39-11.接待プレイ
「数時間ぶりね、フロル。
どう? 元気にしてる?
不自由はない?」
「おい! なんだこれは!
いったいどういう事なのだ!」
「どうって?」
意味がわからん。
わからんのはフロルもか。
へーちゃんのハイテク機器の前に圧倒されていたのだろう。
「申し訳ございません。アルカ様。
私では説明しきれず」
ここでの生活に慣れたアニエスとナディはすぐに出て行っちゃったものね。
不慣れなステラが説明出来ないのも無理はない。
「ううん。気にしないでステラ。
必要ならシーちゃんがやってくれてたはずだし。
お陰でほら、フロルなんだか楽しそうじゃない」
機械とか好きなのかもしれない。ぶつくさ言いながらあっちこっち触りまくってるし。と言うか、さっきの私に問いかけてたわけじゃなかったのね。なんなら来たことにすら気付かれてないかもしれない。シクシク。
「フロル。
ほら、ここ。ここを押すのよ。
そうするとベットが出てくるから」
「な!? ベットだと!?
この台が寝台なのか!?
布団が無いではないか!」
楽しそう。
「試しに寝てみなさいな。
きっと驚くわよ♪」
シーちゃん船のベットは不思議素材なのだ。
一見ただの平らな台だけど、すっごく寝心地が良いのだ。
「ぬお!?
なんだこれは!? なんだこれは!?」
ふぉっふぉっふぉ。語彙力を失っておるのう。
なんか可愛い。
「次はこっち。はいここ押して」
一つ一つ使い方を教えていく。
フロルは興味を失う事もなく、ひたすら驚き続けていた。
「折角だから、ブリッジにも行ってみましょうか」
「ブリッジだと!?
まさかこれは船なのか!?」
そこから?
「そうよ。
しかもこの船、空を渡る船なのよ」
本当は世界すら越えて渡れる船だけど。
そこはまあ、説明しても分かりづらいだろうしね。
「空だと!? まことか!?
ならば飛んでみせよ! 大至急だ!」
「シーちゃん」
『イエス、マスター』
早速浮かせてくれたようだ。
とは言え、フロルにはわかるまい。
この船、ハイテクすぎるからね。揺れとか一切無いのだ。
「ブリッジの前にデッキにも寄りましょうか」
「うむ! 行くぞ!」
良かった。楽しそうで。
全然心配要らなかったようだ。
「地上が! あんなに遠いぞ!
見ろ! 建物が……? あれは建物なのか!?」
コンクリジャングルは初めて見るもんね。
むしろ良く気付けたわね。
「そうよ。後で町も案内してあげる。
私とデートしましょう♪」
「うむ! この際デートでもなんでも良い!
もっと近くで見てみたいぞ!」
「ふっふっふ♪」
「あまり調子に乗らないでくださいよ、アルカ」
「ダイジョブ♪ ダイジョブ♪」
「信用できない言い方しないで下さい」
さすがノアちゃん。鋭い。
「ノアちゃんはステラのことお願いね♪」
「厄介払いのつもりです?」
「そんなわけないでしょ。
放っておけないってだけよ」
「まったく。今度私ともデートして下さいね」
「喜んで♪」
ふっふっふ♪
なんて素晴らしい日なんでしょう♪
いや、まあ、ツムギ達の事も忘れてないけどね?
「おい! 行くぞ!
次はブリッジだ!」
「いえっさ!」
ハイテンションなフロルを抱き寄せて、ブリッジに転移した。
「なんだ今のは!?」
「転移よ。この世界に来たときも似たような事したでしょ」
「良いな! 良いぞ!
許す! 気安く私に触れたことは不問とする!
バンバン使うが良い!」
「ははぁ~! 皇帝陛下の仰せのままに~!」
「うむ!」
可愛い。
「陛下。どうぞこちらへ。
陛下の自由にこの船を動かしてみて下さいませ」
「良いのか!?」
「ささ、こちらが舵です」
ナイス、シーちゃん。
急遽わかりやすいのをつけてくれたようだ。
普段見ない舵が備わってる。サービス良いわね。
「ふっはっは!」
楽しそう。可愛い。
「む? これ以上は上がらんのか?」
セーフティもバッチリだ。
流石シーちゃん。
ところでこの世界の宇宙ってどうなってるの?
後でシーちゃんかチグサにでも聞いてみよう。
そうだ。
フロルの為に小型船とかも用意してもらおう。
何なら、他の娘達の分も用意してもらって、皆でレースとかも楽しいかも。
『イエス、マスター。
手配致します』
『兵器も付けましょう。
結局サバゲーがまだですから。
代わりにそれで我慢してあげます』
ヤチヨ、そういうのも好きなんだ。
安全面マシマシなら良いよ。ペイント弾か、威力の無いレーザーかなんかでやってみましょうか。
『はい。マスター』
ふふ♪
またまた楽しくなってきた♪
いっそ、アイリスでも使ってこのまま一週間くらい過ごしちゃおうかしら♪
『すぐに手配致します。
既にこの船のデータは取り込み済みですので、然程時間は掛からないかと』
ありがとう、シーちゃん。
でもやっぱり慌てなくて大丈夫。今日はまだまだ見せられるものいっぱいあるし。
町にも行かなきゃだからね。
遊園地に行ってゴーカートに乗るのも悪くないかも。
「陛下。本日はまだまだお見せしたきものがございます。
また何時でも飛ばして頂いて構いませんので、よき所で次へ参りましょう」
「うむ! そうか!
良かろう! もう少ししたらな!」
それからたっぷり数十分は船を飛ばしてから、ようやくフロルは舵から手を離した。
ここどこかしら?
もう町は影も形も見えはしない。
まあ、心配しなくてもシーちゃんが戻しておいてくれるだろう。
「それでは陛下、お体失礼します」
「うむ! 苦しゅうない!」
どさくさ紛れにしっかりとフロルの身体を抱きしめて、私世界の町へと転移した。




