36-20.反省会
「あれ?エルヴィ?」
「あ、起きた。
調子はいかが?」
「う~ん。大丈夫そう。
ルネルは?」
「アリアちゃん達の訓練に向かったわ」
「え!?
もうそんな時間なの!?」
『大丈夫だよ、アルカ。
分体は私が引き継いだから。
必要無さそうなとこは下げちゃったけど』
「そっか。ありがとうハルカ」
『えへへ~』
「私には?」
「え?
あ、うん。
ありがとう、エルヴィ。
膝貸してくれて。
とっても寝心地良いわ」
「ふふ。そうみたいね。
まだ起き上がろうともしないし」
「もう少し借りてて良い?」
「ええ、もちろん♪」
「ありがと」
エルヴィ、すっごくご機嫌ね。
一日レヴィ達と遊んで楽しかったのかしら。
そう言えば今はレヴィ達どうしてるのかな。
ハルカが相手してくれているのかしら。
後でエルヴィ取っちゃった事謝らないと。
いや、なんかそれも変か。
あっちにも私いるんだし。
「ルネル怒ってた?」
「う~ん。
ふふ。ナイショ♪」
「え~」
「自分で確かめてみて♪」
まあ、エルヴィのこの様子を見る限り、ルネルが機嫌悪いって事はないんだろうけども。
『大丈夫です。
ちゃんと小春先輩の攻撃は届いていましたよ』
攻撃って、もしかしてキスの事?
『はい。
ルネルの心に深いダメージを与える事に成功しました』
それ大丈夫じゃないやつじゃん!!
『まあ、大きな進歩とは言えるわね。
今までルネルの体に触れる事すら出来なかったのだから』
でも抱き寄せ通用するなら普通に今までも出来たんじゃない?
『つかまった』
『わざと』
『たぶん』
『ルネル』
『つきあった』
『それがしんぽ』
もしかして、あれ以外にも回避手段が存在してるって事?
満更でも無かったから、わざと捕まってくれたの?
『予想だけどね。
ルネルの使ってた正体不明の技術って、抱き寄せ魔法のブラックボックスの部分と同じなんじゃないかな。
あの巻き戻し術はまだ解析しきれてないけど、近いものなんじゃって思うの。
私達が認識出来ないだけで、魔力や神力とは別の何か、もしくはそれらのもっと純粋な部分を扱う技術なんだと思う。
ルネルはそれを認識して使いこなしてるんだよ』
つまり、抱き寄せ魔法の詳細をルネルだけが把握していて、発動をキャンセルする事すら出来るわけね。
『神術の結界どころか神威すら素通りしてくるのも、きっとそれが理由なのでしょう。
エルフの祖とはよく言ったものです。
気の遠くなるような長い年月をかけて、魔力をより深く追求していった結果なのではないでしょうか』
やっぱり魔力と神力って、根本的には同じものなのかしら。
昔グリアもそんな事言ってたわよね。
『グリアこそとんでもない天才なのかもしれないわね。
さっさと不老魔法かけて永遠に掴まえときなさいな』
その覚悟を迫るには、もう一度ちゃんと話し合わなきゃ。
『もんだいない』
『グリア』
『ぞっこん』
だからって勝手にやるわけにはいかないわ。
グリアは一度明確に拒絶しているんだもの。
『はいはい。
その話は一旦おしまい。
今はエルヴィの番だよ』
『その後は、大お説教大会、家族皆でのお嫁さん歓迎会、私達だけの新人歓迎会と続きます。
先輩は予定を詰めすぎですね。
ご苦労さまです』
あれぇ?
そんな事になってたんだっけぇ?
『大丈夫よ、新人歓迎会は深層でやれば良いんだし』
今日後何時間あるの!?
『みっか?』
歓迎会何時間やる気!?
『大丈夫大丈夫。
私の一日なんて千年くらいあるし』
比較対象がおかしい!
それと止めないって言ったけどやっぱ程々にして!
普通に心配になるわ!
『え~』
『まあ当然ですね。
ハルカ、そういうのは黙ってやるものです。
どうせ小春先輩は言わなければ気づきませんから』
『だからこそじゃん。
私、ちゃんとお母さんに褒めてもらいたいもん。
頑張るのは好きだけど、気付かれないのは好きじゃないよ』
ハルカ!
ごめんね!お母さんが鈍ちんなばっかりに!
もっと気付けるようにしっかり見守ってるからね!
『話が逸れたわね』
『ヤチヨ』
『ハルカのあね』
『にんめい』
『謹んで拝命致します』
なんで今の流れで!?
『私の方がずっと年上じゃない?』
『それ言い出すと、あなたハルより年上よ』
『……何かそれも違うよね。
わかった。私は今ゼロ歳って事で。
毎年ちゃんとお祝いしてね』
『ケーキでも焼いてみようかしら』
良いわね!一緒に焼きましょうイロハ!
でも皆、一旦静かにしててね。
ハルカの言う通り、今はエルヴィと少し話をしておきたいから。
『『『『は~い』』』』




