7-2.手がかり
「お爺さんこんにちわ~!」
「おう。久しぶりだなノア。
元気にしとるようで何よりじゃ」
「爺さんも元気そうね。
ドワーフってどれだけ長寿なの?」
「お前さんはまったく・・・」
「アルカ・・・」
何故か二人から呆れた視線を向けられてしまう。
どうやら聞き方が悪かったらしい。
ごめんって。悪気はないんだって。
「まあ儂ももういい歳じゃからな。
そろそろ近いかもしれんな」
「え!?お爺さん!!!」
「安心せい。
お前さん達が生きてる間くらいは生きとるよ」
「脅かすような言い方しないで下さい!」
ノアちゃんが珍しく私とセレネ以外にキレてる。
まあ、セレネに本気でキレるところは見たことないけど。
せいぜいじゃれ合いくらいだ。
ノアちゃんが落ち着いたろところで、
爺さんが私に向き直る。
「そういえばお前さん、また何やら巻き込まれてるらしいな」
「なんでお爺さんがその事を知っているんですか?」
「いや、ギルドの坊主が儂の所に聞きに来たんじゃ。
以前、ダンジョン暴走させた魔道具の事で話を聞かれたんじゃがな
その件でもう一度確認したいとか言うておった」
ギルドの坊主ってまさかギルド長の事だろうか
まあ、爺さんからしたら若造なんだろうけども・・・
というか、ギルド長も余計な事を!
いや、ありがたいけども!
私が渋っているの眼の前で見ておきながらコソコソと!
「それで?どんな話をしたの?」
「まあ、お前さんも困ってるようじゃし、
あまり気は進まんが話しておくか」
もったいぶるわね。
それだけ嫌なら止めるべきだろうか。
「あの魔道具の制作者に心当たりがある。
そいつは儂と同じドワーフの国の出身じゃ。
あの国と一緒に亡くなったものと思っとったが。
どこかで生きていたんじゃろうな」
「なんでその人だってわかるの?
あの魔道具を持ってるのを見たことがあるの?」
「作りを見ればわかる」
職人のクセとかあるのだろうか
というか六百年も前のこと良く覚えているな。
「そして、その男は例の国を滅ぼした魔道具の制作者でもある」
ああ、だから記憶に残っていたのか。
あんな事があったのだから、
犯人探しくらいはしたのだろうし。
「じゃが、流石にもう生きてはおらんはずじゃ。
いくらドワーフが長命とはいえ、
六百年前の時点でそれなりの歳じゃった」
「じゃあ、その男の子孫か、
もしくは遺産を継いだ者、それか奪った者
その辺りが今回の黒幕なのかしら」
「じゃろうな」
ダンジョン制御の魔道具を複数持っていたり、
ドワーフの国を知っていたりしたのだから、
偶然一部の魔道具を入手したという線は薄いだろう。
そうすると、相手はダンジョン制御だけでなく、
様々な魔道具を持っている可能性も高い。
けれど、最初は誤った使い方でダンジョンを暴走させていたのだから、
もしかしたら使い方までは伝わっていないのかもしれない。
早いところ敵の居場所を突き止めるべきだろう。
様々な魔道具を使いこなしたら手に負えないかもしれない。
「爺さんは同じものを作れる?」
「出来なくも無いが、気は乗らんな」
「敵の居場所を特定するのに使いたいのよ。
お願い出来ないかしら」
「もちろん、悪用するとは思っとらんよ。
まあ、仕方なかろう。
ちょっと時間はかかるが用意してやる」
「無理言って悪いわね」
「いや、この件は儂にも関係のあることじゃ。
尻拭いをさせているのは儂の方じゃしの」
「約束通り、この杖でちゃんと終わらせてくるわ」
「そうじゃったの。頼む」
また数日後に来ることにして、
私達はドワーフ爺さんの店を後にした。