38-13.再会
「チハヤ、アズサ、カグラ、コトハ、サクラ、シズル、チトセ、ベニオ、モミジ、ワカナ。うん。全員一致してるね。
やっぱり運命力みたいなものは存在してるんだよ」
「それにしてもとんでもない精度ですね。
一人くらい違う者がいてもおかしくないでしょうに」
「少し不気味なくらいね。
どこかで監視している存在でもいるのかしら」
しかも私の脳にも干渉してるのかもしれない。
シーちゃんの端末で被りがいないかは確認したけど、名前を考えたのは間違いなく私自身なのだ。
「アルカ様。この御恩、必ずや報いてみせます。
どうかイロハ様共々よろしくお願い致します」
「ええ。承ったわ。
だから堅苦しいのはもう無しよ。
チハヤ達にもお願いしたい事がいっぱいあるの」
「なんなりと」
まあ、流石に今すぐ何かを頼むつもりはないんだけどね。
先ずはイロハと再会を喜びあってもらいましょう。
「イロハがこのザマだから、チハヤが皆を纏めなさい。
イロちゃんズのサブリーダーはあなたよ」
チハヤの名には特別な意味がある。
チハルの姉のような立場になってほしいのだ。
そしてイロハの子の長姉として、まとめ役になってもらおう。
「はっ!」
何かしっかりした子っぽいし大丈夫だろう。
出来ればもう少しフレンドリーになってほしいけど。
「イロちゃんズは嫌よ。
付けるなら他の名前考えて」
私にしがみついて顔を埋めているイロハが文句を言ってきた。どんな顔して良いかわからな過ぎて、この体勢に落ち着いたようだ。
「しっけい」
「ちゃんズ」
「ゆいしょただし」
「とくべつ」
ハルちゃんには一家言あるらしい。
ハルちゃんズ自体、結成から一年も経ってないけど。
「イロちゃんズの名、拝受致します。
我ら一同、これよりイロちゃんズとして、イロハ様のお側に控えさせて頂きたく存じます」
「結構よ。
暫くイロハを返してあげるから、上手く元気づけてあげて」
「御意!」
「まってぇ……まだ無理よぉ……」
「聞き分けなさい。
イロハの気持ちもわからないでもないけど、この子達の気持ちも少しは考えなさいな」
敬愛するお母様のこんな姿を見て……なんか嬉しそうね。
クスクス笑いが隠せていない子までいるし。
元々イロハはこの子達の前でもこんなんだったのかもしれない。
「ハルちゃん。
悪いけど引っ剥がして持っていって。
ハルカもお願い。
流石にハルカの眼の前でまで続けられないでしょうし」
「「がってん」」
「酷すぎる……」
「後で慰めてあげるから。少しは頑張りなさい」
再び(隣のテーブルに)ドナドナされていったイロハを見送って、ニヤニヤと事の成り行きを見物していたルーシィに視線を向けた。
「ルーシィ、そんな顔してるけど、次はあなたの番よ?
ラトナの前で妙な態度を取ってはダメよ?
未来の事を話すのも禁止よ?
あくまで今回は様子見だからね?
言いつけ破ったらその時点で面会は終わりだからね?」
「ちぇ~。
ラトナ攫って逃げようと思ったのに」
冗談だろうけど、本気でルーシィに逃げられたら厄介ね。
抱き寄せ魔法を使えば捕まえられるけど、そもそも捕まえたところで私よりルーシィの方が強いのだ。
私が気絶でもさせられれば止める方法が無くなってしまう。
まあ、今ここにいる私は分体だから別に意識が途絶えたところでどうにでもなるけど。
分体同士でお手玉のように抱き寄せを繰り返せば、擬似的に動きを止める事も出来るはずだ。
いや、チグサ達の調査が正しいのであれば、ルネルやその教えを受けたであろうルーシィが抱き寄せ魔法を破る手段は存在しているのかもだけど。
まあ、今のところそれを見せるつもりは無いようだし、気にしてもしかたがないか。
「じゃあシーちゃん。お願いね」
「イエス、マスター」
既にラトナも廊下までは呼び出されていたのか、すぐに扉が開いてシーちゃんに先導された本人が入ってきた。
「!?」
ルーシィが大きく反応を示した。
今すぐにでも飛びつきたいのを必死に抑えているようだ。
いきなり抱きしめられても、ラトナは困ってしまうだろう。
「よく来てくれたわね。ラトナ。
突然呼び出してごめんなさいね」
「……いえ、別に」
「ミーシャの紹介でね。
ラトナとも話してみたいと思ったの」
「……ミーシャ?」
あれ?知らないの?
「煩い方の神よ。
見たこと無い?」
「……ニクス?」
まあ確かにニクスも煩いけども。
「どういう事かしら。
後でミーシャに聞かなきゃいけない事が増えたわね」
「……?」
「ああ、ごめんなさい。
まあとにかく、少しお茶でもしましょう」
「……がってん」
あれ?
その返事知ってるの?
ニクスの名前もすんなり出てきてたし、アルカネット配信の視聴者でもあるのかしら。
ミーシャを知らなかったのは、単に人数が多すぎて覚えきれてないとか?
まあいいや。
その辺は後で考えよう。
「ラトナは趣味とかある?
何か生活で不自由している事とかは無い?
もし希望があれば何でも言ってみて」
「……握手して下さい」
「え?」
何故かノアちゃんに向かって妙な事を言い出すラトナ。
「あ、はい。どうぞ」
ノアちゃんは戸惑いながら手を差し出した。
「ふへ!ほんもの……うへへ……」
あ、えっと、そういう感じ?
そしてもしかしてノアちゃん推しなの?
「ふへへ」
しっかりと握手を交わしてから、大切そうに手を握りしめるラトナ。
ノアちゃんは色々察したような表情をしてから、造り物の笑みを浮かべて表情を固定した。
あかん。なんか警戒防衛モード入ってる。
苦手宣言までしてたツムギの時よりはマシだけども。
まあ今はもうそっちは引きずってないし、きっとラトナとも仲良くやれるよね?
『どう、ルーシィ?
この子で間違いない?』
『うん!間違いなくラトナだよ!
ふふ!懐かしいなぁこの感じ!』
どうしてこのラトナとあのルビィが組んで、ルーシィはこんな風に成長したのかしら。不思議。




