36-70.vs魔神 - 第四形態②
「「「無理だって!!勝てるわけ無いって!!!」」」
私、アリア、ニクスの声が再び重なった。
ルビィはお構いなしに果敢に攻め込んでいる。
ルチアは相変わらず言葉を発する余裕もないらしい。
ルイザちゃんは状況がわかっていない。
いやでもこれ、ほんとどうすんのよ?
今までも何度も無理ゲーじゃんって思ったけど、今度こそいよいよ本当にお終いだわ。
もう無理ゲーとかそういうレベルじゃない。
ゲームとして成り立っていない。
だって勝てるはずが無いもの。
相手はあのルネルよ?
しかもなんか楽しそうな。ノリノリの。
どないせいっちゅうねん。
「ボサッとするでない」
「待って!話を!」
「問答無用!」
「!?」
ダメだ!
完全にヤル気だ!
これじゃあ本当にどうにもなんない!
言葉で解決するしか道は残されていないのに!!
「アルカ!
とにかく一度満足させよう!
話はそれからだよ!!」
ニクスがルビィと共にルネルに向かっていった。
いっそもう一度暴走してくれないかしら。
ルネルだとそれでも勝てそうに無いけど。
仕方ない。
私も切り替えよう。
今度はルネルを落ち着かせよう。
別に勝てなくても良いんだ。
後は単なる消化試合なんだから。
ちくせう。
そもそも何でルネルがラスボスなのよ!
配役した奴は何もわかってないわ!
ルネルはラスボスなんかより裏ボスの方がお似合いなのよ!
ラスボス戦後とか、二周目とかに行ける隠しダンジョンの最奥こそが相応しい居場所なの!
こんなラスボスの残りカスみたいなのに乗り移らせるなんて解釈違いよ!
「すぅーーーー!はぁーーーーーー!!!!
全てを仕組んだ奴がいるなら出てきなさい!
一発ぶん殴ってやるわ!
絶対これ、混沌ちゃんの仕返しとかじゃないでしょ!
当然シーちゃんがこんな杜撰な配役するはずがないわ!
誰よ!ちょっかいかけてきたのは!
何処かで隠れて見てるんでしょ!
どうせこの光景を見て笑い転げてるんでしょ!
出てこないって言うなら必ず引きずり出してやるわ!!」
「「「「「「……」」」」」」
「は!?
アルカ!?
突然何を叫んでるの!?」
ニクスが慌てて飛びついてきた。
私がおかしくなったと思ったらしい。
心配そうに肩を揺さぶっている。
「大丈夫よ、ニクス。
私は冷静だから。
冷静に怒ってるだけ。
私もようやく気が付いたの。
何かが私達にちょっかいかけてるんだって。
そうでなきゃ説明がつかないの。
シーちゃんがこの世界で自由を失うなんてありえない。
ルネルが好き勝手利用される事なんてありえない。
もしかしたら混沌ちゃんすらそうだったのかもしれない。
そいつは皆の頑張りを虚仮にした。
アリアが、シーちゃんが、皆が協力して作り上げたこの世界を台無しにした。
ルイザちゃんを喜ばせたいって想いを利用した。
私は決して許さない。
必ず引きずり出してぶん殴る。
この借りは必ず返して見せる」
「アルカ……」
「ふむ。どうやら本気のようじゃのう。
ならば終いじゃ。
利用されておるとわかって続ける意味も無いでのう」
ルネルが構えを解いた。
別にこの状況を想定していたわけじゃない。
ただ思わず、込み上げたものを吐き出してしまっただけだ。
どうしよう。
これで黒幕とか誰もいなくて、全ては単なる不具合とかだったら。
ルネルの配役が混沌ちゃんの最後っ屁という可能性だって、別に明確な根拠で否定出来るわけじゃない。
でもたぶん、間違いない。
ルネルやニクスを超える何かが私達を嘲笑ってる。
もしかしたら混沌ちゃんすらも利用されたのかもしれない。
ああ。本当に腹が立つ。
腸が煮えくり返るってこんな感じかしら。
「本当に落ち着いてる?アルカ?」
「……ええ。大丈夫」
大丈夫。
今は怒りに身を任せる時じゃない。
そんな事をしても黒幕は見つけられない。
先ずは皆で話し合おう。
ニクスも何かに感づいているかもしれない。
落ち着ける所で話しを聞こう。
「マスター!!!」
ありゃ?
空からシーちゃんが降ってきた。
私は飛び上がってシーちゃんを受け止めた。
「久しぶり、シーちゃん。
会いたかったわ」
「マスター!ご無事ですか!?
申し訳ございません!今の今まで」
「ストップ。
先ずは一旦ゲームを終わらせましょう。
落ち着いて、ゆっくり話す必要があるわ。
こっちも沢山話したい事があるの」
「イエス!マスター!」




