38-52.正反対な二人
「ルネル!
見て欲しい子がいるの!」
取り敢えず乗り込んでみる事にした。
「なんじゃ?
今はアリア達の時間じゃろうが。
相手なら後でまたしてやるから大人しく待っておれ」
今日は流石にルイザ来てないのね。
アリアもこっちにいるって事は、特別教室も無かったようだ。
もしかしたら今頃リリカとルイザで何か相談してるのかも。
後で話を聞いてみよう。
「それはそれでお願いね!
ハルちゃん!エルナ!やっちゃって!」
『『がってん!』』
抱き寄せ魔法でルネルを腕の中に強制召喚し、ハルちゃんが私とエルナをルネルと契約させた。
さすがのルネルも一度囚われてしまえば対処は難しい。
今回はギャラリーも大勢いる。それが理由かはわからないけれど、時間を巻き戻される事はなかった。
「何をしおった!?」
『よろしく♪ルネル♪』
既に勝手に同化しているエルナが、内側からルネルに話しかけた。
「妙な真似をしおって。
このような騙し討ちをせんでもよかろうに」
「頼んだら素直に受け入れてくれた?」
「今更抵抗なんぞせんわ」
あれ?
これもしかして怒られない感じ?
ちょっと予定と違うのだけど。
相変わらずの気抜けルネルだ。
「まあ、そういう事だから。
これで用事はお終いよ。
エルナと仲良くね。
後で感想聞かせてもらうから」
「あ!おい!待たぬか!」
ルネルの引き止める声を無視して、その場を離脱する。
後はエルナが上手くやってくれるだろう。
エルナとも少し時間を取って深層で一緒に過ごしてみたけれど、中々良い子だったからね。ルネルも安心して身を任せると良いんじゃないかな。まあ、エルナはちょっと過激な所もあるから、そこはルネルが上手く制御してくれると嬉しいのだけど。お互いに影響し合ってくれれば尚良しだ。うんうん。
「さて。作戦成功ですね。
この際ですから、リヴィ専属の娘も生み出してみては?」
一部始終を見て、一緒に逃げてきたノアちゃんがそんな事を言い出した。
「ダ~メ。
リヴィは本人が私の専属希望なんだってば。
レーネと同じよ。私から誰か貸し出す形にするわ」
「ヤチヨかヒサメは早くもクビの危機ですか」
『『そんなぁ~!』』
「違うから。
そうじゃないから」
「他に人員なんていましたか?」
「いや、いないんだけどさ」
「ならリヴィ専属予定の娘も先に用意しておきましょう。
アルカの専属として側で教育しておけばいいじゃないですか」
「ノアちゃん?
突然どうしたの?
前は散々嫌がってたのに」
「羨ましくなったのです。
エルナのような娘がリヴィの側にいてくれれば安心できますから」
「だからって……。
まあ良いわ。なら真剣に考えてみましょう。
場所を移して会議をしましょう」
「感謝します」
「ルネル達の訓練時間が終わるまでね。
その後夕食だし、皆で話し合う方も詰めとかなきゃだし」
「まだ早いのでは?
人員配置の見直し案ですよね?
セレネ達教会組にもう数日は時間をあげるべきかと」
「でも、そうこうしてる内にムスペル組も帰って来るわよ?
研究所作ったりとか他の準備も必要なんだし、早めに動くべきだと思うのだけど」
教会組の分は、後で適宜調整すればいいだけだし。
「ニクスが戻ってこない事には、具体的にどういう事をするのかもわかりませんよ?」
「そこはほら。
チグサ達に聞いて、何が必要なのか……ああ、でも。
シーちゃんの技術を使うかどうかって問題もあるのか。
ニクスに許可取らないとだわね」
「そうです。
お爺さんに頼むのか、その辺もハッキリさせないとです」
「爺さんにはどの道来てもらわなきゃだから、先に箱だけ作っておかない?」
「それは構いません。
けどカノンとの相談も忘れないで下さいね。
今この家の財政はカノンに任せているのですから」
「そうだったわね。
うっかりしていたわ」
流石に今の私の手持ちで建物建てるのは無理がある。
そもそも、指輪の代金とデート費用の為のものだし。
早くまだ作ってない子達との指輪も作りに行かなきゃ。
いや、もう私の指に付けられる所なんて無いけど。
指輪四十個は無理だって。どう考えても。
「やっぱり会議は必要ね」
「明日にしましょう。
連日では皆疲れてしまいます。
今晩は早めに寝かせてあげましょう」
「まあそれもそうなんだけどさ」
ちょっとここ数日は特に慌ただしすぎたものね。
バンバン深層を利用している私達と違って、大半の娘達は疲労や心労も溜まっているはずだ。焦って詰め込み過ぎるのはまずいかもしれない。
「ルネルさんの事もあります。
アルカも仕事は程々にして、数日はルネルさんの側にいてあげて下さい」
「数日は厳しいわ。
分体でいいならつけとくけど」
「そういう話ではありません」
まあわかってるけどさ。
「アルカは働きすぎです。
私達はそんな風にさせる為に軟禁したかったわけではないのです」
「ノアちゃん……」
「今日一日見ていて改めてわかりました。
やはり私が側に居ないとダメなようです」
「今日は遊んでただけじゃなかった?」
ルネルと一緒にゲームしてただけだ。
普段に比べたら随分と大人しいものだ。
「常時分体達も維持しながらですよね?
今もレリア、ステラ、レヴィとも一緒にいるのですよね?
先程まではエリスとも。そんな状態で◯リカしてれば負けるのも当然です。いくらアルカが凄いからって、限界はあるでしょうに。いっそ分体など止めてしまってはどうです?
一人一人に向き合って、着実に問題を解消していってみては?」
ノアちゃんらしい。
浮気性の私と違い、ノアちゃんは何時でも一途で一直線だ。
私達って、まるで正反対なのよね。
だからこそ惹かれるのかしら?
まあ、ノアちゃんも最近は何人かに手を出してるけど。
これは私に影響されたせいかしら?
でもまあ私と違って、ちゃんと一人ずつ着実に攻略を進めているのだろうけど。
何れ本当にハーレム乗っ取られるかも。
でも、私が増やす速度に追いつけないだろうから心配要らないかな?
「なんか段々お説教にシフトしてない?」
「それだけ心配なのです。
アルカが無茶をしているんじゃないかと」
「うん。まあ大丈夫よ。
無茶してないわけじゃないけど、多少は必要だもの。
少しずつでも無茶してかないと人って成長しないでしょ」
「半端な誤魔化しは止めて下さい。
そもそも、一つ一つの事に注力出来ない人が真の成長を遂げる事はありません」
「それを言われると耳が痛いわ」
「アルカは浮気性ですからね。
その性根、どうにかして叩き直せないものでしょうか」
「なんかノアちゃんが何時もの感じに戻ってきたわね。
昨日からノアちゃん、少し浮かれポンチだったから心配してたけど」
「アルカを見ていれば自然とこうなるのです。
もっと私を安心させて下さい」
「はい。頑張ります」
「それで?
今のアルカがすべき事はわかりましたか?」
「ノアちゃんとのんびりイチャラブする」
ついでにリヴィの専属について話し合う。
あくまで雑談レベルで。夢物語を語るように。
折角なら、エルナを超える存在を生み出す方法も考えたら面白いかもしれない。
シーちゃんとハルちゃんが怒るかもだけど。
「正解です」
そっかぁ~。正解かぁ~。
まあいいか。今日一日だけは。
比較的ノンビリモードでいきましょう。
ムスペルの件だって昨日あれだけ頑張ったんだから。
あとはツムギとマノン、それにヒオリとサクラを信じて待つだけだ。
女神ズもきっと今頃色々頑張っているのだろう。
皆を信じて待つのも大切な事だ。うん。




