36-34.前途多難
今回はルイザ視点のお話です。
「(あれ?
これもう始まっているのかしら?
真っ暗で何も見えないですわ)」
と言うか体も何かおかしいようです。
これが体感げーむというものなのでしょうか。
どうやら狭い空間に閉じ込められているようです。
不思議です。つい今しがたまで広いお部屋に居たはずです。
椅子に座るよう導かれ、頭に何やら帽子のようなものを被った後、一瞬意識が飛んでいたように感じます。
実はあの瞬間に眠ってしまったのでしょうか?
その間にどこかに移動されてしまったのでしょうか?
隣に座ったアリア様がずっと手を握っていて下さったはずですが、今はその感触もありません。
そもそも、手の感覚に違和感があります。
確信はありませんが、指の数が足りない気がします。
怖くて確認する事ができません。
それにおかしな所は手だけではありません。
背中とお尻の辺りがもぞもぞします。
何か覚えのない感覚が生えてきたように感じます。
不思議です。
どうにか身を捩って状況を確認すると、球体のようなものに覆われているのではないかと気が付きました。
少々端ないとは思いますが、頭や手足を必死に打ち付けてどうにか外に出ようと試みます。
なぜだかこの暗闇に恐怖を覚えることはありませんが、何時までも居たいとは思えません。
むしろ早く外に出たい気持ちでいっぱいです。
そこに不安はありません。
とっても不思議です。
「これがルイザなの!?
もう!どうしていきなりリヴィなのよ!
難易度高すぎるでしょ!」
アリア様!?
アリア様のお声が!?
「キャラメイクをランダム制としたのは、アリアの案です。
不満なら次回から変更しましょう」
もう一人の声は確かシイナ様と仰ったはずです。
げーむますたーというお役目があるとの事でしたが、どのようなお役目なのでしょうか。
詳しい説明をして頂ける前に、とにかくやってみようというアリア様のご意見に押し切られていらっしゃいました。
今度こそお聞きできるでしょうか。
「きゅーきゅー!(アリア様!アリア様!)」
あれ?
なんだか今……?
「ルイザ!頑張って!
それは中からしか破れないの!
私はここよ!応援してるからね!」
アリア様の声援が聞こえます。
なんだか力が湧いてきます。
私は気合を入れ直し、壁に向かって力を込めます。
何度も何度も繰り返し、遂に壁に小さな穴が空きました。
外から光が差し込みます。
空いた穴に指先を突っ込み、押し開くように力を込めていきます。
「きゅーきゅー!(アリア様!アリア様!)」
「ルイザ!
凄いわ!頑張ったわね!」
私はアリア様に抱きかかえられているようです。
幼子が高い高いされるように、アリア様に……アリア様?
そのお姿はどうされたのです?
私を抱き上げたアリア様の頭には、髪色と同じ毛並みの猫のようなお耳が生えていました。
同じく、腰からは尻尾が伸びています。
まるでノアお姉様のようです。
アリア様は獣人になられたという事なのでしょうか。
これは体感げーむによるものなのでしょうか。
「きゅ!」
「あはは~!
何言ってるかわからないわ!
でもあなたは間違いなくルイザよね!
私はどんな姿のあなただって見分けられるわ!」
アリア様!!感激です!!
ところで今の私はどうなっているのでしょうか!
「アリアが特別なわけではありません。
参加者同士は互いを認識出来るよう設定されています。
今回はイージーモードですから」
アリア様!?
「もう!良いでしょ!
そんな事言わなくたって!
シイナは意地悪だわ!」
「御冗談を。
こうしてルイザの下まで導いたではありませんか。
これはあなた方だけの特別待遇です」
「それは感謝してるけど!
そもそもスポーン地点一緒にしてくれたらよかっただけじゃん!」
「スポーン地点をランダムにしたのもアリアの提案です。
責任転嫁は止めて下さい」
「だってそっちの方が面白そうだと思ったんだもん!」
どうやらアリア様が無茶を言っているようです。
聞いたことの無い単語があり話の内容は理解しきれていませんが、なんとなくそんな雰囲気が伝わってきます。
「きゅー!きゅっ!
(アリア様!喧嘩はメッですわ!)」
「えっと?
ルイザ何を興奮しているの?
って、そうよね!
私に会えたのが嬉しかったのよね!
私もよ!一緒に頑張りましょう!」
「きゅー!(シイナ様も一緒ですのよ!)
きゅきゅー!(仲良くなさって下さいませ!)」
「心配しなくても大丈夫よ!
きっと私がすぐに人化させてみせるからね!」
「きゅきゅきゅー!!
(全然通じてないのですわー!!)」




