38-32.悪巧み
イロハ、ツムギ、マノンと順にデートを満喫し、ゲーム世界から出た私達は、ノアちゃんとハルちゃんの本気すぎる戦いを目の当たりにして愕然とした。
「ノア姉さまは、やはり凄いです……」
いやこれ、そういうレベルじゃ!?
何時ものノアちゃんと全然違うじゃん!!
しかもなんか全身光ってるし!
ていうかあれ、神威じゃない!?
どゆこと?ノアちゃんも半神になっちゃったの!?
まさか私への怒りでスーパーノアちゃんに目覚めたの!?
『落ち着きなさい。
ハルが何かやらかしたに決まってるでしょ』
「ストップ!二人とも!
一旦お終い!
こら~!止めなさ~い!!」
「なんです。良い所だったのに」
「じゃまだめ」
「なじむまで」
「つづける」
ノアちゃんとハルちゃんが渋々こちらに向き直って近づいてきた。
「ハルちゃん!ノアちゃんに何したの!?」
「じっけん」
「何の?」
「ゆうごう」
「それってまさか、ルーシィの言ってたやつ?」
「そう」
「ハルのいちぶ」
「うえつけた」
な!?
「ノアちゃん何でそれ受け入れちゃったの!?」
「違います。勝手に植え付けられたんです」
「自分から積極的に使ってたよね?」
「仕方ないじゃないですか。
今更文句言っても遅いんですし」
「そんなのノアちゃんらしくないわ。
いったいハルちゃんに何言われたの?」
「色々です」
「真面目に答える気は無いわけね?」
「後で好きなだけ叱って下さい」
「ダメよ。今すぐ。
イロハ、解除させられる?」
「ダメです!
何言ってるんですか!」
「ノアちゃんこそ何言ってるのよ?
そんなやり方はダメよ。少なくとも今はまだ。
セレネやカノンだって認めないわ」
強くなる方法はわざわざ会議して皆で話し合ったのに。
何でそんな横紙破りみたいな事しちゃうのよ……。
「アルカにだけは言われたくありません!!」
あ~これあれか。
ノアちゃん的には私と喧嘩したの精々十数分前なのか。
私は三人とデートするくらいはゲーム世界にいたんだけど。
どうやらノアちゃんはまだ私に怒っているらしい。
素直に聞く気は無さそうだ。
『しかもハルにも散々煽られたのでしょうね。
今は何言っても無駄だと思うわよ』
厄介な……。
「ハルちゃん。
続きは私がやるわ。
ハルちゃんは私の中に戻って」
「がってん」
素直に同化するハルちゃん。
どうせこうなる事も計画の内なのだろう。
「ノアちゃん。
せめて私にぶつけてみなさい。
その力を取り上げられたくなければ、全力で抗いなさい」
「望む所です!」
だいぶ頭に血が上ってるわね。
『たっぷり』
『しこんだ』
『じゅんび』
『ばんたん』
後でお仕置きよ。
『ふへ』
まったくもう。
ご褒美のやつじゃないわよ。ガチのお仕置きよ。
覚悟なさい、ハルちゃん。
『たのしみ』
こんにゃろ。
あ~あ。
こんな事ならシーちゃん達にも出てきてもらえばよかった。
何か取り込み中だったから、ひと声掛けて置いてきちゃったのよね……。
『もんだいない』
『ハルとイロハ』
『じゅうぶん』
ハルちゃんが諸悪の根源でしょ。
何でそれで大丈夫になるのよ……。
『はなしあと』
『ノアくる』
さてどうしたものかしら。
「はぁ!!!」
ノアちゃんは問答無用で切りかかってきた。
身の丈程もある大太刀を大きく振りかぶり、まるでクレアのように勢いよく突撃し、一瞬で距離を詰めると躊躇なく袈裟斬りに刀を振り下ろした。
私は後ろに下がってノアちゃんの攻撃を回避し、魔術で牽制しながら更に距離を離そうと試みる。
しかしノアちゃんはそれを許すまいと、私の攻撃を真正面から受けながら、怯みもせずに突っ込んできた。
「ルネルに叱られるわよ!そんな戦い方!」
ノアちゃんは私の言葉にも反応を示さない。
今はこれが全てだと言うように刀を振り続けている。
私は何時ものフルモード、ドラゴンモード、オートカウンターの三点セットを起動してノアちゃんの刀を捌いていく。
『イロハ!』
『先ずは隙を作りなさい!』
ならやるか!分体お手玉!
『それは止めておきなさい!
絶対拗れるわよ!』
ぐぬぬ!
そうは言っても!
このノアちゃんそう簡単に止められないわよ!
ほんとにハルちゃんは何を植え付けたのよ!
『アルカも』
『ほしい?』
『頂戴!』
『待ちなさい!
そんな事してどの口でノアを止めるのよ!』
『私は別でしょ!?
元からハルちゃんと融合してるんだから!
引き出すものが増えたって関係ないでしょ!』
『今はやめろと言っているのよ!
ノアに勝つだけならこのままで十分でしょ!』
そうかもだけど!でも!
グズグズしてたらマズいってこれ!
ハルちゃんが根付かせるとか言ってたし!
『惑わされないで!
こんなのただのドーピングよ!
本当に追いつかれたわけじゃないわ!』
わかったわよ!もう!




