38-6.朝礼
「え~、という事で、新しい家族が増えました。
それと婚約者とお嫁さんも増えました。
どうぞよろしくお願いします」
ルイザ、スミレ、コマリ、レリア、イオスを伴って皆の前に出た私は、昨晩と同じような言葉を口にした。
「おかしいですわ。
昨晩も同じ話を聞いたばかりですわ」
「他人事みたいに言ってるけど、今回ルイザはこっち側だからね?」
その辺どのようにお考えで?
「寝取り?」
人聞きが悪い。
「違うのよ、ルカ。
アリアとも話が付いてる事だから」
ルイザの件であと何度弁明すれば良いのだろう。
「スミレも寝取られたわ」
「ちょっとカノン!
あなた一緒に拷問してきたじゃない!
無理やり認めさせたじゃない!」
「何よ。私のスミレが気に入らないの?」
いつもの!ワンパターン!
「そんなわけないでしょ!
元々私の娘よ!
むしろカノンから取り返したの!」
「ダメよ。あげないわ。
スミレは私のよ。
少し貸してあげるだけ。勘違いしないで」
「よく言うわ!散々渋ってたくせに!」
「大切にしていただけよ」
「はいはい。二人ともじゃれ合いはそこまでに。
アルカも十分な仕返しはしたでしょ」
「カノン。ノアちゃんへの仕返し足りていないと思うの」
「奇遇ね。実は私も物足りなかったの」
「もう付き合いませんよ」
あからさまに距離を取るノアちゃん。
尻尾が足の間で縮こまっている。
あれは怯えてるやつだ。
仕方ない。今度は一対一で虐めてあげよう。
皆でやるのは可愛そうだからね。仕方なくね。
決して独り占めしたいだけじゃないんだからね!
ぐへへぇ。
追い詰められたノアちゃん可愛ぇかったなぁ~。
「はい!」
私の妄想を消し飛ばすように、元気いっぱいアリアが手を上げた。
「どうぞ、何故かツヤツヤ顔のアリアさん」
逆にルイザは少しげっそりしてない?
なに搾り取ったの?
「これで何人になったの?」
「婚約者伴侶ひっくるめて三十六人よ」
「なにどさくさ紛れに無断で嫁増やしてんのよ。
ヤチヨの時に三十人だったのよ。今回、ルーシィ、ミーちゃん、ルイザ、スミレ、コマリが増えたんだから三十五人の筈でしょ。許可したのはそこまでよ。
もう一人はどっちよ?」
流石セレネ鋭い。
「レリア」
「コハル~♪」
「なんじゃと!?
わしだけ責任は取らぬと言うのか!?」
「お母様は関係ないでしょ!」
「関係無いとは何じゃ!
わしも家族に加えたのじゃろうが!」
「だから普通に姑でしょ!
逆になんで嫁に加わろうと思ったのさ!」
「そういう流れじゃったろうが!」
「何だよ!流れって!」
何かまた喧嘩始めたわよ、この親子。
「はいじゃあ、イオスが三十七人目って事で。
話進めるわよ~」
「仕方ないわね。
説教は後にしてあげるわ」
「やむを得ませんね」
甘い。セレネとノアちゃんはやっぱり甘々だ。
「二人がそうやって甘やかすから!!」
「全部ニクスのせいじゃない。
ニクスさえちょっかい出さなきゃ、アルカの嫁は私とノアだけだったのに」
「またそれ持ち出すの!?」
「一生言い続けますよ。
ニクスがアルカを監禁して無理やり振り向かせたのです。
私自身がどれだけニクスを愛していても恨み続けます」
「ごめんなさぁ~い!!」
「それはいい加減許してあげて……」
「許さないわ」
「許しません」
さようで。
「アルカ様絶好調ですね。
残念ですがもうセーレとは会わせられませんね」
「待って!レーネ!それだけは許して!」
「ダメです。あの子は国にとっても大切な存在なのです」
「心配要らないよ、レー姉。
来年あたりに弟も生まれるはずだから」
「な!?」
「ルーシィ、お口チャック」
「だ~め。
私、セーちゃん大好きだもん。
おかーさんに諦められるたら困るの」
「だからこそでしょ。
ルーシィが余計な情報を明かせば、未来が変わりかねないわ」
「変わらないよう能動的に動く事も大切なんだよ。
それが前提の歴史なんてものもあるんだから」
「……後で詳しく聞かせてもらうわ。
だから今は不用意に情報をバラ撒かないで」
「は~い」
実際に様々な時間軸を渡り歩いて暗躍してきたルーシィの言葉だ。耳を傾ける価値はある。
けれど、それでも私の持つ常識としては、未来の情報を不用意に知る事は悪影響しか及ぼさないものだ。
それが必ずしもルーシィの実体験に勝るものではないとわかってはいるつもりだけど。
「えっと、ごめんね。レーネ。
レーネも後で話をしましょう」
「はい。お願いします」
良かった。
レーネは何やら覚悟の決まったような顔をしてる。
もしかしたらようやく実感したのかもしれない。
未来を知る者がどういう存在なのか。
そして偽神がどういう存在なのかも。
「取り敢えず話を戻すわね。
話したいのは今日のスケジュールよ。
ルイザの歓迎会、二日目の行程についてよ」
本人もいるけど、少しこの場で変更を伝えるとしよう。
ルイザが予定よりずっと早く婚約者になってくれたからね。




