこれから。とにかく現実的に可能かどうかは置いておいて、各々が色んなイメージを思い浮かべるの」
「もう少し簡潔に」
「ここはイメージがそのまま形になる世界です。ノア」
「なるほど」
ノアちゃんは試しに刀を思い描いてみたようだ。
ノアちゃんの広げた両の手の上に刀がポンッと出現した。
「面白いですね。
これって装備品に限らず何でも出来るわけですよね?」
「そうよ。
欲しいキッチン用品とかでも何でも良いわ。
片っ端から妄想を形にして試してみましょうって話よ」
効果もイメージ通りのものが生み出せるからね。
このポ◯ラだって、付ければ本当に合体できちゃうはずだ。
「何故これを秘密にしていたのです?
普通に教えてくれたらよかったじゃないですか」
「「「……」」」
「まだ何か隠してます?」
「いや、そういうわけじゃないんだけどね」
「なんでも」
「かのう」
「べつに」
「かいはつ」
「かぎらない」
「やりたい放題出来てしまうわけです」
「……つまり?」
「ノアちゃんにすら頼むのが憚られるような、あんな事やこんな事も楽しめちゃうわけでして」
ハルちゃんの腕の中にセーレが出現した。
偽セーレはハルちゃんに抱きついて愛おしそうに頬ずりしている。
「なるほど。そっちが本来の目的というわけですか」
「いえ、決してそのような事はありません。最終的に段々歯止めが利かなくなるのが常というだけの話です」
「まあ理屈はわからないでもありませんが。妄想が何でも現実となるならそれも致し方ない事です。やはり何故隠していたのか不可解です。本当に他には無いのですか?」
「そう言ってられるのも最初だけよ。ここを出た後には後悔に苛まれるの。調子に乗りすぎた事を自覚して恥ずかしくなっちゃうの。どんな顔して皆に会えばいいのかわからなくなるの。きっとノアちゃんもそうなるわ。だから巻き込みたくなかったのよ」
「そんなに後悔するならやめておけばいいじゃないですか」
「むり」
「あらがえない」
「脳内の幸福が直接具現化するようなものですから。加減を間違えれば、簡単に幸せな夢へと引きずり込まれるのです。そしてその夢は高い中毒性を齎します」
「完全に危険物じゃないですか。
我慢して禁止してくださいよ」
「そうも言ってられないのよ。これってシミュレーターとしては理想形とも言えるものだから」
今度はルーシィが現れた。
ルーシィは躊躇なくノアちゃんに殴りかかっていく。
「なんですいきなり!? これは誰のイメージです!?」
「ハルちゃんよ。
しかもその娘はただのルーシィじゃないわ」
「さいきょうもーど」
「マシマシです。ハルと私の力が合わさればルーシィを更に強くする事も可能なのです」
「!? どおりで!? ちょっ!?」
ノアちゃんが追い詰められた所でルーシィの姿が掻き消えた。
「良い訓練にもなるでしょ?」
「今のルーシィをシステム的に再現するのは難しいのです」
「ハルのイメージ」
「ひつよう」
「何となく言いたい事はわかりますが……。まあ良いです。
さっきのルーシィ、もう一度出してください」
「ダメよ。ノアちゃん。
先に新装備を考えましょう。ノアちゃんも付き合って。
今のルーシィに勝てるような何かを考えてみて」
「ポ◯ラを試してみましょう
アルカと合体してみたいです」
「あれは流石に怖くない?
どんな結果になるかわからないよ?
最悪、アイリスから出られなくなるかも」
私とノアちゃんが完全に融合してしまうかも。
私はともかく、ノアちゃんが元の体に戻れないかもだ。
「ならそんな物騒なものは片付けてください」
「中身の作り込みは後でやるからさ。
これはモックってことで」
ポ◯ラはシーちゃんが生み出したガラスケースに収められ、その中程に浮かび上がった。
「ラ◯トセイバーはどうですか?」
ハイテク技術から連想したのかな?
「ノアちゃんの刀の方が切れ味良いんじゃない?」
なんなら火力も強いんじゃない?
ノアちゃんの炎魔術も中々のものだし。
「なんでもいい」
「とにかく」
「いっぱい」
「イメージ」
ラ◯トセイバーも出現し、ガラスケースの中に飾られた。
「これなんてどうです?」
なにこれ? 石の仮面?
「ジ◯ジョです」
究極生命体になりたいの?
今更吸血鬼って事はないだろうし。
「エイジャ◯赤石も必要よね」
仮面と一緒にガラスケースへ。
「ちょっと楽しくなってきました」
そう? だいぶ前から楽しそうだったよ?
「ハル。変身ベルトは要りません。
それらは既に一通り揃っています」
「ちがう」
「これまだ」
「ゼク◯ス」
既に大量の変身ベルトが収められたケースが出現し、ハルちゃんがそこに新たに一つを追加した。
「ハルのコレクション用と化してません?」
「そんな一面もあるわ。
過去に生み出したものも何時でも引き出せるから」
「つまり例の妄想の産物も?」
「いいえ。残るのはケースに収められものだけです」
「そうですか。少し残念です」
見たかったの? 見せないよ?




