36-61.vs魔神 - 作戦会議
「そもそもあれ、どうやって地上に出るのかしら。
今この上って、眷属達で溢れかえっているわけよね。
あれが地上に出る時に上に大穴が空くのだとしたら、この地下空間にも眷属達が雪崩込んでくるんじゃないかしら?」
「「「「……」」」」
そういう事?
お姉ちゃん、暫くは安全って言ってたけど、暫くしたら安全じゃなくなるって事?
この地下水道内も眷属達が埋め尽くすって事?
ヤバいじゃん!
逃げ場ないじゃん!!
「モ◯ラの力を信じましょう。
きっと不思議パワーで守ってくれるわ」
なんか超能力的なの使えたよね?
ワンちゃん、私達の事バリアかなんかで守って安全に地上へ運んでくれないかな?
「楽観的すぎるわ。
真面目に考えなさい」
「モ◯ラが飛び立つ時に吹き飛ばしてくれないかな?」
「むしろ纏わりつかれて、あっという間に羽が虫食いだらけになる光景の方が浮かぶんだけど」
「……やめてよ。そういう事言うの」
いや別に、モ◯ラの事ディスってるわけじゃないよ?
私、モ◯ラ好きだもん。
三部作だけじゃなくて、ゴ◯ラと戦うやつとかも見たもん。
まあ、それでも色々うろ覚えなんだけども。
別に世代ってわけでもないし。
私に怪獣映画観せたのってどっちだろう。
お父さん?お姉ちゃん?
「脱出の件は一旦置いておきましょう。
本当に危険なら、お姉ちゃんが何か言ってくるでしょ。
きっと。たぶん」
歌で口が塞がってるから話しかけてこれないかもだけど。
取り敢えず目配せとかもしてこないから大丈夫でしょ。
「アリア、勇者の力ってもう少しどうにかならないの?」
「む~り~」
さようで。
つまり今後も何処かに安全地帯を確保して、置物として運用せざるを得ないわけだ。
これもお姉ちゃんなら何か知ってるかな?
「ならそっちも保留で。
後話し合うべき事は何があるかしら」
「今の内にアルカだけでハルを探しに行ったらどう?
こっちはミユキがどうにかしれくれるかもだし。
島が移動を続けてるったって、最後に見た位置と移動方向くらいは覚えてるでしょ?」
「……ごめん」
無茶言わないで……。
ノアちゃんじゃあるまいし……。
「まったく」
「別に良いじゃない。
ハルの事は放っておきましょう。
そもそも、既に掌握に成功して自分の意思で動かしていたなら、その方法で探しに行ったって無駄足になるんだし」
セレネは優しいなぁ。
ニクスとは大違い。
まったく。ため息までつかなくたって良いじゃない。
「ならイロハは?
ハルカだって強さは期待できるでしょ?
他のまだ来てないメンバーを集めてみるのは?
戦力が多いに越したことは無いでしょ?」
「う~ん……。
出来ればそっとしておいてあげたかったんだけどなぁ」
とは言え……。
「わかった。
ちょっと行ってくる。
でも断られちゃうかも。
その時は諦めるけど見逃してね」
ハルカがまだ続けたいなら、強引に鍛冶師修行から引き剥がすのは本意じゃない。
「無理する必要は無いわ。
あまり人数が多すぎても動き辛くなるだけよ。
気楽に気分転換のつもりで会ってきなさいな」
「ありがとう。セレネ。
ニクスも。少しの間、皆の事は任せるね」
「うん。早めに帰ってきてね」
「私達も頑張りますわ!アルカ様!
留守はお任せ下さいませ!」
「いってら~」
やる気満々のルイザちゃんと、ぐったりモードのアリアも送り出してくれた。
ついでに何か甘いものでも見つからないかしら。
アリアを回復させる必要もありそうだ。
ルイザちゃんにはそっちの方も頑張ってもらおう。
私はその場を皆に任せて転移した。
最初に来たのはドワーフの国だ。
ハルカとイロハ、それにチーちゃんがここにいるはずだ。
しかしハルカが弟子入りした鍛冶工房を訪れても、そこには誰もいなかった。
ハルカ達どころか、NPCドワーフすらいないようだ。
これはいったいどういう事かしら。
試しに周囲のご近所さん達に話を聞いてみても、誰一人行方を知る者はいなかった。
どうやらある時忽然と消えてしまったらしい。
何か鍛冶に必要な素材でも探しに行ったのかしら。
どうしよう。
流石に待ってる余裕はないよね……。
しかたない。
ハルカ達の事は諦めよう。
代わりに他の皆の所を回ってみよう。
先ずはエルフの国かしら。
ルカとイリスはきっと力を貸してくれるだろう。
その後はエリスのダンジョンとエルヴィの通ってる孤児院かな。
戦力になるかは疑問だけど、皆に声をかけておいて二人だけスルーは気が引ける。
ルネルを見つける手段は相変わらずわからない。
まあ、そのうちしれっと現れるよね。
ルネルだってもう私のお嫁さんなのだ。
私のピンチには駆けつけてくれるに決まってる。




