38-42.思い出話
「とまあ、そんな感じなのよ。
セレネはどう思う?」
会議後、予定通りセレネと合流して三人で深層に潜った。
いつも通りたっぷりイチャイチャした後、三人でベットに転がりながらセレネにも配置換え案を一通り伝えた。
それから教会組の意見も聞いてみる事にした。
教会組は今回の一連の騒動で最も影響を受けた筈だ。
プランの変更に伴い、人員の見直しも必要になるだろう。
「悪いけどもう少し答えは待って。
混沌ちゃんと因果の脅威が無くなったのだもの。
こっちも色々と調整が必要なのよ」
「アムル関係の話?
結局まだ教えてもらえてないけど」
ノアちゃん曰く次善策のつもりで残しておくそうだけど。
「そんな所よ」
セレネも明かすつもりはなさそうだ。
「グリアが考えてくれてる感じかしら」
「そうね。
元々の計画は大きく変更する必要があるから」
「そもそも必要無いんじゃないの?」
「その手には乗らないわよ」
「別にカマかけしてるわけじゃないわ」
「アムルの事はもう少し待っていなさい」
「アムルの事が気になって問い詰めてるわけでもないわ」
「やっぱり問い詰めてるんじゃない」
「いや、今のはそういう意味じゃなくて。
まあ良いわ。話を変えましょう」
「悪いわね」
「セレネが謝る事じゃないわ」
私の為なんだろうし。
「教会組の配置は一旦そのままで良いわ。
変更が必要なら、皆と話し合う時までには決めておくわ。
後は、屋敷の管理も任せておいて」
「うん。わかった。お願いね」
これで後の問題は子供達の教師役か。
これまでみたいに特定の誰かに担当してもらうのではなく、一応のシフトでも組んでその時々で手が空いてる誰かが見る感じにするしかなさそうだ。
リリカがルイザ達との特別教室のついでに放課後は見ててくれると都合が良いけど、リリカの本命はリオシアの内偵だものね。そっちの仕事もあるだろうし、やっぱり任せきりには出来そうにない。
いっそヒサメちゃんと二人で組んでやってもらおうかな?
早速側近からは外す事になってしまうけど、能力的には申し分ない。後で試しに打診してみよう。聞き方は気をつけないと。速攻でクビにするのは無しって言ったばかりだし。
やっぱこういう時にミヤコが居てくれると心強いのよね。
早く引き抜き頑張らないと。いやでも、ミヤコは私世界の管理班で頑張ってくれてたからなぁ。優秀だからって強引に引っ張り回すのは良くないよなぁ。でもついつい頼りたくなるんだよなぁ。これ、絶対ダメな上司の思考だよなぁ……。
「何妙な顔をしてるんです?」
「えっと……ほら、その、リリカの特別教室の件で……」
ミヤコの事はクドいって言われるのがオチだ。
だからって、話題選び間違えたかも……。
「良いですよ」
「本当に?
もう機嫌損ねたりしない?
また喧嘩するの嫌よ?」
「あの時は失礼しました。
もう大丈夫です。
アルカもわかってくれましたから」
そりゃあまあ、ノアちゃんの気持ちはわかるけども。
「何の話?」
セレネは知らなかったのか。そう言えば。
「ほら、昔住んでた私の家あるじゃない?」
「ああ。アルカがデリカシーの無いことでも言ったのね」
「いや、言うほどじゃないと……いえ、その通りです」
「違いますよ。
我儘を言ったのは私です。
アルカは十分に気を遣ってくれていました」
本当にノアちゃんは吹っ切れたようだ。
まさかこの状況でフォローしてくれるとは。
「リリカがあの家を使うと言い出したわけね。
それをアルカが事前にノアに相談したと」
「うん。そういう事」
「ならノアが悪いわね」
「だからそう言ってるじゃないですか」
「いい加減大人になりなさいな。
あと半年もしない内に成人じゃない。
今のノアの姿を見ても、とてもそうは思えないけど」
「余計なお世話です」
ノアちゃん、律儀に九歳&メイドVerのままだからね。
今は服着てないけど。
喧嘩してもそこは守ってくれていたのだ。
ノアちゃん可愛い。
「早いなぁ。
もうそんなに経つんだぁ。
初めて会った頃はこんなに小さかったのに」
ノアちゃんを全身で抱きしめてサイズ差を実感する。
小さくて可愛いノアちゃんもいいけど、そろそろ何時ものノアちゃんに戻ってもらってもいいかもしれない。
「私も変身してあげようか?」
「うん。お願い」
流石セレネ。ノリが良い。
ノアちゃんにももう少しこのまま過ごしてもらおう。
「どうかしら?
おかしな所はない?」
「話し方が違います。
昔のセレネはもっと可愛かったです」
「無茶言うわね。
う~ん?どうだったかしら?
流石に思い出せないわ」
そういうのって思い出せないよね。
「ノアちゃんは変わらないよね。
昔からしっかりしてたし」
「今ではすっかり逆転しちゃったわね」
「気の所為です。
今も私の方がセレネよりしっかりしています」
「あらあら。ふふ。可愛いわね。ノアは」
「むっ」
「は~い。喧嘩しな~い」
ちびっ子モードのノアちゃんとセレネを抱きしめて仲裁を試みる。
「なんだか妙な気分だわ。
この姿でこうしているのは」
「偶に変身してるじゃないですか」
「今は普通にノンビリしているだけだもの」
「ノンビリしすぎですね。
そろそろ帰りましょうか」
「嫌よ。まだまだ一緒にいるの。
私、この後チハちゃんズ決起会と側近新人歓迎会もしなきゃいけないんだから。もう少しゆっくりさせてほしいわ」
「私達も参加しましょう」
「良いわね。
その提案、乗るわ」
「本気?
邪魔しちゃダメよ?」
「しませんよ。
アルカがどれだけ揉みくちゃにされたって見逃してあげます」
「なら良いけど。
多少盛り上がるだろうけど、叱るのも止めるのも無しだからね?」
「多少ならね。
今日はもう嫁を増やすのは認めないわ」
「アルカが流されないよう見張っておかなければですね」
「やっぱり止める気なんじゃん」
「無礼講で済む程度にしておきなさいって話よ。
酔った勢いで一線超えるのは別の話でしょ」
「信用ないなぁ……」
「あると思っているのですか?」
「うぐっ……」
「まあ、そうイジメないであげなさいな。
アルカはよく頑張ってるわ」
「汚いです、セレネ。
どうしてそう、梯子を外すのですか。
言い出したのはセレネでしょう」
「参加すると言い出したのはノアじゃない」
「まったく。セレネは口が減りませんね。
思えばそこだけは最初からだった気もします」
「それはノアもでしょ」
「二人ともよ。
昔から頼りになる良い子たちだったもの♪」
「アルカは昔の方が頼りになった気がします」
「そんなぁ……」
「冗談です。
今も頼りにしていますよ。アルカ」
「もう。ノアちゃんたら」




