37-14.質疑応答
「偽神の今までの行動についてはこんなとこかしら。
ここまでの話で、何か意見のある娘はいる?」
「私からノア姉に質問」
真っ先に手を上げたのはルビィだった。
「ノア姉には一度聞いてみたいと思ってたんだ。
今の話聞いて、ノア姉はどう思った?
全てを知ったノア姉はなんであれを許せないの?
あれもまた、ノア姉の大好きな"アルカ"でしょ?
あれの事を可愛そうだとは思わなかった?」
皆の視線がノアちゃんに集まる。
ノアちゃんは迷う素振りもなく答えを口にした。
「だからこそでしょうね。
せめて私の手で終わらせてあげたいと願うでしょう」
「ふ~ん。
なんかつまんない答えだね。
憎悪に狂うとでも言ってくれた方がまだマシだったよ」
「ルビィの見てきた私はそうなりましたか?」
「……どうだろうね。
忘れちゃった」
ルビィはどうして惚けたのだろう。
この質問で何を知りたかったのだろう。
ノアちゃんの答えを聞いて、本当は何を思ったのだろう。
「他はどう?
ルビィに聞きたい事でも良いのよ?」
「ルビィにお聞きします」
「どうぞ~ノア姉~」
相変わらず私の膝を枕に寝そべりながら、パタパタと手を降るルビィ。
「ルビィの力はルビィ本人だけのものですか?
今現在同化しているフィリアスは?」
「ああ。
そこ気になるよね。
うっかりしてたわ。
出てきて、レヴィ」
「「「え!?レヴィ!?」」」
「うっそ~♪
冗談よ、冗談♪
私に同化しているフィリアスはいないわ。今はね」
少し寂しげに呟くルビィ。
ルビィへの質問なんて気軽に許可するべきじゃなかった。
ルビィには私達に話したくない事なんていっぱいあるはずなのに。
「すみません。ルビィ」
「もう。こんな空気にしたくなくて巫山戯たのに。
気にしないでよ、ノア姉。
私、こう見えても皆よりずっと年上なのよ。
流石にミユ姉程じゃないけどね。……たぶん」
ひぃふぅみぃと指折り数え始めるルビィ。
これも空気を変えようと巫山戯ているだけなのかな。
本当に年齢なんて忘れてしまう程、偽神に振り回され続けてもいたのだろうけど。
「他に質問は?
遠慮しないで何でも聞いて。
ノア姉は気になってるんじゃない?
私達、どっちの方が強かったのかとかさ♪」
「そうですね。気になります。
ルビィと私、どちらの方が強かったのですか?」
ルビィはニヤリと笑って、からかい口調で回答した。
「もっちろん私に決まってんじゃん♪
もう全戦全勝♪ノア姉なんて相手になんなかったよ♪」
「そうですか。
ならば私が代わりに超えてみせるとしましょう」
「むぅ~。
よわよわノア姉のくせに生意気~」
いーっと歯を剥き出しにしてみせてから、ケラケラと笑ってひっくり返るルビィ。
「ほんと、どうしてこんな風になっちゃったのかしら。
これはアルカが甘やかしたせい?」
「甘やかしてるのはセレネでしょ」
「ふふ♪
ママもおかーさんも甘々だもんね♪」
「他にもレヴィやセフィさんだっていたはずでしょう?」
「レヴィ……」
「あ!すみません!」
「冗談だってば。
もう。一々そんな反応しないでよ、ノア姉」
ルビィはそう言いつつも、レヴィとセフィ姉について言及する事は無かった。
「ママは?
何か聞きたい事ないの?」
「ルビィは何番目の嫁なの?」
なんでそれ聞くのよ……。
なんかもう、偽神の件とか一切関係ないじゃない。
今更だけども。
「え~?それ聞いちゃう?
聞いても意味ないんじゃない?
こっちのおかーさんが、私んとこと同じ未来を進むことはもうないんだしさ」
「そうよ、セレネ。
既にルビィが加わった事で、順番にズレが生じているわ。
ルビィ、あなたは三十一番目に繰り上がりよ」
「やった♪二桁じゃん♪」
十年で三桁いくの!?
『四桁かもしれないわよ』
イロハすてい!今それ言い出さないで!
掘り下げられると面倒だから!
「待ちなさい。
私は許可していないわ」
「セレネこそ待って下さい。
今のルビィの発言は深く掘り下げる必要がありそうです」
「ノアちゃん、流石にその件で私を責めるのは違うと思う」
「ママ~だめ~?
ママの事も~いっぱい可愛がるよ~?」
「……承認」
「ダメです」
「「なんでよ!?」」
しれっとこっち側についたわね。セレネ。
「みゃは♪
ノア姉きっびしぃ~♪
で~も~私よりよわよわのノア姉の言う事じゃなぁ~♪」
「そうよ。
このルビィはとっくに大人なのよ。
止める権利なんて……大人なのよね?」
大人には見えないわね。見た目も言動も。




