38-35.行動開始
「修行終わったのね。
お疲れ様」
ニクス世界に戻るとセレネが早速気付いてくれた。
どうやらノアちゃんの変化も感じ取っているようだ。
ノアちゃんに近付き、遠慮なく全身を触って何かを確認し始めた。
ノアちゃんは抵抗なく受け入れつつ、セレネが顔を上げたタイミングで顎に手を添えると、そのまま引き寄せてキスをした。
「ダメよノア。
いくら寂しかったからって。こんな所で」
カノンが苦言を呈してノアちゃんとセレネを引き剥がそうと近づいた。ノアちゃんはセレネを片腕に抱いて留め置きながら、カノンも引き寄せてキスをした。
「ちょっと!ノア!」
カノンが抵抗しようとするも、ノアちゃんに敵うはずもなく、あっさりと餌食になってしまう。
私はノアちゃんを抱き寄せ魔法で腕の中に召喚した。
「強引すぎです。アルカ。
アルカとは散々したでしょう?」
「バカな事言ってないで話し始めるわよ」
「ノア!いったいどうしちゃったのよ!」
カノンが混乱している。
セレネは素直に嬉しそうだ。
ノアちゃんの変化が自分好みだったからかしら?
「マノン、成長したね」
セフィ姉はマノンに近寄って頭を撫でている。
そしてツムギの下へはステラが近寄って、ツムギに勢いよく抱きしめられている。
「マズいかな?
少し身長も伸びちゃってるのよね」
無理もない。結局半年近くは深層に潜ってたんだから。
十歳のマノンなら背も伸びるだろう。
「そっちは別に良いんじゃない?
言われなきゃ気付かないと思うよ。
毎日見ているならともかく、王妃様ってずっと留守にしてたんでしょ?」
ああ、マノンの成長って実力の方を言ってるのか。
流石セフィ姉。以前マノンと一緒に訓練してたから一目で違いに気付いたのね。
まあ身長の方もサクラに頼めばどうとでもなるけど。
「そこの判断はマノンとサクラに任せるわ」
「小春、私達は早速行ってくるわ」
「私も同行致します。姫様」
「ダメよ。あなたは残ってなさい。
足手まといよ」
そんな言い方しなくても……。
ステラは城に入れないとはいえ……。
「……かしこまりました」
ステラは渋々引き下がった。
どうやら勢いで同行を願い出ただけだったようだ。
「安心して。夜には帰ってくるわ。
向こうで寝泊まりするのも色々問題があるでしょうから」
また暗殺者なりを差し向けられる可能性はある。
それで害があるというわけでもないが、余計なトラブルは避けるべきだ。
「ツムギとマノン、それにヒオリとサクラ。
みんな頑張ってね。何かあったらすぐに言うのよ。
無理だけはしないでね」
「ええ。ありがとう、小春。
お陰で準備万端よ!
いってくるわね♪」
ツムギ(inヒオリ)が転移した。
「アルカ、あの約束忘れないでね」
「もちろん。帰ってきたらマノンもお嫁さんよ」
「愛してるわ。アルカ。良い子で待っていなさい」
マノン(inサクラ)も姿を消した。
「アルカ?今の話は?
ちゃんと説明してくれるのよね?」
あかん。カノンがお怒りだ。
勝手に嫁宣言したから。
「それより聞いてよカノン!
ノアちゃんったらね!」
秘技!話題逸らし!
どの道怒られるけど!
「そうよ、ノアよ。
ノアにいったい何があったの?」
良かった。釣れた。
「ハルちゃんの一部と融合しちゃったの」
「「……はぁ?」」
セレネも乗ってきた。
というか、私に怒りを向けてきた。
「違うの!私は止めたの!
ノアちゃんと喧嘩までしたんだから!」
「言い訳してないで説明しなさい」
「はい……」
やっぱり私が怒られるんじゃん!
「かくかくしかじか」
私は説明した。
ヘラヘラと腕の中で笑うノアちゃんを突き出しながら、悪いのは全部この娘達なんですと訴え続けた。
「大丈夫です。私は何も変わってません。
今は少し浮かれているだけです。アルカ曰くですが」
自分で言うな……。
「まあそうね。
ノアは大丈夫よ。カノン」
セレネがお墨付きをくれた。
ノアちゃんとパスで繋がっているから、セレネにはノアちゃんの本当の心が伝わっている。
「そうなの?」
「ええ。全部自前よ。
このヘラヘラっぷりも。
嬉しくてたまらないのよ。
私達に会えた事が。アルカに抱きしめられている事が」
逃さないように掴まえてるだけなんだけど……。
「セレネがそう言うなら……でもやっぱり……」
「会議もこれでお終いにしましょう。
ツムギ達は出発したのだし。
少しノアと話をしてみるわ」
「私も。良いわよね?セレネ?」
「ええ、もちろんよ。カノン。
アルカも付き合いなさい。
少しノアを調律してあげないとだわ。
何時までもこれじゃあ困るもの」
調律?ピアノ?
まあいっか。
取り敢えずセレネに任せよう。
私では数ヶ月かけても元のノアちゃんに戻せなかったけど、セレネならきっとチョチョイのちょいだ。うんうん。
「そうそう。
その前にマノンとの事も話してもらいましょう」
あ、はい。お話致します。




