36-62.vs魔神戦 - 防衛戦
「アリア、これ飲んで」
私がルカ、イリス、エリス、エルヴィの四人を連れて皆の下へ戻ると、ルカがすぐさまアリアの下に駆け寄って、懐から取り出した薬瓶のようなものを口元に近づけた。
「あ~ルカ~えへへ~」
薬らしきものを飲んだアリアは何やら夢見心地だ。
そのままあっという間に寝息を立て始めてしまった。
「何飲ませたの?」
「万能回復薬」
なにそれ知らない。
エリクシル的な?
「オリジナル」
ルカ凄いわね。
エルフの国で薬草学でも学んできたのかしら。
現実でも出来るのかな?
流石にゲームの中だけかな?
「皆の分もある?」
「足りない。
それに寝ちゃう」
なるへそ。
アリアのこれは、薬の副作用だったわけね。
「どれくらいで起きるの?」
「回復量に応じて。普通数分程度」
ならまあいっか。
相変わらず、繭に変化は無いみたいだし。
もう少し何か中で影が蠢くとかないのかしら。
それはそれで見たくないけど、ずっと反応が無いのも不安になってしまうものだ。
取り敢えずルビィにエリスのフィリアス化を頼み、エリスとイリスに契約を結んでもらった。
エリスとイリスは逆転した同化に燥いでいる。
元気な二人を中心に、何人かが集まってワイワイと賑やかに盛り上がり始めた。
「アルカ!あれ!」
ニクスの慌てた声に振り向くと、繭が明滅を始めていた。
中の何かが光っているようだ。
「皆!戦闘準備!」
私の言葉に従い、皆はすぐに切り替えてくれた。
アリアはまだ眠っているけど、ルカの言う通りならもうすぐ目を覚ますはずだ。
龍人形態みたいな姿に変化したルイザちゃんが、アリアをしっかりと抱きかかえた。
ルイザちゃん、ほんといつの間にそんなに力を使いこなせるようになったのかしら。
ともかく、これでアリアは大丈夫そうだ。
「「~~~♪~~♪」」
お姉ちゃんとノアちゃんは未だに舞を続けている。
二人も相当疲れているだろうに。
この後、休むタイミングなんてあるのかしら。
「アルカ!来たわよ!!」
セレネの言う通り、繭から少し離れた地点にボトボトと眷属達が落ちてきた。
どうやら上で決壊したようだ。
これはあれよね。
どう見ても防衛戦的なやつよね。
繭と、もしかしたら羽化直後の無防備な状態も守り抜かなきゃよね。
天井が崩れてきて危ないとか言ってる場合じゃなさそう。
とにかく、眷属達を繭に近づけないようにしなくちゃ!
「絶対に近づけてはダメよ!
この繭が要よ!!
何としても守り抜くのよ!!!」
「「「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」」」
私達は先程のように編成を分けて、繭に近づく眷属達を狩り始めた。
まだ大した数ではないけど、きっとまた溢れ出すはずだ。
今はセレネとルチアが結界を張っているけど、何れ私も加わる必要があるかもしれない。
「エルヴィ!ルカ!イリス!
無茶をしてはダメよ!
危なくなったら結界に逃げ込んで!」
「「「了解!」」」
あの子達はまだレベルが低いはずだ。
特にエルヴィは危険だ。
幸いルビィとレヴィ(inセフィ)が側にいる。
敵の攻勢が弱い内に、上手くレベル上げまでしてくれると良いのだけど。
「修業の成果見せるのデス!」
「イリス!あれやる!」
「おう!なのデス!」
二人で周囲の魔力を集めて何やら合体魔法を産み出すルカとイリス。
『なんかルカとイリス仲良くなってる?』
イリスに同化したエリスが驚いている。
「マブダチなのデス!」
「違う!姉妹!イリス妹!」
全然息が合っていない。
とは言え、合体魔術の方は問題ないようだ。
一切の揺らぎもなく完璧に構築された魔術が、二人の示した方向に解き放たれた。
「あ!やばっ!!」
ルカとイリスの放った極太レーザーは、わずかに上方に向かって放たれていた。
途中の眷属達を消し飛ばしながら、そのまま離れた位置の天井にも大きな穴を穿ってしまう。
当然、その穴からも眷属達が雪崩込んできた。
「ルカ!イリス!」
「「ごめんなさい!!」」
「いいからさっきのは使用禁止!
魔法の威力には気をつけて!」
「「はい!!」」
敵の流入量が一気に加速してしまった。
その代わり、一時的に眼の前の敵が大きく数を減らした。
今の内に体勢を整えないと!




