38-2.シンダイ会議
「それでは会議を再開します。
と、言いたい所だけど、先に皆仮眠をとりましょう」
私は問答無用でその場にいた全員を深層へと取り込んだ。
今回私の眼の前に集まったのは六人だけだ。
ノアちゃん、セレネ、ニクス、カノン、グリア、ルーシィ。
結局大人組全員ではなく、何時もの首脳チームで話し合う事になった。
これはセレネの提案だ。
あまり人数が多くても意味は無いし、誰にどこまでを知らせるのかも、先に話し合うべきと判断したようだ。
その意見にノアちゃんも同意し、二人が選定したメンバーのみが集められたのだった。
こういう話ならお姉ちゃんも必須だとは思うのだけど、お姉ちゃんにはルネルを任せる事にしたらしい。
ヘスティも派遣して、三人で飲み明かす事にしたようだ。
まあ、そうね。
ルネルの復旧は急務だもんね。
私は深層で話し合うつもりだったから、先にこっち参加してもらっても良かったのだけど。
けれど、深層での話し合い作戦は私の考えだ。
実はまだノアちゃん達には伝えていない。
不意打ちで取り込んだのもその為だ。
仮眠をとるというのも、長丁場になるからでもあるけど、皆の警戒心を解く目的もある。
私がやる気だすと、何故か皆警戒しちゃうからね。
本気モードの私は何するかわからない危険人物みたいな扱いだからね。
ちょっと話し合いの仕方も工夫しようと思ったのだよ。
「まあ、いきなり仮眠をと言われても難しいかもだからね。
少し運動でもしましょうか」
「あら。そんな気分なの?
随分と気が抜けているようね。
それは良いことだわ」
早速セレネが乗ってきた。
「仕方ありませんね。
少しくらいは付き合ってあげましょう」
ノアちゃんも満更でもないようだ。
最近また少しご無沙汰だったからね。しょうがないね。
「アルカ、どうせそんな事言ってここに私達を軟禁するつもりなんでしょ。
満足行くまで会議を続けるつもりなんでしょ」
流石ニクス。よくわかってる。
多分ノアちゃんとセレネもわかってて乗ってくれてるだけだから、少しお口チャックしましょうか。
「そういう事ならレーネも呼んであげればよかったのに」
悩んだんだけどね。
レーネはまだまだ経験も力も足りていないから。
それに本人の気質的にも、幹部って感じじゃないのよね。
後一年したら、改めて考えましょう。
今はまだ、お子様組のお姉ちゃん枠として、皆を取り纏めてもらいましょう。
「何故私まで巻き込むのだね。
そういう事は君達だけで勝手にやりたまえ」
部屋から脱走しようとしたグリアを抱き寄せ魔法で呼び出して、セレネと一緒に押し倒した。
「う~ん」
お気楽万年発情黒兎のルーシィが珍しく微妙な表情をしている。
「どうしたの?
あなたもいらっしゃい」
グリアを押さえつけて手際よく脱がしながら、ルーシィにも誘いをかけるセレネ。
なにこれ。手慣れすぎ……。
この色欲聖女はいったい何度、母を襲ったのだろうか。
私の見てない所でも盛り上がっていたのではなかろうか。
私だってまだグリアとは一回しかしてないのに。
それにしてもセレネとルーシィの二人、よく似ている。
セレネがルーシィの育ての親だものね。
ルーシィのその手の技術もセレネ譲りと言われれば納得だ。
ルーシィがあんなんになったの、やっぱセレネのせいよね。
「まあ、うん。
そうだね。気にしないでおくよ」
とか言いつつ、まるでセレネをグリアから引き剥がすように押し倒すルーシィ。
もしかして、未来でグリアと何かあったのだろうか。
ルーシィにとってはおばあちゃんにあたるんだものね。
今のルビィとグリアにはあまり接点が無いけれど、もう少し成長したら絡みも増えるのかしら。
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散々馬鹿騒ぎして力尽きるように眠りに落ちた私達は、目の覚めた者達から先に話を始めた。
「最初にゴールをハッキリさせましょう」
先陣を切ったのはセレネだった。
シーツだけを身に纏い、私の腿を枕にして寝転がったまま、気楽な口調で問いかけてきた。
「偽神を倒す。その為の力を手に入れる」
私は迷う事なく宣言した。
「ダメです。認めません」
私の腕を枕にしたノアちゃんが穏やかな口調で否認した。
「ノアちゃんには他の案があるの?」
「アルカだけが力を求めるのは認めません。
私達全員で立ち向かうのです」
「無茶言わないで。
ニクスですらあのざまだったのよ」
「もう。そんな言い方しないでよ」
「偽神本人は脇に置いても、配下のルーシィすらルネルより強かったんでしょ?
私達全員、今のルネルを超えるくらいに強くならないと話にならないんじゃない?」
「カノン君。無茶を言わないでくれたまえ。
君や私は非戦闘員だ。
全員が全員武の達人を目指す必要はないとも」
「心構えの話よ。
それくらい頑張らなきゃ、アルカが安心出来ないでしょ」
「カノンの言い分もわかります。
ですが、ここはグリアさんの言う通りでしょう。
戦う者を絞りましょう。
その代わり、その者達はもっと上を目指しましょう。
一戦闘員ではなく、全員がアルカと同等、そして偽神を打ち倒せる程の力を手に入れましょう」
「方法はどうするのよ。
まさかその選定した全員で神にでもなる気?」
「それでもダメだよ、ママ。
そもそもただの神じゃ全然届かないんだから」
「一先ずの目標は今のルーシィです。
その間にルーシィは偽神を超えて下さい」
「あはは♪
ノア姉無茶言うねぇ♪」
「それともルーシィはもう強くはなれませんか?
既に今の地点が限界だと?」
「むぅ。そういう事言う?
いいよ。乗せられてあげる。
私はまだまだ強くなる。
ノア姉、大口叩いたんだから必死に追いついてみせてよね」
「もちろんです。
頼りにしていますよ、ルーシィ」
「ノアちゃん達はそれで良いとして、私はどうするの?
今まで通り、契約を増やして力を集める?」
「それよ!
領域中の神を全員アルカの下僕にしてしまいましょう!」
「セレネ君。君はいったい何を言っているのだね。
よもや私達の大願を忘れたとは言うまいな?」
「大丈夫よ。その問題はきっとイオスが解決してくれるわ」
「本当にそう上手くいくのでしょうか」
「まあ、お母様とまで契約結んじゃったんだから今更ではあるよね。
そのお母様に制御を任せるのは良い案かも。
それにお母様の力が完全に戻った時、そのお母様自身すらも完全に支配下に置けるなら、アルカの力は十分と言えるかもね」
「ニクスまで乗り気なのですか?
そもそも神々と契約を結んだからと言って、本当にイオスを超えられるのですか?
更に言うなら、敵の所持する欠片は複数あるはずですよ?
イオス一人を上回ったからと言って、それで本当に対抗できるのですか?」
「力の量は案外どうにでもなるものだよ。
それはノア達だってよく知っているでしょ。
実際にルネルがアルカを手球に取れるんだもん。
重要なのは量ではなく質なの。
より正しく言うなら、段階って表現するべきかな。
ノア達が神威を破るのに手こずっているように、力の質には段階があるの。
いくら欠片を集めた所で、その更に上位の存在になんてそうそう至れはしないんだよ」
「ルネルさんはその神威を平然と貫いていますよ?」
「まあそこはほら、私もよく知らないけどさ」
「ならダメじゃない。
まあ、ニクスの言いたい事はわかるけど」
「そもそもそれ、イオスの後を継ぐのと何が違うのですか?
力の質の段階がイオスと同等以上にまで至るのですよね?
それはもう、欠片を取り込むのと変わらないのでは?」
「違うよ。全然違う。
役割の無い野良と、明確にお母様の全てを継ごうと取り込んだ者とでは意味が異なるの。
アルカやルネルが私以上の力を持っていても、世界を守る役目を担っているのは私のままでしょ?」
「なるほど。
今度はイオスに対して同じような立ち位置を目指すわけですね」
「うん。そういう事。
神を集めるのは手っ取り早い手段だと思うよ。
ただ当然、それだけじゃ足りないからね。
フィリアス達をいくら集めても私を超えられなかったように」
「そこでイオスとの契約が絡んでくるわけね」
「そう。
お母様が力を取り戻したら、今度は逆に流してもらおう。
少しずつ少しずつ、慎重に慎重に、アルカの中にお母様の力を混ぜ込んでいくとしよう。
アルカが破裂しないように。
そして余分なものが入り込んでしまわないようにね」
「それって、集めた神の数だけ嫁も増えるのかしら」
「そもそも男性神もいるのでは?
目的を考えるなら、選り好みしている場合でもないのでは?」
「ダメ。うちは男子禁制。それは絶対よ」
へパス爺さんの件は……後にしよう。
「いや、どの道引き抜いちゃダメだよ?
契約は結んでも、守護世界から離せはしないからね?」
「そんな契約、誰が結んでくれるのかしら」
イオスが力を取り戻せば強制的に結べると思うわよ。
その是非はともかく。
「フリーの神様とかいないの?」
「どうだろ……」
そこはニクスも知らないのね。
「とにかくイオスに相談してみましょう。
イオスの意見次第では、その案も実現出来ないかもしれませんし」
他に見落としている問題もあるかもだね。
諸々聞いてみるとしましょうか。




