36-57.vs魔神 - 勇者と聖女
「アルカ様!?
何故こちらに!?」
「話は後よ!
先ずは安全確保!」
私達の出現に真っ先に気付いたのはルイザちゃんだった。
アリアとニクスは眷属の群れと戦闘中だ。
私達の所だけでなく、こちらでも眷属達の大量召喚が発生したようだ。
ノアちゃん達ががすぐさま二人に加勢した。
その隙に、私、セレネ、ルチアで、魔神戦エリア範囲ギリギリの場所に結界を構築していく。
「リヴィ!アウラ!クルル!
悪いけどアリアとニクスと交代してきて!
必ず三人一組で動いて頂戴!安全第一よ!
危なかったらすぐに結界に戻って!
ラピスは三人に状況説明をお願い!」
「「「「がってん!」」」」
これで前衛が二組。
ノアちゃん、ルビィ、レヴィ(inセフィ姉)。
リヴィ、アウラ、クルル。
結界維持に三人。
私、セレネ、ルチア。
結界内に四人。
ラピス、アリア、ニクス、ルイザちゃん。
どう考えても手数は足りていない。
今も前衛組の隙間を縫って、何匹もの眷属達が結界に牙を突き立てようとしている。
でもこれ以上は戦力をバラせない。
幸いすぐに結界が破られる程でもない。
いったいどれだけの間保つのだろうか。
そもそも、こんな場所で何時までも攻めあぐねているわけにはいかないのだ。
話が済んだら、早急に方法を考えて本体を攻略しないと。
問題はアリアがどこまでやれるかだ。
シーちゃんは聖女がマス内にいるだけでも構わないと言っていたが、逆に聖女だけでは魔神本体に傷を付ける事は叶わなかった。
私達の役目は、アリアを魔神本体の下まで連れて行く事なのかもしれない。
試しにここは皆に任せて、アリアと二人で転移してみる?
けれど、ルチアもこのエリア内に居ないといけないのだ。
私がここを離れれば、結界の維持は難しいだろう。
かと言ってアリアとルチアを抱えて魔神の下に転移したところで、魔神本体に有効打を与えるのは難しいだろう。
いくら攻撃が通るからって、あんなの一撃で倒せるわけもないのだ。
可能なら、全員で近づきたい。
そして勇者以外の攻撃を通す手段を見つける必要がある。
シーちゃんの口ぶり的には勇者がいないと倒せないだけで、勇者以外の攻撃が一切通らないわけではないのだろう。
ならば、何かバフを撒く感じのスキルがあるはずだ。
何にせよ、先ずは眼の前の眷属達をどうにかしなければならない。
「アルカ!
話終わったわ!」
「承知!
ニクス!
今からあなたが司令塔よ!
後は任せたわ!」
「無茶振りだぁ!?
えっと!取り敢えずアリア!
片っ端から使えそうなスキル使ってみて!」
「がってん!!」
何故か結界を飛び出し、私達と前衛組の間に立って何やら光を放つアリア。
「聖女は?」
「私よ!けど使えそうなスキルなんて無いわよ!?」
ルチアがニクスの問に応答する。
「そんな……ってなにそれ!?」
ルチアがアリアに共鳴するように、光を放ち始めた。
二人の光が明滅し、次第に光量を増して広がっていく。
光に飲み込まれた眷属達は勢いを失い、逆に勇者の仲間達は盛り返し始めた。
前衛組だけでなく、結界にも変化が生じた。
結界を破ろうと牙を突き立てていた眷属達が、突然苦しみだしたのだ!
「その調子だよ!二人とも!
ルイザ!アリアの護衛をお願い!」
「心得ましたわ!」
ルイザちゃんも結界を飛び出した。
出来ればアリアを連れ戻して欲しいのだけど、どうやら今は身動きが取れないようだ。
ほんとなんで、結界の外に出ちゃったの?
考えられるとするなら、この能力を使うのに必要があったのだろう。
なら結界を張り直して無理やり囲ってしまうのはマズイのかもしれない。
どうやら敵もアリアが要と気付いたようだ。
前衛組を抜いて近づいてきた眷属達は、一目散にアリア目掛けて突っ込んでくる。
「させませんわ!!」
巨大な竜の腕を顕現させて眷属達を強引に薙ぎ払うルイザちゃん。
いつの間にこんな術を覚えたのだろう。
「これもう、結界要らなくない?
私達も加勢したらどうかしら?」
セレネが焦れてきたようだ。
まあ、既に結界内には結界を張る私達三人とニクス、ラピスしか残ってないものね。
情報共有が済んで逆転方法を見つけた以上、解除してしまっても構わないのかも?
「ダメだよ!
アリアはともかくルチアも守らないと!
それに前衛組が何時でも休める場所は必要だよ!」
なるほど。ニクスはそう判断するか。
「私達が休む暇は無いんだけど!?」
たしかに。
「頑張れセレネ!根性だ!」
良い作戦が思い浮かばなかったようだ。
「アルカ!ニクスじゃダメよ!
司令塔はあなたがやりなさい!」
「私だって名案なんて無いわ!」
「攻撃手段が見つかったんだから転移でも何でも使えば良いじゃない!」
「無理よ!
何かアリアが動けないっぽいんだもん!」
勇者なのに!
置物系バフ撒き装置と化してるんだけど!
「とにかく少し様子を見よう!
このまま敵を減らせるなら、減らしてから考えよう!」
そういって前線に飛び出すニクス。
どうやら司令塔役は放棄されたらしい。
セレネが余計な事言ったせいで……。
「あるじ!
ラピスも行って良いの!?」
「ダメよ!一人じゃ危険よ!」
ニクスみたいな達人ならともかく、ラピスの戦闘力はぶっちゃけ並だし。
「ならラピスとセレネでルチアを守るから、あるじは前に出て!」
「良い考えね!
アルカ!ここは任せて行きなさい!
結界もできる限りは維持しておくわ!」
「行き当たりばったり過ぎない!?」
司令塔居なくなっちゃうよ!?
もしそのまま結界まで放棄したら、安全地帯も無くなっちゃうよ!?
それに今でこそ敵が前方からしか来ないけど、勢いを盛り返されたら四方八方から押し寄せてくる事になるのだ。
前衛組の後方に安全地帯を用意しておくのは重要なはずだ!
「臨機応変って言うのよ!こういうのは!
押し返される前に押し切りなさい!」
「もう!結局みんなゴリ押しじゃん!!」
仕方ない。
色々不安だけど、私が戦闘に加わるメリットは大きいのだ。
「信じるわよ!セレネ!ラピス!ルチア!」
「「「任せなさい!」」」




