36-64.vs魔神 - 第三形態①
怪獣大決戦は、中々の激闘を繰り広げた
幾度目かの全体攻撃で動きが鈍り、迫る牙を避けきれずにモース危うしとなった直後、何処からともなく出現した鎧が牙を弾き、そのまま翼の体当たりで三つ首を纏めて切り落とした事で、ついに第二形態との戦いに決着が着いたのだった。
「なるほど。
エタノールモードってそういう感じだったのね」
「エターナル!」
ごめんて。今のは素で間違えたんよ。
「来るわ!
全員備えて!」
お姉ちゃんの鋭い叫びが響いた直後、凄まじい速度で飛び出してきた魔神、その最後の首に、モースの片翼があっさりと噛み砕かれた。
力を失い墜落していくモース。
それでも最後の力を振り絞り、私達の乗った魔法陣を放って空中に固定してくれた。
魔法陣は急激に広がり、廃都市と同程度の広さにまでそのエリアを広げた。
どうやらこれが第三段階のステージのようだ。
空中に広がる半透明な足場の上には、私達と魔神本体の最後の頭だけが存在している。
そして地に堕ちたモースの体は、あっという間に眷属達に飲み込まれて見えなくなってしまった。
「ああ!モース!そんなぁ!」
なんて残酷な!
この演出は嫌よ!いくら何でもあんまりよ!
シーちゃんに絶対変えてもらわなきゃ!
「何時まで巫山戯てんのよ。
真面目にやんなさい」
セレネ……冷たい……。
そりゃぁモースはゲームの中だけのキャラだけどさぁ。
名前までつけて愛着が湧いてた所だったのに……。
『よく来た!小さき者共よ!
最後の相手はこのわし自ら務めてやろうぞ!』
え?だれ?
何か聞き覚えが……。
「お母様!?」
は!?
「混沌ちゃん!?
なんで混沌ちゃんがここに!?」
しかもまた口調変わってるし!
いやそんな事はどうでも良いんだけど!!
『知りたければ勝利せよ!
ふぁっはっはっはっはっは!!』
何かめっちゃ楽しそう!!
まさか一緒に遊びたかったの!?
「小春!ニクスを止めなさい!」
え!?
あ!?ニクスいつの間に!?
一人で向かっちゃダメよ!!!
「こんのぉおおお!!!
いい加減にしろぉおおおお!!!!」
ブチギレたニクスは全力で魔神の頭頂部を殴りつけた。
巨大な蛇の頭が魔法陣に叩きつけられてバウンドし、凄まじい衝撃波が私達を襲う。
慌てて結界を張るも、あっさりと砕け散って、私達は為す術も無く吹き飛ばされた。
マズイ!
これニクス本来の力が漏れ出してる!!
「ニクス!!!落ち着きなさい!!!」
私は慌ててニクスの下へ転移して羽交い締めにしようとするも、あっさりと振りほどかれて弾き飛ばされてしまった。
マズイマズイマズイ!
何よこの状況!?
何で神様の親子喧嘩なんか始まってんのよ!?
今の私じゃあんなニクス止められないわよ!?
「お姉ちゃん!
どうやったらゲームを超えた力を出せるの!?
お姉ちゃんなら何か知ってるんでしょ!?」
今のニクスを止めるには私本来の力を引き出すしかない!
ニクスが漏れ出るくらいだ!私だって出来るはずだ!
力の総量だけなら私はニクスより強大なんだから!
「無理よ!
私がやったのはただのバグ技よ!
ニクスのとは別物よ!」
なんですと!?
何でもうバグなんて見つけてんのよ!?
そういうのは先に運営に知らせておいてよ!?
「とにかくここを離れましょう!」
「逃げ場なんて無いわ!
もう世界中に眷属達が散らばっている頃よ!
今ここでニクスと一緒にあれを倒すしか無いわ!!」
「だからってこんな所にいたら!」
再び魔法陣に魔神の頭部が叩きつけられた。
衝撃波で私達は立っている事すらままならない。
このままじゃエリア外に吹き飛ばされるのも時間の問題だ。
そうすれば為す術無く真っ逆さまだ。
地表に叩きつけられて私以外全員一巻の終わりだろう。
「アルカ!あれを!あれを見て下さい!!」
ノアちゃんの嬉しそうな声が響く。
この状況で最も欲しかった助けが眼の前に現れた。
「ハルちゃん!!愛してる!!!」
私は皆を連れて、空に浮かぶ島へと転移した。




