38-53.魔神誕生
「リヴィの相棒について提案があります」
「聞きましょう」
「ハルをベースにしたフィリアスではなく、リヴィ本人をベースにした新たなフィリアスを生み出しては如何でしょう」
『めいあん』
『ためしてみる』
「ハルちゃんステイ」
まったく。何を言い出すかと思えば。
確かにそれならリヴィの指導役として相応しいかもだけど。
とは言え、今までタブーにしてたような事をいきなり解禁しすぎだと思うわ。ノアちゃん、ハルちゃんの影響滅茶苦茶受けてるじゃない。
『いっそ混成にしてみたら?
吸血鬼とドラゴンと人魚の要素、そこに神の力も混ぜ込んで、魔神とでも呼ぶべき存在を生み出すの』
「イロハまで何言ってるのよ」
何時もは止めてくれるのに。皆がボケに回ると大抵ツッコんでくれるのに。よりによってこのタイミングでの悪ノリモードは止めて欲しい。
『私の事もお忘れなく』
シーちゃんまで!?
エルナを生み出したばかりでしょ!?
『いっそベースは小春先輩の分体にしてみては?
エルナと同じ手法で命を付け足せば手っ取り早いかと』
ちょっと、ヤチヨ!
絶対私の事困らせて楽しんでるんでしょ!
『ミーシャも~まぜたら~?』
「何を!?
ミーシャ本人を素材にしちゃうの!?
流石にそれはダメよ!ヒサメちゃん!
ミーシャだって私の大切なお嫁さんよ!?」
『ちがくて~』
『はんしん』
『うみだす』
『まじん』
『もじどおり』
『かみにする』
「それならニクスに頼んだ方が良いんじゃない?」
『ミーシャ』
『てきにん』
『データ』
『いっぱいある』
なるへそ。
既にチグサ達が研究し尽くしているのか。
今まで散々おもちゃにされていたのだろう。哀れミーシャ。
『培養しましょう。
マスターの分体をベースに、ミーシャの細胞、ドラゴンと人魚と吸血鬼の複合魔石。最後に私のナノマシンを加えましょう。それで肉体は完成です。後はエルナの時と同様です。コアから生成した魂、ハルシード、更に加えてエルナが引き出したルネルの記憶。これらを植え付けます。これでより強大な魔神が誕生するはずです』
「ダメだってば!
しかも複合魔石って!
ニクスが許可出すわけないでしょ!?」
それに人魚と吸血鬼の魔石ってどこで手に入れるのよ!?
ドラゴンはそこらにいるでしょうけど!
『問題ないわ。ダンジョンコアで生み出せばいいだけよ』
「その手が!?
いやいや!ダメでしょ!
結局人魚倒すんでしょ!?
魔石抜き取るんでしょ!?
それはダメだって!レーネに顔向け出来なくなるって!
と言うか何で皆乗り気なの!?」
「夢物語で良いと言ったのはアルカじゃないですか」
「あ、そういう事ね。
よかった。皆、本気じゃなかったのね。
あはは♪すっかり騙されちゃったわ♪」
「『『『『『……』』』』』」
あれ?皆さん?
『ダメよ、アルカ。
ノアは本気よ。
本気で良いかもと思ってるわ』
「ちょっと!ノアちゃん!?」
「余計な事を言わないで下さい、ルチア」
『まあでも、正直私も面白そうだと思うわよ』
「ルチアまで!?
ダメだって!絶対怒られるって!
カノンとセフィ姉が許さないってば!」
そう言えば、エルナの事何も相談してないのよね……。
後で叱られなきゃ……うぐぅ……。
『もうこの際だから、二度目も変わらないんじゃない?』
「ダメだってばぁ……」
『たちば』
『ぎゃくてん』
「ハルちゃんのせいでしょ!?
は!?まさかハルちゃん!?
このまま全員寝取るつもりなの!?」
「寝取るは違うのでは?
全員ハル化するだけで。
一番にアルカを想っているのは変わりません」
「ハル化って何!?
やっぱノアちゃん自覚あったの!?」
「いえ、そういう意味ではなく。
少し落ち着いて下さい。
これはただの談笑です。
アルカがそう言い出したのですよ?」
「なら本気じゃないんだよね?
魔神なんて生み出さないよね?」
「……今がチャンスでは?」
「ノアちゃぁん!?」
「考えてみて下さい。
今は女神達が不在です。
この後、どうせカノン達からも叱られるのです。
今この時こそ、罪を重ねるには都合も良いのでは?
この時を逃しては、リヴィの為の最高の相棒も生み出せないのでは?」
そうだった!
ノアちゃんリヴィの為なら色々緩むんだった!?
『けいかく』
『つめる』
『そうきゅうに』
『安心なさい。ノア。
私達だけで深層に潜りましょう』
「名案です!イロハ!」
『至急データを集めます』
『小春先輩。
私と少し席を外しましょうか。
大丈夫です。天井のシミを数える内に全て終わります。
いえ、終わった後ですね。慰めるのは。そういう話でした』
『ヒサメも~アルカさま~なぐさめる~』
「待ってよ皆~!
ダメだってばぁ~!」
『これは酷いわね。
側近とか言って、まるで制御できてないじゃない』
「ところでアルカの分体はどうするのですか?」
『ハルがだす』
「そんな事まで出来るのですね。
なら問題は無さそうです」
「問題だらけだってば!
誰か私の味方はいないの!?
は!?そうだ!呼べば良いんだ!
助けて!ミヤコ!ハルカ!」
「参上いたしました。アルカ様。
皆様。どうか落ち着いて下さいませ」
さっすがミヤえもん!
状況はわかってるのね!
話が早くて助かるわ!
「なに?
どうしたの?
今、良いところだったんだけど」
あ、ごめん。ハルカ。
なんか鍛冶師モードだった。
そっか。見ないと思ってたら。
シーちゃんの船に作ってもらった鍛冶場で練習してたのね。
「駄目です!それはズルいです!」
「いきなりカノン達呼び出さなかっただけ温情でしょ!
ほら!皆!落ち着いて!一端冷静になりましょう!
ミヤコもそう言ってるじゃない!」
『だがとまらない』
は!?
気付いた時には遅かった。
眼の前に新たに一人の少女が加わっていた。
どうやら本当に勝手に深層に潜って生み出してきたらしい。
『なづけよろ』
なんてことを……。




