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1-11.告白

私達はダンジョンを脱出すると、

ギルドに戻って拘束した男を差し出す。


尋問はやってくれるだろう。



ギルド長に結果を報告して、

その日は帰宅した。



「何も聞かないのですか?」


家に帰って落ち着くと、ノアちゃんがそう聞いてきた。


「ノアちゃんが話したくなったらで良いよ。」


「いえ、あの者にも見られてしまった以上、

アルカに迷惑をかけるのは時間の問題なので話をさせてください。」


「話したくなければ大丈夫だよ?私は強いから必ず守ってあげる。」


「ありがとうございます。

なら、聴いて欲しいので話をさせて頂きます。」





そうしてノアちゃんは語りだした。


ノアちゃんはとある黒猫の一族に生まれたのだと言う。

その一族はいわゆる裏の仕事を生業としていた。


生まれつき毛の白いノアちゃんは一族中から軽視されていたのだが、

一族の中でも実力者であった両親の加護があり、辛うじて生かされていた。


その一族では幼少期からありとあらゆる教育を施された。

潜入もこなせるようにと礼儀作法等も叩き込まれたそうだ。


ある時、両親が任務の途中で亡くなってしまう。

そうなると、ノアちゃんが排除されるのは時間の問題となってしまった。


ノアちゃんは自身の死を偽装しつつ、

自ら奴隷となることで、一族の目を欺くことにしたのだった。



生きている事がバレた以上、

一族の者達が始末しに来ることは確実だ。

一族の情報を持つ者を野放しにしておくことはできない。





「恥を承知でお願いします。どうか私を助けてください。」


「そんな言い方しないで!何があっても私がノアちゃんを守ってみせるから!」


頭を下げるノアちゃんを私は思わず抱きしめる。

この子はこんな小さな体で一人で頑張ってきたんだ。


今も体が震えている。

私に話して捨てられてしまったらと怖かったのだろう。

それなのに自ら全てを話してくれた。

私にも害が及ぶから。それが嫌だから。




「ありがとうございます。アルカ」


それからしばらく、声を押し殺して泣くノアちゃん。

今まで声を上げて泣くことも無かったのだろう。

誰かに目を付けられないように、静かに声を押し殺して生きてきたのだろう。


私が必ず幸せにしてみせるから。

安心して泣けるようにしてみせるから。


私はそう決意して、ノアちゃんを抱きしめる手に力を込める。

震えが止まるように。泣き声を絞り出せるように。



そうして長い事ノアちゃんを抱きしめ続けていた。







----------------------







「アルカ」


落ち着いてからも、ノアちゃんは私から離れなかった。

今は膝の上に座って私に体を預けている。


「なあに?ノアちゃん」


「なんでもないです。」



ノアちゃん可愛い。

けど、流石の私でも今は暴走する気分にはなれない。


ノアちゃんは今、初めて本当の意味で私に心を開いてくれたのだろう。

生かされてはいても、一族中から疎まれていたノアちゃんは

両親にだってまともに甘えた事がないのかもしれない。


とにかく、今はノアちゃんの好きにさせてあげたい。

甘えさせてあげたい。安心させてあげたい。



ノアちゃんの抱えていた事情は思っていた以上に重いものだった。

どうするべきだろう。どうしたらノアちゃんを守れるだろうか。



一族ごと滅ぼす?

優しいノアちゃんがそこまで望むとは思えない。


別の国に逃げる?

ノアちゃんが罪悪感を抱える事になる方法は論外だ。

私の生活を壊してしまったと後悔してしまうだろう。


待ち構えて守り続けるのは難しいだろう。

話を聞く限り、敵の規模はそれなりに大きい

後手に回っていればいつか不意を突かれるかもしれない。


やはり、一度話を付ける必要がありそうだ。

最悪、乗り込んでノアちゃんの事を諦めさせるしかない。




私は改めて、なんとしてもノアちゃんを守ろうと決意する。

膝の上に座るノアちゃんを抱きしめる。



「くすぐったいです。アルカ」


嬉しそうに笑うノアちゃんを見て私も笑顔になる。

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