36-44.天の声
今回はルイザ視点のお話です。
「遂に来たわね!ダンジョン!」
「きゅい!」
「以前挑戦した時は不完全燃焼だったの!
今度こそ最後まで攻略してみせるわ!」
アリア様がリベンジに燃えています!
道中お聞かせ下さった話しによると、アリア様は元の世界でもダンジョンに挑戦した事があったそうです。
ですがその時は、最下層まで到達する前に保護者判断で中断せざるを得なかったとの事です。
今回は全ての階層を自分の力で踏破するおつもりです。
勿論私も微力ながらお力になりたいと思います。
私達は勢いよくダンジョンに飛び込みました。
「あれ?」
「きゅい?」
おかしいです。
先程までと周囲の様子がまるで違います。
私達が飛び込んだのは、岩壁がむき出しの洞窟だったはずです。
だったのですが、今は明らかに人工物と思われる床や壁に囲まれています。
「アリア姉ちゃん!
それからルイザさん!
ようこそ!私のダンジョンへ!」
「エリス!?」
驚きました。
いつの間にか私達の眼の前にはエリスちゃんが現れていました。
いえ、これは逆なのでしょう。
私達の方がエリスちゃんの眼の前に呼び出されたようです。
「ふっふっふ!凄いでしょ!
私、ダンジョンコア扱えるようになったんだよ!
これって元の世界でも出来るのかな!
アルカ様にお願いしたら貸してくれるかな!」
どうやらエリスちゃんは大層興奮していらっしゃるようです。
ところで今気になる言葉が含まれていたのですが……。
アルカ様はコアを個人で所有されているのですか?
それは犯罪では?
どの国でもコアに干渉する事は重罪とされています。
ましてやアルカ様は冒険者です。
最もコアの危険性や重要性を把握している立場のはずです。
『あはは~!
ごめんね~!
聞かなかった事にしてね~!』
アルカ様?
そちらは構いませんが、心の中は見ないお約束では?
『私じゃないよ!
シーちゃんがね!
皆の状況をモニタリングしてるから!
それで情報漏洩を懸念してね!教えてくれたの!』
まったく。
もう良いです。どうぞご笑覧下さいませ。
私も覚悟を決めました。
むしろ好都合というものです。
『笑ったりしないわ!
いや、笑いはするんだけど!
決して嘲笑ったりはしないわ!
ルイザちゃんが楽しそうにしてて嬉しいなって笑うだけだから!』
くっ……これがアリア様の言う人誑し術!!
『アリアそんな事言ってたの!?』
用心するようにと仰っていました。
忠告は正しかったようです。
『いやほら、この際だからぶっちゃけさせてもらうけど、私的にはルイザちゃんにはアリアと仲良くなってほしいなぁ~って。
これでも私、アリアのお母さんでもあるからね。
娘の想い人に横から手を出したりはしないのよ』
想っ!?
『あ、やっば!
今の無し!忘れて!』
何なんですの!ほんと何なんですの!?
アルカ様は悪魔か何かなのですの!?
『あはは~よく言われる~』
笑い事じゃないのですわ!!
『私的には悪い魔女の方が良いかな~』
どう違うんですの!?
『良いでしょ?悪い魔女。
可愛い女の子達を誑かせて、願いを叶える代わりに呪いをかけるの。
私にピッタリよね!
結構気に入ってるのよ♪』
わけがわかりませんわ……。
『あらら』
そもそも!
アリア様はアルカ様の婚約者ではなかったのですか!?
『そこはちょっと説明が難しいのよね。
それにアリアとの約束もあるし。今更だけど』
意味がわかりませんわ!
アルカ様にはガッカリですわ!!
『むう。それはそれで面白くないわね。
まあ、あれよ。
言えることだけを言うなら、私は可愛い女の子同士が好き合ってるのを見るのも好きなのよ。
私の性癖の為に、ルイザちゃんにはアリアとよろしくやってほしいわけよ。
勿論それだけで終わらせるつもりはないけどね』
それを言って何を挽回出来ると思ったのです!?
『むむ。難しいわね。
まあ良いわ。
ここまで話した以上、ルイザちゃんを逃がすつもりなんて無いんだし。
とは言え少し急ぐ必要はありそうね。
今回の滞在期間中に完全攻略を目指すとしましょうか。
という事でアリアにはもう少し頑張ってもらいましょう』
勝手に話したのはアルカ様ですわ!!
私は性癖の事まで聞いてないのですわ!!
『いや、そっちじゃなくてね?
とにかく、ルイザちゃんはアリアと仲を深める事だけ考えてね。
私もアドバイスしてあげるから♪』
いらないのですわ!
いらないお節介なのですわ!!
何もかも間違ってるのですわ!!
やっぱり悪魔なのですわ!!!
『悪魔で、いいよ。
悪魔らしいやり方で、話を聞いてもらうから』
強引すぎますわ!!
『普通に返されるとなんか違うのよね』
何の話ですの!?
『まあ、とにかく。
仲良くやりましょ、ルイザちゃん♪』
アルカ様、初対面の時と違いすぎなのですわ。
アリア様も苦労されて……いえ、よく似ているのですわ。
流石アリア様のお母様。
アリア様に負けず劣らず無茶苦茶なのですわ……。




