7-10.事後処理
私はノアちゃんに向かって転移門を開く。
「アルカ!」
ノアちゃんは転移門を潜って私に飛びついてきた。
良かった。大きな怪我はないようだ。
「セレネ!もう大丈夫です!
戦闘は終わりました!」
ノアちゃんの言葉に頷いて、
セレネは結界を解除する。
そのまま、ふらついて倒れそうになった所を
私とノアちゃんで抱きしめる。
「ありがとうセレネ。よく頑張ったね!」
セレネは少しだけ頭を動かして頷くと
そのまま眠ってしまった。
よっぽど消耗したのだろう。
私はセレネを抱き上げて、
ノアちゃんと一緒に間借りしている宿の部屋に転移する。
セレネをベットに寝かせて、
ノアちゃんに向き直る。
「私は事後処理してくるから、
ノアちゃんはここでセレネを見ていてくれる?」
「もう大丈夫そうですね。
少し顔色が良くなっています。
わかりました。ここで待っています」
「ありがとう。
それじゃあ行ってくるわね」
私は再び転移門を開いて、
町の上空から被害状況を確認する。
セレネが必死に守りきってくれたお陰で、
町には傷一つ無いようだ。
それでも残念ながら、町の周囲には
魔物に混じって多くの冒険者達も倒れている
低空を飛んで、息の有りそうな者を探してまわる。
何人かは辛うじて生きている者も見つけることが出来た。
彼らをギルドに運んでいく。
その次は、魔物の亡骸を収納空間に納めていく。
ここまでの量を放置しておけば他の問題を引き起こしかねない。
流石に、冒険者達の亡骸を収納空間に入れるのは気が引けたので、
そちらは転移門で町の入口近くに運んでいく。
そうして、数時間かけて町の周辺を綺麗にしていく。
流石に今回は多すぎて今日中にどうにかなる数ではない。
途中で切り上げて、ギルド長さんを探しに向かう。
「アルカ!お前は少し休んでいろ!
事後処理はこっちでも進めている。
確かにお前の力を借りれればありがたいが、
このままじゃ倒れちまうぞ!
急ぎでなければ話も明日で良い。
こっちもまだまだ手一杯だからな」
ギルド長さんは私を見かけるなり、
駆け寄ってそう言ってきた。
「わかったわ。お言葉に甘えて休んでくる」
また酷い顔色でもしていたのだろう。
魔力は多少回復したが、
少し疲れが溜まっているのは感じる。
それに、何度も人の亡骸を運んでいれば、
いくら慣れても精神的に辛いものはある。
私はノアちゃん達の所に帰る前に、
自宅の風呂に転移して、
遺体を運んだ時に付いた血や臭い等を洗い流していく。
それからまた、ノアちゃん達のいる宿に転移する。
「また無茶をしましたね!」
ノアちゃんは私を見るなり、
そう言って、ベットに行くように促す。
「ノアちゃんも休んでね。
もう安全だから、見守る必要もないわ」
「そうですね。そうします」
ノアちゃんは素直に頷いてくれた。
自宅から回収してきたベットを出して、
セレネの寝ているベットの横に設置する。
「ギリギリだけど収まったわね」
「家に寄ってきたのですか?
そういえばお風呂にも入ったみたいですね」
「ええ。セレネはゆっくり寝かせてあげたいし、
元々あるベットだけだと狭いから」
「そうですね。
じゃあ、アルカはこっちで私と一緒に寝ましょう」
そうして、私はノアちゃんと一緒に眠りについた。
ようやく長い一日が終わった。
翌朝、三人で女将さんの大盛り料理を平らげてから、
セレネを教会に送っていく。
「セレネ本当にありがとうね!
あなたのお陰で皆救われたわ!」
「私だけじゃないでしょ。
皆が頑張ったからだよ。特にアルカもね!
また何かあったら何時でも呼んで!」
私とノアちゃんはまたセレネと抱きしめあって、
名残惜しみながら町に転移する。
まずはギルドに向かった。
ギルド長さんは忙しく動き回っていたが、
私と話す時間を作ってくれた。
急いで本部に報告する必要もあるのだろう。
一通り、今回あった事を共有し、
冒険者達を本部に送っていく。
当人達は事後処理に協力するという者もいたが、
少なくともSランクの者達を何時までも留めておくわけにはいかない。
一旦、本部に確認も必要なので全員を連れて転移する。
ギルド長さんが本部への報告のついでに
話を通しておいてくれたので、
転移先はまた前回の部屋だ。
「いろいろありがとう。助かったわ」
「こちらこそ、犯人を止めてくれた事、
町の防衛に尽力してくれた事、感謝する。」
結局、連れてきた冒険者達は
全員その場で解散する事になり、
部屋から出てもらう
それからいつもの本部職員さんに
私は魔道具を返却する。
「もう良いのかね?」
「ええ。あの犯人を追うのに必要だっただけだもの」
「今回の事でこの魔道具の危険性も更に上がった。
保管されている物も含めて近い内に破棄することになるだろう」
「そうするべきね。
まだ本部内にも敵はいるかもしれないのだし」
「ああ、任せてくれ」
「期待しておくわ」
私はまた転移門を開いて町に戻った。