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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
40.白猫少女と帝国動乱・前編

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40-1.状況整理と答え合わせ

 状況を整理しよう。


 私達はムスペルの騒動を治める為に、隣国ヴァガル帝国へと乗り込んだ。


 理由は、ヴァガル帝国がムスペル王国への侵攻を企てていたからだ。ムスペル王国のサンドラ王妃はそれを察して無茶な行動を繰り返していた。


 王妃は知っていたのだ。ヴァガル皇帝フロリアーナの真の狙いが、かつて王妃が拐かした少女を救い出す事であると。誰にも打ち明けずにいた秘密が、国を滅ぼしかねない難事へと繋がってしまったのだと。


 だからこそどんな無茶をしてでも、自身の立場を強固なものとし、備える必要があった。それが王妃なりの責任の取り方だったのだ。


 この話はここまでだ。既にムスペルの件は済んだ事だ。

ヴァガルの方に話を戻そう。




 ヴァガル帝国はこの世界で唯一ムスペル王国に匹敵しうる大国だ。当然戦争となれば生半な被害では済まないだろう。世界トップの二国が戦火に包まれるのだ。もしやすると、戦争の火種は他の国々にまで広がっていたかもしれない。何れは世界大戦にすら発展していたかもしれない。事前に気付けたのは僥倖だった。けどまだ完全に止められたわけじゃない。気を抜けるのはまだまだ先の話だ。




 ムスペル王国は名実共に世界一の大国だ。

軍事力も経済力も国土の広さすらも、ヴァガル帝国を常に上回ってきたとされている。


 故にこそ、ヴァガル帝国の野心家達は欲してきた。

羨んでいた。求めていた。焦がれていた。待ち望んでいた。


 若き皇帝陛下の決断を多くの者達が支持した。

奮い立った。湧き上がった。意気込んでいた。




 ちっぽけな、まるで皇帝を演じるだけの紛い物。

忠誠を誓う価値もない。そう見下していただけの幼き少女。


 その少女の決断に野心家達は驚きを禁じ得なかった。

正直見直しすらしていた。まさか少女がムスペルへと打って出ると言い出すとは思いもしなかった。少女が自らの立場をようやく理解し、為すべき事を為そうとしているのだと、上から目線でほくそ笑んでいた。



 けれど、それも結局は期待外れだった。少女はムスペル侵攻を取りやめた。ハッキリとそう告げたわけではないが、明らかに火消し作業に取り掛かっている。



 冗談じゃない。ふざけるな。お前が火を着けたのだろう。燻っていた劣等感を焚き付けて、皆に夢を見せたのだろう。


 彼らはそう考えている事だろう。



 皇帝は舐められている。


 かつて強き力と野望を示した兄君。そのただ一人を大罪人と断じて亡きものとし、漁夫の利で皇帝の地位へと着いた少女。


 皇帝に似つかわしくない優しさで力無き者達からの支持を集めつつも、野心家達ちからあるものをただ遠ざけるだけの愚かな少女。


 そして此度のこの失態だ。


 皇帝の信頼は地に堕ちた。

いいや。元より信頼など無かったのだ。

只々、無様にその力の無さを示しただけだ。

やはり皇帝の器ではなかったのだ。




 ヴァガル帝国は暴発寸前だ。今はまだ完全には情報も行き渡ってはいないが、近い内に必ずそうなるのだ。


 何時帝都に攻め込もうとする者達が現れるかわからない。皇帝の地位を簒奪し、自らがムスペル侵攻の旗頭となろうという野心家は少なくない。互いに牽制しあい、時に手を取り合い、一丸となって帝都を目指すだろう。


 先ずは打倒少女皇帝だ。仮にも皇帝の地位に着くものだ。

当然軍の何割かは従うだろう。けれど、切り取りもそう難しいものではない。少女には人望が無い。政治力が無い。力が無い。少なくとも、野心家達はそう考えるだろう。




 これでもこの数百年は戦争も無く平和にやってきた。

内戦の一つも無く、大国同士の大戦も無い。


 むしろこれまでが異常だったのかもしれない。

あまりにも平和な時が続きすぎていた。不自然なまでに。


 ようやく人々は目覚めたのかもしれない。

まるで夢から覚めるように。唐突に。




「これはレリアが人化した事とも無関係ではないと思うの」


 このニクスが守護する世界クオレリアの意思。

かつては意思と呼べる程ハッキリとしたものではなかった。

因果とも呼べる、ある種の概念を司る存在に過ぎなかった。


 今の彼女は原初神が与えた仮初の肉体に宿っている。

けれどそれでも、意識の大部分はこちらに移っている。

世界の管理が疎かになるのも無理からぬ事だ。


 とは言え、かつては世界、いや。そこに住む人々に与える影響は計り知れないものだった筈だ。


 レリアが干渉を止めた事で、世界は本来あるべき姿に近づこうとしているのかもしれない。




「私達は既に多くの影響を与えてしまっているの。

 この世界は今まさに動き出そうとしているの」


 どちらが正しいのかはわからない。

ニクスとレリアが数千年もの間維持し続けた平穏は、既に瓦解してしまったのかもしれない。


 これこそが宿敵、偽神の目論見なのかもしれない。



「ルーシィ。答え合わせといきましょう。

 今のこの状況に見覚えは?」


「あるよ。ほぼほぼ同じだね。

 細部は若干異なるけど、大筋は同じ流れだよ。

 一番大きな違いは、まだレリアが居なかった事かな。

 何せ原初神イオスも居なかったからね」


 結局歴史の修正力? 再現性? からは逃れられないらしい。変えるには、未来を知るルーシィから情報を聞くしかないようだ。



「この後の流れは?」


「教えて良いの?

 聞きたくないんじゃなかった?」


「そうも言ってられないもの。

 それに検証はもう十分よ」


「わかった。けど一つだけにしておこう。

 おかーさんは別に諦めたわけじゃないんだろうし」


「ええ。ありがとう。ルーシィ」


「うん。それで、この後の流れだけど。

 想像通りだよ。起きるよ。戦争。

 帝国内の内戦止まりだけどね。

 そこでおかーさんが止めちゃうから」


「偽神は諦めたの?」


「ううん。そういうわけでもないの。

 あれは気まぐれだから。思い出したらまた手を出すの。

 そうやって少しずつ、あっちこっち、無作為に。

 世界を引っ掻き回していくの」


「そう……」


 厄介なものだ。近い時間軸に手を加えられてしまうときっとこの時間軸にも波及するはずだ。理屈はわからないけれど何度もそんな影響を受けてきた。


 偽神が何れ思い出して大戦に繋げようとしてくる可能性もある。今回も私が止められるとは限らない。そもそも止めるとも限らない。カノンと約束したばかりだ。ある意味戦争が起こる事だって人の営みの一環なのだから。


 半神であり、世界の守護神を務めるニクスの代行者でもある私が、過剰に手を出すわけには行かない。それは必ずどちらか一方に肩入れする結果にしかなり得ない。必ず人々の歪みへと繋がっていく。そしてそれは何れ世界全体へと広がっていくのだから。



「さあ、皆。話し合いましょう。

 どうやってこの危機を乗り越えるのか。

 知恵を出し合いましょう。方針を決めましょう。

 私達は何をするべきなのか。何をしないべきなのか。

 線引をしていきましょう」

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