7-5.本部
「どこまで行くの?」
「もうすぐです」
完全に本部まで連れて行かれる流れだ。
これはいよいよまずそうだ。
ごめん、ギルド長。行くなって言われてたけど、
結局来ちゃった!てへ!
「こちらです」
結局、迂闊にも本部側の建物までついて来てしまった。
どんどんドツボにはまってる気がするけど、
ここまで来たら開き直ろう。
毒を食らわば皿までだ。
通された会議室のような部屋には、
数人の本部職員と思われる人たちが居た。
私がギルドに来たのなんて偶然なのに、
なんで待ち構えてるの?
「かけてくれたまえ」
一番偉そうな人が突然入ってきた私達に驚きもせずにそう言う。
座らないと話が進まなそうなので、
仕方なくノアちゃんを膝に乗せて席につく。
これなら転移門一つで何時でも離脱できるだろう。
別に二つ同時に開いたってラグなんか無いけど。
私の考えを察しているであろうノアちゃんは不服そうな目をしつつも、
何も言わずにされるがままになっている。
「そう警戒せずとも何もせんよ」
「それで?」
「ああ。説明するとも。
その前に、魔王騒動に限らず、
君のこれまでの働きに感謝する。
我々は君の味方だ」
ノアちゃんが嬉しそうな気配を放っているから
これは本心なのだろう。
「降り掛かった火の粉を払っただけよ」
「そう謙遜せずとも良い」
「それより早く話を進めてくれる?
あまりここにはいたくないのよ」
「済まなかった。
確かに君の言うとおりだ。
本部には君の敵も少なくはない。
悲しいことにな」
「今回来てもらったのは、
ちょうど今我々が話し合っていた事でもあるのだが、
君から支部を通して報告のあった件だ。
ダンジョンコアの奪取と本部の裏切り者について我々は調査している」
「思っていたより動きが速いのね」
「事が事だけにな。
あの支部長から内密に通された話であった事も理由ではあるが」
ギルド長さんは本部にも影響力がある人なのだろうか。
「君も調査を継続しているのだろう?
可能ならば協力しあえないかと思ってね」
「なんで私がいるって知っているの?」
「君は目立つからね。
幼い獣人族の少女を連れた若い女性冒険者など君以外にいない。
しかも外見にそぐわない派手な散財は目立つものだ。
ここにはこの王都内の情報くらいはすぐに集まってくるのだよ」
「それで万が一ギルドに来た場合は連れて来てもらえるよう
手配しておいたのだが、偶然上手く言ったようだね」
本当か?
誰かにつけさせていたんじゃないのか?
ノアちゃんに気付かれない追手なんてそうそういないだろうけど。
「それで、協力してくれるかな?」
「無理よ。危険だもの」
迂闊に話せば私達の得た情報が敵に筒抜けになったっておかしくはない。
「まあ、君の立場からするなら当然そうだろうね。
だが、今回の敵は組織だって動いている。
いくら君でも一人で立ち向かうのは無謀というものだ。
せめて我々という味方がいる事だけは知っておいて欲しい」
「それなら尚の事こんな場所で面会するなんて軽率じゃない?」
「だろうね。けれどその危険を犯す価値はあると信じている」
「君はこれまで殆ど一人で戦ってきた。
けれど、味方は思っている以上に多いのだと伝えたかったんだよ。
君のこれまでの頑張りに報いるためにもね」
「それはどうも」
「まあ、今すぐ信用して欲しいという話ではない。
いつかは仲良くやっていける事を祈っているよ」
話は済んだようだ。
私達は再びギルドの入口まで案内された。
結局何事も無く終わったようだ。
何がしたかったのか良くわからないけど、
まあ、本部は本部で頑張っているのだろう。
速やかに敵を見つけてくれる事を祈っておこう。
「ごめんね。結局ギルド自体はあんまり見れなかったね」
「いえ、十分です。気にしないで下さい」