38-11.干渉と変化
「結論はこうよ。
ハルちゃん。あとよろしく」
『がってん』
「おかーさん、ハーちゃん頼りすぎ~」
「良いのよ。ハルちゃんは私の一部だもん」
未来の情報を聞くかどうかは、ワンクッション置くことにした。
私達が直接聞くのではなく、ハルちゃんにその必要があるかを判断してもらうのだ。
別に私も思考停止でこんな事を言い出したわけではない。
というのも、ハルちゃんは既に多くの情報を得てしまっているようなのだ。
未来のハルちゃんがルーシィの魂に残した残滓は、ハルちゃんに十分な知識を与えたらしい。
本当にまったくもうだ。
勝手にそんなの取り込むなんて。
しかもハルちゃんは内緒にするつもりだったみたいだ。
他に内緒にしている事もありそうだわ。
かと言って、もう迂闊に同期も出来まい。
まあ、切り札が増えたくらいに思っておこう。
未来の知識と経験は大きな成長を齎してくれるはずだ。
ハルちゃんならその辺も心配は要らないだろうし。
最近は元々急成長中だったからね。
これでまた一段と強くなった事だろう。
もしかしたらついにイロハを越えたのではなかろうか。
『よゆう』
マジか……。
『一段どころではなさそうよ』
イロハも認めてるの?
『ハル、今度一緒に深層行こうよ』
『ダメ』
『ハルカ』
『イロハのでし』
『よこどりしない』
『ちぇ~』
『ハル。私のアップデートは可能ですか?』
『まかせろ』
程々にね。
シーちゃん魔改造しちゃ嫌よ。
『イロハの』
『せんぞく』
『とりもどせる』
いきなり爆弾ぶっこんできた!?
脈絡無さ過ぎよ!!
「許可するわ!今すぐよ!」
『がってん』
流石ハルちゃん!
まさかそんな情報まで残しててくれたなんて!!
どうやってか知らないけど今すぐ実行よ!
『待ちなさい!
こんなところではダメよ!
後で落ち着いてからになさい!』
『と言うか実験くらいはしてからにしようよ。
今のハルが完璧に再現出来るとは限らないじゃん』
『むむ』
『ハルカの言う事にも一理あります。
十全な準備を済ませてから臨むべきかと』
『しかたない』
『あとで』
え~!
『聞・き・分・け!なさい!』
はい……。
「アルカ?内緒話は済みましたか?
いったい何を許可したんです?」
「後で説明するわ」
復活させた後でね。
また怒られるだろうけど、こればかりは止められるわけにはいかない。
さて、話を戻そう。
会議はさっさと終わらせよう。
色々とやるべき事が出来たからね。
「それで、次の話で取り敢えず最後よ。
その内容はルーシィとラトナの件。
これから私が面会してくるけど、その前に少し意見を聞いておきたいの」
「ラトナは間違いなくルビィの専属フィリアスなのですか?
その割には出会いのタイミングが早すぎませんか?
今はまだ、レヴィやエルヴィさん達のフィリアスも決まっていないのです。このタイミングではルビィの前に誰か他の人の専属となってしまうのではありませんか?」
たしかに。
少々不自然だ。
「それはわかんない。
私の時はミーシャが言い出さなかったのかもしれないし。
流石にフィリアスを選んだ経緯は見てないから」
まあそうよね。
私達が決めてからルビィに話をしたのだろうし。
今回ミーシャが言い出したのも、偽神の襲撃で何か心境の変化でもあったのかもしれないし。
そもそもミーシャが推薦してきた理由がわからない。
別に誰かの専属フィリアスにしなくても、自分のお気に入りとして個人的な付き合いを続けていても良かったわけだし。
「先ずはラトナと会ってみてはどうですか?
アルカの気持ちもわかりますが、同一人物とも限らないのでは?」
「名前被りは在りえないわ。
例え新しく産み出したとしてもね。
シーちゃんがちゃんと管理してくれてるから」
何時もタブレット端末で確認してからつけてるからね。
「ラトナ当人がハルちゃんズ入りを拒否する可能性は?」
なるほど。
それで加入が遅れてルビィの相方に。
ヒサメちゃんみたいになにか理由があるのかも。
そういう可能性はなくもないわね。
「ルーシィはどう思う?」
「う~ん。
ラトナだからなぁ。
無いとは言えなくもないけど。
でもそんな話聞いたこと無いよ?」
もしかして最初はチーちゃんズに入ったのかしら。
あり得なくは無いかも。
チハちゃんズの紹介は今回の騒動が原因みたいなところもあるし。
もしかしたらルビィの専属を決める頃まで内緒のままだったのかも。
ルーシィが知らないっぽいのも、ラトナ本人が守秘義務を守っていたからって可能性がある。
「まあいいわ。
取り敢えずルーシィにも会ってもらいましょう。
ノアちゃんも付き合って。
最初は顔合わせだけね。
何かを決める前には、もう一度話し合ってみましょう」
「ええ。それで構いません」
「異議な~し」
「じゃあこれで会議は終わりね。
それじゃあ皆、お疲れ様。
皆も私世界に送るから、遊園地組に合流してね」
「ルイザの帰る時間忘れないでよ?」
「ええ。大丈夫よ。
ノアちゃんも一緒にいるし」
シーちゃんも教えてくれるだろうし。
『お任せ下さい。マスター』
頼りにしてるわ♪
「アルカ。
私はムスペルに行ってくるわ。
スミレとコマリが付いててくれてるから、こっちは心配しないで」
「ありがとう、カノン。
ツムギ達の事よろしくね」
「ええ。こっちの状況も軽く伝えておくわ」
皆心配してるかもだもんね。
一応ヤチヨ経由で全部伝わってるはずだけど。
『完璧パーペキですよ。小春先輩。
こちらは特段変化も無く退屈なくらいです。
ツムギ達は退屈する暇なんてありませんが。
あと王妃目覚めました』
「ちょっと!」
「なに?」
「いや違くて!」
『ヤチヨ!どういう事!?
何時目覚めたの!?
なんですぐに言わないの!?』
『目覚めたのがたった今だからです。
というか、まだ薄っすら目が開いただけですね。
今はアレクシアが反応を確認しています』
『ああ。そういう事なのね。
わかった。ありがとう。
引き続きよろしくね』
『がってん』
良かった。これで一安心ね。
このまま最後まで何事もなく解決すると良いのだけど。




