表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
36.白猫少女と原初神

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1009/1424

36-25.決闘

 サンドラ王妃は確かに強かった。


 加えて、私の本当の目的が王妃との敵対関係の回避である以上、決闘もそれに則ったものでなければならなかった。


 先ず手抜きはダメだ。

少なくとも、それを悟られてはいけない。


 かと言って、圧倒しすぎてもダメだ。

この決闘を通して、私達は対話をしなければならない。


 真摯に向き合ってツムギ達への想いを伝えつつ、一瞬で終わらせない程度には加減しなければならないのだ。


 そんな条件があったとはいえ、当然私が負けるはずも無かった。


 いくら王妃様が剣聖以上の剣技を身に着けていようとも、ハルカの積み重ねには遠く及ばない。


 だからまあ、この状況は順当な結果なのだ。

私、悪くないよね?



「もう!

 何で決闘なんてしちゃったのよ!?

 意味がわからないわ!!」


 いつの間にか決闘の見物客に紛れていたツムギは、私が王妃様を下すなり、襟首を引っ掴んで離宮内の一室に引きずり込んだ。



「正直私も飲み込みきれていないの。

 それよりツムギ。

 今はお義母様の側に付いていてあげて」


 王妃様は決闘の最中、力尽きて倒れてしまった。


 王妃様は終始必死だった。

実力差なんて、きっと最初からわかっていたのだろう。


 それでも心折れる事なく挑み続けてきた。

結局一度も負けを認める事はなく、何度も何度も立ち上がって剣を向けてきた。


 全てを出し切って、意識まで手放して、ようやく止まることが出来たのだった。


 王妃様の考えの全てが理解できているわけではないけど、それでもなんとなく伝わって来た事もある。




 きっと、王妃様は家族を手放したくなかったのだろう。


 あんな無茶な条件を突きつけてきたのも、それくらいしなければツムギ達の想像通りにせざるを得なかったからだ。


 すなわち、自らの手で娘たちを追放する事になるのだ。

既にツムギ達は、悪しき魔女の手に堕ちた裏切り者なのだから。




 もし仮に王妃様が私を下していれば、ツムギ達の出奔も有耶無耶に出来たのかもしれない。


 王妃様が私より強いと証明されれば、私に拐かされた娘達を側に置き続けても、自分が目を光らせている限り問題無いと言い張れたのかもしれない。


 逆にツムギ達の目論見を潰せたとしても、私の影響が残っている限りは、娘たちを手放さざるを得なかった。




 そして自らが負けた場合でも、娘達を失わずに済むかもしれなかったのだ。


 無条件で従うというのは、その為の条件だったのだろう。

ツムギさえ望んでくれるのなら、これからも国に帰って来てくれるかもしれないのだ。

きっとそんな可能性を残したかったのだろう。




 私だって同じことをするはずだ。


 家族が失われると知れば、敵わないと知っていても挑んだはずだ。


 もし失われるのが避けられないのだとしても、少しでも繋がりを残せる方法を模索したはずだ。




 勝てば取り戻せる。負ければ切り捨てずに済む。

そう考えたから、決闘なんて手段を選択したのだろう。

自分の有利な政治対決を投げ捨ててしまったのだろう。


 自分を誤魔化すためには、それしか道が無かったのだ。

一番に国を想う者としての自分より、娘達を想う自分を優先したのだろう。


 けれどそれを自分では決断出来なかったのだ。

自身の立場と矜持がそれを許さなかったのだ。




 私はあの方を敬おう。

失礼な態度を謝罪して、仲直りを願い出よう。


 なんだかこれでは私が落とされてしまったみたいだ。

もちろん恋だとかそんなものではないけど、私はあの方を気に入ったのだろう。


 あの方の剣は、確かに私に届いていたのだ。

体に傷は与えられずとも、心には突き刺さっていたのだ。




「ツムギも王妃様とちゃんと話してみて。

 何やらわだかまりがあるみたいだけど、あの方はきっとツムギを見てくれているわ」


 きっと今なら、普段より少し素直な心も見れる筈だから。



「……小春、全て解決したと思ってるの?」


「ええ。きっとね」


「残念だけどそんな筈は無いわ。

 言ったでしょ。

 お母様はとっても頑固者なの。

 何だかんだと私の言葉にだって難癖付けてくるに決まってるわ」


「けれど決闘の結果を反故にする方ではないのでしょう?」


「ええ。それは間違いないわ。

 ただ素直に納得しないのよ。

 アドバイスとか何とか言って、私の指示に意見を挟んでくるはずよ。

 だから一度完膚なきまで叩き潰さなきゃいけなかったの。

 そしてそれは、私が実行者でなければいけなかったの」


「ツムギの気持ちもわかるけどね」


 何処のご家庭も似たようなものよね。

何時までも子供扱いされて、まともに取り合って貰えない事にもどかしさを感じるなんて事は。


 ツムギのお義母様へのわだかまりはそういう事なのね。

もっと複雑な事情でもあるのかと思ってた。



「それでも敢えて言わせてもらうわ

 それくらい付き合ってあげなさいな。

 せめて今だけで良いから。

 お義母様はもう限界なの。

 ツムギにとっては何時までも強くて偉大なお母様かもしれないけれど、あの方も一人の人間よ。

 私が言えた事じゃないけれど、今のこの国の状況は、あの方にとって酷なものよ。

 少しの間だけ、側に行って寄り添ってあげなさい」


「……何で私がお説教されてるのよ」


「ふふ。

 前世の記憶を持っている割に、子供っぽい事を言うのね」


「子供の期間を繰り返しただけなんだから当然でしょ」


 そう言えばツムギが憶えている前世の記憶は、向こうの世界に居た頃の十数年だけだものね。



「ツムギもわかっているのね。

 自分の言葉が、」


「もう!わかったわ!

 それ以上言わなくて良いから!」


「アニエスとナディも一旦送り返すわ。

 皆で落ち着いて話をしてあげて」


「父様も母様もナディ姉様を見たら驚くかしら」


「すっかり元気になったものね。

 とは言え、まだ無茶は厳禁よ。

 ナディったら、すぐに羽目を外すんだから。

 ツムギもしっかり見ていてあげてね」


「ええ。任せておいて。

 それと、遅れてごめんだけど、その、ありがとう。

 決闘、引き受けてくれて」


「ううん。お役に立てたのなら幸いよ。

 それにツムギの言う通り全てが解決したわけでもないわ。

 そっちもツムギ達に任せるからね。

 お義母様との件に区切りがつくまで、家に帰ってきてはダメよ?」


「ならステラを寄越してくれる?

 私一人では手が回らなそうだし」


「ええ。送り届けるわ。

 ノアちゃん達にも諸々伝えておくから」


「うん。お願いね」


 そう言えばステラの秘密って何だったんだろう。

このままお義母様の件は片付きそうだけど。

これは次回に持越しかしら?

いやまあ別に、これ以上事件が起きてほしいわけじゃないけども。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ