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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
36.白猫少女と原初神

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36-28.気分転換

 私はレーネに誘われて、二人で人魚の国を訪れた。

今回はレーネの部屋に直接転移するのではなく、少し周囲を散策しながら近づいていく事にした。


 多分レーネは、私を心配して連れ出してくれたのだろう。

最近の私の様子を見て、気晴らしが必要だと思ってくれたのかもしれない。


 カノンからも、ムスペルの件で何か聞いていたのかも。


 レーネはつい先日十四歳になったばかりだ。

レーネの成人までにはもう一年ある。


 それが理由というわけでもないけれど、なんとなくムスペルの件を私の口から伝える事は無かった。


 レーネもカノンと一緒に商人として頑張ってくれている。

日々楽しそうにその日あった出来事を聞かせてくれるレーネに、余計な心配をかけたくは無かった。


 そう思ってはいたけれど、結局私は自分の不安を隠しきれていなかったのだろう。


 それが申し訳なくもあるけれど、レーネの気遣いは素直に嬉しく思う。


 せめて今日くらいは諸々忘れて楽しく過ごすとしよう。

レーネの気遣いに応える事こそ、今の私が優先すべき事だ。



『アルカ様。

 くれぐれもセーレとの距離感にはお気をつけ下さいませ』


 ついさっきまで楽しくお喋りしていたのに、実家が近づくなり突然真剣な声音で念を押すレーネ。


 距離感?

レーネの妹であるセーレは、未だ生後四ヶ月程度のはずだ。

いくら人魚の成長が早いとは言え、そんな心配されるような事態にはならんじゃろ。


 まったく。

レーネまで私をなんだと思っているのかしら。

失礼しちゃうわ。ぷんぷん。



『レーネは頻繁に帰っているのよね。

 今のセーレはどんな感じなの?』


『やんちゃで活発な子ですよ。

 そんな所は私や両親とあまり似ていないかもしれません』


『そう?

 レーネも随分やんちゃしてたじゃない。

 そのやんちゃのお陰で、私達が出会えたんだもの』


 元々は家出娘だったものね。

それも、おとぎ話に登場する人化の宝玉を見つけ出して人間の世界を見てみたいって目的で。


 しかも当時のレーネは諸事情により海産物を食べる事が出来なかったので、何日も食料にありつけず餓死寸前で行倒れていたのだ。


 でもまあ、あの経験があったから食事事情も克服出来たのかもしれない。

ノアちゃんのスパルタもあったらしいけど。



『もう!酷いです!アルカ様!

 何時までその話を持ち出すつもりですか!?』


『そんな恥ずかしがらなくても良いじゃない』


『アルカ様!!』


『悪かったわ。もう言わない』


『まったくもうです!』


 ぷくっと膨れるレーネ。可愛い。

頬突っつきたい。キスしたい。


 でもがまんがまん。

もうレーネの実家の中だ。

すぐ近くにご両親とセーレと思しき気配もある。



『そう言えばこの前カノンが言ってたけど、店番中に言い寄ってきた、』


『ストップです!

 その話もお止め下さい!!!』


『これも?』


『ダメです!恥ずかしいです!!』


『そっかぁ』


 まあ、カノンが珍しくレーネ相手に呆れてたくらいだし、気持ちはわからないでもないけども。



『ねぇーね!!!!』


 前方からもの凄い勢いで幼女が突っ込んできた。

幼女はそのままレーネのお腹にロケット頭突きを食らわせて、レーネを巻き込んだまま通り過ぎていった。


 もしかして今のがセーレ?

本当に?四歳児のルビィと同じくらいだったわよ?

いくら成長が早いっても、そんな事ある?

ざっくり、十倍以上の成長速度って事になっちゃうよ?


 少し待っていると、レーネの手を引いたセーレが、今度はまっすぐこっちに向かって来た。



『あーか!』


 私を指差し叫ぶセーレ。

体のサイズはともかく、流石にまだ言葉まで達者なわけではないようだ。

まあ、生後四ヶ月にしては達者なのだろうけど。


 念話でも舌っ足らずな感じって出るものなのね。

どういう仕組なのかしら。少し不思議。


 と言うか、何故私の事を知ってるの?

私がセーレと会ったのは、生まれた直後のまさに赤ん坊って感じの頃だ。

レーネが教えたのだろうか。



『セーレ。指を差してはいけません。

 ちゃんとご挨拶できますか?』


『うー!』


 何故かバンザイしてる。可愛い。



『えーれ!』


 多分セーレと言っているのだと思う。



『アルカ』


 取り敢えず名乗ってみた。

微笑ましいやり取りに、私も笑みが溢れ出した。



『あーか!』


 バンザイしたまま私に飛びついて、そのまま首元に抱きつくセーレ。


 ここは水中だから、普通の幼児には不可能なアクロバティックな動きも思いのままだ。


 どうやら懐かれたらしい。可愛い。



『レーネ』


『ダメです』


 まだ何も言ってない。



『ぶーぶー』


『ぶーぶー!』


『こらっ!アルカ様!

 セーレが真似するじゃありませんか!!』


『ごめんなさい』


『ごーねーさい!』


 可愛い。

何でも真似したがるお年頃なのかしら。



『アルカ様をお連れしたのは失敗だったかもしれません。

 セーレの教育に悪いのではないでしょうか』


『まだ会ったばかりなのに……』


『まーあーた……なーに?』


 どうやらセーレのコピー能力には限界があるようだ。



『どうして再会したばかりでそこまで懐かれるのです?

 私なんて、最初は中々顔も覚えて貰えなかったのに……』


『それは単に、セーレが幼過ぎたからじゃないかしら?』


『そーはたーにー……ぶーぶー!』


 どうやらセーレには長すぎたようだ。

代わりに、ぶーぶーの使い方はマスターしたようだ。賢い。



『こら!セーレ!』


『きゃっ♪』


 笑いながら私を盾にしてレーネから距離を取るセーレ。

そんなセーレに手を伸ばすレーネ。


 そのまま二人は、私の周囲を回るように追いかけっこを始めた。


 セーレ、中々やりおる。

流石にずっと逃げ続ける事は出来なかったけれど、それなりに奮闘出来ていた。

人魚の幼児ってみんなこうなのかしら?




 たぶん、レーネが私をここに連れてきた一番の理由はセーレがいたからなのだろう。


 これは確かに悩んでいる場合じゃないわね。

セーレの可愛さに脳が緩んでいくのを感じるわ。



『あかんぼう』

『わるくない』


 ハルちゃん、精神的に幼い無邪気な子好きよね。

チーちゃんを筆頭に、ハルちゃんの娘達は最初からある程度成熟してるから、尚の事セーレは新鮮なのかもしれない。

ルビィも歳の割に大人びてる方だし。



『ほしい』


 私も。

でもダメよ、ハルちゃん。



『じょうだん』


 ふふ。もちろんわかってるわ。



『きゃ!

 あーか!ひゃはっ!

 たーけてー!』


 レーネに捕まったセーレが私に手を伸ばしている。

私はレーネを抱き寄せ魔法で腕の中に転移させた。



『?』


 そこで予想外の事態が起こった。

レーネがセーレを抱えたまま転移したのだ。

私はレーネだけを転移させてセーレを自由にするつもりだったのに。


 これはどういう事だろうか。

抱き寄せ魔法の元々の仕様なのだろうか。


 別に抱き寄せ魔法は、服や武器をその場に置き去りにするわけではない。

対象者が手にしていたものは、有機物無機物問わず巻き込まれるのだろうか。


 いや、そんな筈はない。

他の子同士で仲良くしている時に私が嫉妬して、抱き寄せ魔法で強引に手元に引き寄せた事だって一度や二度じゃない。


 なんで今回に限って挙動が違ったのだろう。

これは後で実験してみる必要がありそうだ。



『アルカ様!!

 今のはどういう事ですか!!』


 でも先ずは、レーネの誤解を解かなきゃだ……。


 レーネ視点だと、私がセーレに抱き寄せ魔法を使用する条件を満たしたように見えたことだろう。


 すなわち、私がセーレを愛しい存在として認識したと思われているはずだ。


 困ったなぁ。どう説明しよう……。

これきっとすんなり納得してくれないやつだよね……。

何か元々疑われてたし……。

まあ、全部日頃の行いが招いた結果なんだけども。

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