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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
39.白猫少女と王国騒動

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39-4.陥落

「エステリーナ皇女殿下!?」


「皇女様が戻られたぞ!」


 適当に城の中に転移して歩き回っていると、周囲が次第に慌ただしくなってきた。正直意外だ。誰も気付かないかとも思っていたのだけど。ステラを華美に着飾らせた影響もあるかもしれない。普段のメイド服姿なら気付かれなかったのかも。


 でもそうでもないのかな?

分かる人には分かるみたいだ。それに恐らく、臣下の中には素直に皇族として敬ってくれている人達もいるようだ。少なくとも、最初に気付いて声を上げた人達からは害意を感じなかった。純粋に喜んでくれている人達もいたくらいだ。この反応も正直意外だった。ステラはただ虐げられていただけではなかったのだ。


 何故その状況で王妃は連れ出す事を選んだのだろう。

それだけステラを虐げていたのは高い地位に着いている者なのだろうか。例えば皇帝自身とか。だとすると臣下達のこの反応は不自然だ。誰も彼もが悪人では無かったにせよ、皇帝の意思に反して敬うのも難しいだろう。その辺りも何か理由があるのだろうか。



 後地味にステラの本名も判明した。

そう言えばまだ聞いてなかったわね。


 エステルって本名の愛称だったのか。

更にそのエステルを縮めてステラと。

それもツムギなりの用心だったのだろう。



「どう?

 辛くない?」


「はい。問題ありません」


 握ったステラの手は少しこわばっている。

私は軽率な提案をしてしまった。ステラにとっては辛い場所だろうに。連れて乗り込むなど、酷い提案だった。けれどステラは気丈に振る舞っている。それだけムスペルの皆を守りたいのだ。せめて私が安心させよう。必ず守ってみせよう。



 けど、ツムギにも来てもらうべきだっただろうか。

流石にそれは無理か。ムスペルとの戦争を回避するのが目的なんだし。顔が割れているという事も無さそうだが、万が一が無いとも限らない。ムスペルにいたステラの事だってバレたのだから。


 代わりではないけど、ノアちゃんが同行してくれている。

本人のスペックが高くて尚且つ比較的冷静な子と言えばやっぱりノアちゃんだ。最近のノアちゃんは後者の部分が若干怪しくはなってるけども。



「大丈夫よ。私達がいるわ。

 ステラの事を手放したりなんて絶対にしないから」


「はい。アルカ様」


 また暫く三人で歩いていると、ようやく文官らしき男が声をかけてきた。



「貴様ら!ここを何処と心得る!」


 残念。ハズレ。

冷静に話できそうなタイプじゃないわね。



「あなた、この子が誰かわからないの?」


「馬鹿か貴様は!

 今更その出来損な」


 半端な所で言葉が途切れる。



「!?アルカ様!?」


 その場に倒れ伏した男に驚いて、ステラが慌てて私に問いかけた。



「安心して、ステラ。

 眠らせただけよ。殺してはいないわ」


 失敗した。

こんな奴と話をする必要なんてなかった。

最初から眠らせておけばよかった。



「ハルちゃん。やっちゃって」


 皇族以外全員眠らせてしまおう。

一々構っているのも面倒だ。

それに、少しくらいは示しておかないと。

また妙なのに絡まれるかもだし。



『がってん』


「アルカ。

 カノンと約束したじゃないですか。

 派手にはやらないはずでしょう?』


「大丈夫よ。ちょっと寝てもらうだけ。

 皆が覚えていなければ大した問題でもないでしょ」


 とは言えノアちゃんの心配も尤もだ。

これ以上の騒ぎが起きないよう気を付けよう。



「シーちゃん。案内して」


『イエス、マスター』


 まっすぐ皇帝達の下へ行くとしよう。

シーちゃんが上手く集めてくれるだろうし。


 程なくして、私達は謁見の間へと辿り着いた。

そう多くはないが既に皇族達も集められている。まあ、その為にわざわざ歩いてきてあげたんだけど。転移で来て待たされるのもしゃくだからね。いっそ、玉座にステラ座らせておいても良かったかもだけど。いい挑発になったかも?


 いやまあ、挑発はもう十分か。

この人達も見てきたはずだ。城中の人達が眠りこける中を歩いてきたはずだ。それを見せつけるためにこんな手間をかけたんだから。これで私の力は理解できただろう。無駄に歯向かってくる事も無いはずだ。



「ご機嫌麗しゅう、皆様。

 突然の訪問と無断での侵入を謝罪するわ。

 それで、私の要件なんだけどね。

 私の伴侶の事で隣国と揉めそうだって噂を聞いてね。

 誤解を解いておこうと思ってお邪魔したの。

 皇帝はどなたかしら?」


「「「「「……」」」」」



 集められた内の一人、一際豪奢な衣装を身に纏った少女が堂々と玉座に腰を下ろした。



「わらわの顔を知らぬとはどこの田舎者じゃ?

 よい。許す。名を名乗れ。

 我が妹を連れ戻した褒美じゃ。

 この際だ多少の無礼も目を瞑ろう」


 え?

どゆこと?


 何であの子、ステラとそっくりなの?

どうりで城の人達がすぐにステラの事に気付いたわけだ。

毎日ステラと同じ顔を見ていたからだ。当たり前だ。



「私は冒険者アルカ。

 ステラ、いえ、エステリーナの伴侶よ。

 先に言っておくけれど、別に返しにきたわけじゃないわ。

 取り戻したいなら、ムスペルではなく私からにしなさい。

 そう伝えに来たのよ」


「聞いてもおらん事までペラペラと。

 これだから冒険者風情は。礼儀というものを知らんのう」


「生憎と、私の伴侶を虐げた者達に垂れる頭は持ち合わせていないの」


「何を誤解しておるか。

 その者共はわらわがこの手で粛清した。

 既にこの世にはおらんぞ」


 この子、まさか帝位を簒奪したの?

妹の仇を討つために?



「あらそう。

 なら手が回りきっていないようね。

 さっきもそんなの一人見かけたわよ」


「うつけ者め。雑魚にまで構っておれんわ。

 わらわが首を刎ねたのはそれに値する者のみだ。

 情勢の変化に気付けぬ愚か者は何れ排斥されるのだ。

 わらわが直接手を下す必要などなかろう」


 皇族とか重臣の人達だけって事か。

この様子だとこの子は自らの両親すらも手にかけたらしい。

皇族として集められたのは、少女皇帝を含むたった六人だ。

本当にこの場に集まった以外の皇族が存在しないようだ。



「そんなに妹が大切なら、どうしてもっと早く手を差し伸べてあげなかったの?」


「つくづく愚かだな貴様は。

 エステルがこの城を出たのは僅か六つの頃だ。

 双子であるわらわに何が出来たと言うのだ」


 六歳。そんな小さかったのね。


 大体十年ほど前か。

王妃様、意外と最近までやんちゃしてたのね。なんか、ツムギの認識はだいぶ偏ってそうだわ。私もツムギの又聞きから持った印象が大きいから気をつけないと。人物像がだいぶブレてきた気もする。


 それにこの少女皇帝はそんな小さかった頃の記憶を理由に皇帝の地位を簒奪したのか。それだけステラのされていた事も凄惨だったのだろうか。六歳の少女に親殺しを決意させるとは、いったいどれ程のものだったのだろうか。



「それは失礼。皇帝陛下。

 それで?

 今回、ムスペルに仕掛けようと思ったのはエステルを取り戻す為でいいのよね?」


「それ以外に何がある。

 わらわの手は血に塗れておるが、酔狂で戦争を起こす程愚かではないぞ」


 よかった。

そこの前提が違ったら交渉にならないものね。



「ならわかるでしょ。

 もうムスペルに攻め込む理由はないわ。

 戦争は回避されたと思って良いのよね?」


「お主の出方次第だ。

 大人しく我が妹を返すならばよし。

 そうでなければ、ムスペルを討ち滅ぼそう。

 さすれば、お主も相手をする気になるのだろう?」


「そんな事しなくたって話くらいは聞いてあげるわ。

 ステラ自身が望むならたまの里帰りだって許してあげる。

 そのチャンスくらいはあげるわ。

 ステラの為を想って行動したあなたに免じてね」


「下がれ」


 他の五人の皇族達に命ずる少女皇帝。

素直に五人が謁見の間から退いた事で、この場には私達三人と少女皇帝だけが残された。



「何が望みだ?

 冒険者アルカ。そなたの願いを聞き届けよう。

 だから妹を返せ。わらわにはその子が必要だ」


「返せないと言っているでしょう。

 なんならあなたを貰ってあげましょうか?

 そんなに妹と一緒にいたいなら、悪くない提案でしょ?」


「……愚か者め。

 そのような勝手が許されるものか。

 わらわには責任があるのだ」


 そうよね。

いくら妹の為だからって、国を乗っ取っておいて放置も出来ないわよね。



「なら仲良くやりましょう。

 ゆっくりお茶でもしながら話し合いましょう。

 先ずはあなたの名前を教えてくれる?」


「お主、本当にわらわの事が眼中に無かったのだな。

 まさか皇帝の名も知らぬ者にこうも好き放題されるとは」


「ごめんね。けど今からでも遅くはないわ。

 これから仲良くしましょう」


「フロリアーナだ。わらわの名は」


「よろしく♪

 フロル♪」


「はぁ……。

 なんなのだいったい……」


 頭を抱え込んじゃった。

やりすぎたかしら?

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