36-53.既視感
「なんでよ!?
なんで帰れないの!?」
おかしい!
こんなはずじゃ無かったのに!
シーちゃんの下に帰れない!
「何か昔似たような事あったわね。
あの時はニクスがやらかしてたのよね。
そんなところまで再現したの?」
「違うから!
そんなはずないから!
シーちゃん!シーちゃん聞こえる!?
そっちからどうにかならない!?」
ダメだ。
何の反応も返ってこない。
どうやらシーちゃんとの連絡手段まで断たれてしまったらしい。
ルビィを強引に使徒にするのに色々設定を弄った影響なの?
使徒は神の代行者でもあるし、その部分が何か悪さでもしているのかしら……。
仕方ない。
シーちゃんが復旧させてくれるのを待つしかないわね。
それまで私もこの娘達と過ごすとしましょう。
もしかしたらシーちゃんが気を遣ってくれた可能性もある。
私が皆と過ごせるようにと。
「取り敢えず旅支度を済ませたら、セフィ姉達の下へ転移しましょう」
ルビィの使徒化とセレネとラピスの隷属化も済んだし、後は必要な物資を回収すれば旅立てるはずだ。
ルビィの姫としての立場を使えば、物資の方も問題ないだろう。
「転移使えるの?
神だけズルくない?」
「神だもの。当然じゃない。
ニクスみたいに制約があるわけでもないしね」
まあ、シーちゃんの下に帰る事だけは出来ないんだけど。
「なら私達のレベルも上げられるのかしら?」
「無理よ。
それはゲームマスターの管轄よ」
「ならダメじゃない」
「別に必要ないわ。
どうせレベルなんてすぐに上がるから。
セフィ姉と合わせて聖獣三人に、獣人が二人、それに使徒と神の最強パーティーだもの。
向かう所敵無しよ」
合流予定のセフィ姉とクルルも含めて、過剰とも言える戦力になることだろう。
最下位チームが一気に最強チームに早変わりだ。
アリア達には悪いけど、私達も魔神戦に参加してしまおう。
魔神戦さえ終われば、シーちゃんも余裕が出来るかもだし。
シーちゃんが自らの意思で締め出したのでなければ、私を回収してくれるはずだ。
それにもしかしたら、お姉ちゃんの足を引っ張ってアリア達の助けをする事にもなるのかも。
魔神の眷属達を私達も狩っていけば、お姉ちゃんが狩れる眷属の量も減るはずだ。
貢献度が分散されて、結果的にアリア達の逆転の可能性も上がるはずだ。
直接邪魔をするのはやり過ぎかもだけど、ゲストを放って好き勝手やってるお姉ちゃんが悪いのもあるからね。
少しお灸を据えるつもりで頑張ってみるとしましょう。
「おわった!」
大量の物資を集めてくれたルビィ。
使徒化したルビィは収納魔法も使えるので、見た目は手ぶらの美少女一人だ。
それにしても、やっぱりルビィも可愛いわね。
ウサ耳こそ無いものの、成長したルビィってこうなるんだろうなって感じの美少女っぷりだ。
黒髪とルビーのように赤い目がキラキラと輝きを放っている。
今は十五歳くらいかしら。
ふふ。現実世界での将来も楽しみね♪
「それじゃあ行くわよ。
他の皆も準備は出来てるわね?」
「ええ。問題ないわ」
セレネの言葉に皆が頷いた。
私は、セレネ、ルビィ、ラピス、レヴィを連れて、セフィ姉達の下へ転移した。
「!?」
「ママ!」
すぐさまセフィ姉に飛びつくレヴィ。
「もう。ふふ。
びっくりしたよぉ」
嬉しそうにレヴィを抱きしめるセフィ姉。
「助けに来たわよ!クルル!」
「ラピスお姉ちゃん!」
こっちの姉妹も嬉しそうに抱き合っている。
クルルの方が百倍くらい年上だけど、相変わらずラピスが姉らしい。
あれ?
これ私余らない?
セレネとルビィ。
そして、セフィ姉とレヴィの仲良し親子。
それに、ラピスとクルルの仲良し姉妹。
それぞれ対になっているのよね。
いっそお姉ちゃんもここに合流させてしまおうかしら。
私とお姉ちゃんの仲良し姉妹っぷりだって負けてないし。
ただそれやると、アリア達の勝ちの目が一切無くなってしまうんだけども。
ぐぬぬ。仕方ない。諦めよう。
感動の再会が落ち着いた所で、セフィ姉とクルルにも一通りの経緯を説明し、今後の行動を話し合う事にした。
「セフィ姉。
今から直接魔神戦に乗り込んでみようと思うんだけど」
「それはズルいんじゃない?」
「まあそうなんだけどね。
でも、それでようやくトントンなくらい、今のセフィ姉達は負けてるから」
「それは……う~ん」
セフィ姉は根が真面目ちゃんだからね。
普段は我儘でおちゃらけてるくせに、そういう所だけは中々譲れないようだ。
「私の都合で申し訳ないけど付き合ってくれない?
お姉ちゃんの暴走を止めて、私がシーちゃんの下へ帰るには、魔神戦に介入するのが手っ取り早いと思うの」
「まあ……うん……そういう事なら……」
良かった。どうにか飲み込んでもらえたようだ。
気が変わらない内に、早速進めさせてもらうとしよう。
「ルビィ、こっちへ」
「うん!」
セフィ姉の聖獣化と隷属化も済ませて、使徒ルビィの戦力が大幅に強化された。
人魚の聖獣化も強力な戦力にはなるのだけど、フィリアスの方が色々便利な能力が備わっている。
そもそも人魚の方は現実世界ではレーネ一人だから、未だに研究も進んでないしね。
そう言えば、セーレもいつかうちに来てくれないかな?
別に戦力とか実験の為じゃなくて。
なんとなく連想しただけだけど。
「取り敢えずセフィ姉、ルビィに同化……いえ、何でもないわ」
レヴィが悲しげな目で見てきた。
ついでにラピスも睨んできた。
そうね。
折角レヴィとセフィ姉が数日ぶりに再会出来たんだもの。
別に焦って同化の実験までする必要はないわよね。
って、そうよ!
セフィ姉がフィリアスって事は、ルビィとじゃなくても契約出来るのよ!
「セフィ姉とレヴィも契約しておいたらどうかしら?
その二人でなら、同化も試せるんじゃない?」
「「やる!」」
ふふ。即答ね♪
流石仲良し親子だわ♪




