36-47.転職
「はぁはぁはぁ……つっかれたぁ~~~」
「何でそんな体力無いの?
アリア今、レベルいくつ?」
「五十三よ。
ニクスは?」
「……ナイショ」
「何でよ」
『カンストしてるからよ。
アリアよりずっと燥いでたってバレるのが恥ずかしいの』
「何で言うの!?」
『フェアじゃないでしょ。
自分で聞いておいて』
「もう!
ほら!早くやることやって!
意地悪アルカ!」
『意地悪ついでにもう一つ。
ごめん、二人とも。
転職するとレベル一からやり直しだって♪テへ♪』
「「はぁ!?」」
『転職は無事成功よ~♪
それじゃあ、またのご利用お待ちしてま~す♪アデュ~』
「「待って!待て!アルカ!!」」
アリア様とニクス様がアルカ様を模した神像に向かって思わずといった感じに手を伸ばしました。
どうやら時既に遅しのようです。
二人の手が何かを掴む事はありませんでした。
「もう!!信じらんない!!
何考えてんのよ!!」
頭を抱えて怒りを放つアリア様。
「あぁ……私の……レベル……本当に一になってる……。
頑張ったのに……九十九まで上げたのに……」
床に手をついて、失意に項垂れるニクス様。
「きゅぅ~……」
私はお二人にかけるべき言葉が見つかりません。
見つかったところで、伝わりはしないのですが……。
「行くわよ!ニクス!
落ち込んでる場合じゃないわ!
すぐに上げ直しましょう!
このままじゃ間に合わなくなるわ!」
どうやらアリア様は早くもご自身で立ち直ったようです。
流石アリア様です。
「レベル……最初から……」
ニクス様は未だ項垂れていらっしゃいます。
どうやらアリア様のお声も耳に届いていらっしゃらぬようです。
「ニクス!
ほら起きて!
ニクスの力が必要よ!
効率の良い稼ぎ方知ってるんでしょ!
早くしないと詰んじゃうわ!
魔王の出現に間に合わなくなっちゃう!」
「うん……」
アリア様は生返事を発したニクス様を引きずって、教会の外へ向かって歩き出しました。
今度はえぬぴーしーの方々が迫ってくる事もありませんでした。
どうやら問題は解決したようです。
この方達の認識はどうなっているのでしょう。
不思議です。
ところでアルカ様。
何故このような意地悪を?
『いえ、別に……意地悪じゃなくてね?
ニクスが勇者のままなのはこっちとしても不味かったし、やっぱ辞めるのやめるって言われても困るし……』
それは意地悪と言うのでは?
『ごめんなさい……』
なぜレベルを戻さないのですか?
一度下がってしまうのだとしても、上げ直す事は出来るのでは?
『よく気付いたわね。
たしかに不可能ではないわ。
けどまあ、それは出来ないのよ。
システム的な話じゃなくて他にも問題があるの』
というと?
『そこは……ノーコメントで』
アルカ様。
『戦ってみればわかるから!』
何かあるのなら伝えてさしあげるべきでは?
『もう。ルイザちゃんの意地悪』
意地悪はどっちです。
まあ良いです。
アルカ様は大した問題ではないとお考えのようですし。
『問題はまあ、あるんだけどね。
ゲームの運営って難しいなぁ……』
アルカ様も苦労されていると?
『してるわよ。そりゃぁ。
下手に手を出せばバランスが崩れるもの。
他にも真剣に攻略を目指してる娘達だっているんだから』
だからと言って奪い過ぎては本末転倒では?
『過ぎてないってっば。
レベルはペナルティよ。
勇者のジョブはそれだけ強力なの。
代わりに色々補正は乗っけておいたから、すぐに元のレベルを取り戻せるはずよ。
言っておくけど、これは内緒だからね?
内緒でサービスしてあげてるんだからね?』
ならそう言えばいいではないですか。
『ダメよ。それじゃ。
アリア達までグルになっちゃうわ。
別にそれで文句を言うような娘はいないけど、誰も知らなければ要らぬ疑念を産まずに済むわ。
アリア達もそれを察して口を噤んでくれるはずよ。
こういうのは黙ってやるから見逃してもらえるのよ』
……失礼致しました。
『ううん。
こっちこそごめんね。
最後まで黙ってられなくて。
本当はルイザちゃんにだって内緒にして私の心に秘めておくべきだったのに。
悪いけど、ルイザちゃんには共犯者になってもらうわね』
何かお手伝い出来る事があるのですか?
『今聞いた事を胸に秘めておいてもらえればそれで十分よ』
承知いたしました。
『じゃあこれで仲直りね♪
アリアとニクスの事、よろしくね。
今はルイザちゃんが一番強いんだから』
はい!必ずやお守り致します!
『まあすぐ逆転されるだろうけどね。
素の子ドラゴンってステータス大して高くないし』
そう言えば、私は何時まで子供のままなのですか?
『特別な条件を満たすまではそのままよ。
例えレベルをカンストまで上げても変化は無いわ』
条件とは?
『もちろん内緒♪
自分で探してみてね』
承知いたしました。




