7-4.王都デート
私はノアちゃんと今いる国の王都に来ていた。
あの町で何か起こるのではないかと不安ではあるが、
そうは言っても四六時中張り付いているわけにもいかない。
私達にだって生活はあるのだから。
「そういえば、前回あっちの王都に行った時は結局観光しなかったわね」
「そうですよ!楽しみにしてたのに!」
「ごめんね。今日はゆっくり回ろうね」
「はい!憂いなく見て回る為にも、
まずは目的を済ませてしまいましょう!」
そう言うなり、ノアちゃんは近くを歩いていたお爺さんに声をかける。
そうしてあっという間に王都で有名な大型店舗に辿り着いた。
私はノアちゃんに言われるがまま、
高価な香辛料や各種高級食材などを買い込んでいく。
収納魔法があるからと、
遠慮なく選んでいくノアちゃん。
ノアちゃんが楽しそうで何よりだ。
でも、ノアちゃん?
そろそろ店員さんが困惑してるよ?
貴族にも見えない若い女性がなぜって顔してるよ?
冷静に考えると、
こんな小さいうちから金銭感覚が
ズレすぎているのはマズイかもしれない。
先日こなした大量の依頼の報酬を考えれば、
今日使った程度はたいした金額でもないけれど、
保護者として止めるべきなのかしら。
でもノアちゃん他のものは全然欲しがらないから
あんまり止めたくない・・・
そんな事を悩んでいる内に、
ノアちゃんの爆買いは終わっていた。
「アルカ!ありがとうございます!
これで美味しいドラゴンステーキ焼きましょう!」
キラキラしたノアちゃんの目を見てしまい、
結局何も言わずに店を出る事にした。
まあ、うちのノアちゃんはしっかりしてるから大丈夫!
エイミーあたりに知られたら私が怒られそうだけど!
そうして目的を果たした私達は、
改めて王都探索に乗り出した。
私も過去に一人でこの国の王都に来たことはあったけど、
人が多くて、必要な時以外殆ど出歩かなかった。
なので、私にとっても初めての王都観光だ。
とはいえ、相変わらず服飾品には興味の無いノアちゃんだ。
もっぱら屋台巡りがメインになっている。
後は大道芸を見たり、
観光地になっている塔に登ってみたり、
そんな感じで、あっという間に時間が過ぎていった。
そろそろ次で最後かなと思いつつ質問する。
「ノアちゃんは他に見たいところはある?」
「王都のギルドに行ってみたいです!」
お姉ちゃん、ギルドは観光施設じゃないと思うな~
まあ、ノアちゃん様のご要望だ従いますとも。
私達は王都のギルドに向かった。
この国はギルドの活動に肯定的だ。
そのためなのか、一国の首都にも関わらず、
世界規模の組織であるギルド本部まで置かれている。
ギルドは中立のハズなのに本当に良いのだろうか。
癒着とか大丈夫?
まあ、かと言ってそう都合よく
人も施設も十分に用意できて特定の国に偏らない場所も無いのだろう。
王都のギルドは他の支部より遥かに大きい。
奥には本部の建物も併設されている。
とはいえ、本部の職員が頻繁に来るような場所でもないので、
何かに巻き込まれる危険も無いだろう。きっとたぶん。
「わ~!人がいっぱいですね!アルカ!」
ノアちゃんハイテンション。
心なしか、語彙力が低下している。
ノアちゃんの声が聞こえたのか、
受付嬢らしき人が近づいてくる。
嫌な予感・・・
「ノアちゃんごめん!」
私はノアちゃんを抱えて回れ右する事にした。
「アルカさん!お待ち下さい!」
しかし呼び止められてしまった!
どうしようすっとぼけてこのまま逃げようかしら。
でもなぜか相手は私のことを知っている。
流石に無視したらマズイだろうか。
渋々観念して、相手の方を向く。
「何?」
「奥に来ていただきたいのですが、
お時間宜しいでしょうか」
どうしようやっぱり無理って言うべきな気がする。
何かに巻き込まれる気しかしない。
「アルカ行ってみましょう」
「ノアちゃん?」
「少なくともこの人からは悪意を感じません。
話だけでも聞いてみませんか?」
いつの間にそんな特殊能力を?
いや、まあ、昔の境遇を考えたらその手の感覚は鋭いのだろうけど。
けれど、ノアちゃんがこう言うのだから仕方がないか。
最悪、転移で逃げ出そう。