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第26話 2回目のダンジョン授業

 今日は一週間ぶりのダンジョン探索の日。シエル先生に連れられてハージマルダンジョンの入り口近くの広間に来ていた。


「今日は2階層までの探索を許可します。自分で地図を作れるようになるため、2階層の地図は配布しません。くれぐれも迷子にならないよう注意してください。それでは前回同様、先生はここにいます。いってらっしゃい」


 シエル先生の話が終わると生徒達はパーティーに別れ行動を開始する。『英雄の集い』がルーク達のわきを通り過ぎるとき、ドランはルークに話しかけた。


「おい、ルーク。ちゃんとボクとの約束は覚えているだろうな」


「ああ、ドランとの契約はちゃんと覚えているよ。どちらが先にボスを倒すかだろ。それに契約魔法を使っているから勝敗は誤魔化せない。安心して欲しい」


 ドランはその返答に満足し、嬉しそうに笑う。

 そして、ルーク達を残して各パーティーは2階層の階段のある道へと進んでいった。


「ルーク君、今日はどうするの?」


「前回と同じくみんなから離れて行動するよ」


「ボスまで行く?」


「アハハハ、先生も言っていただろ。今日は2階層までだって。だから僕たちは2階層の踏破率100%を目指すよ」


 エリンとシャルは顔を見合わせる。

 おかしい……いつものルーク君なら先生がダメだって言ってもボスを倒しに行きそうなのに。

 エリンとシャルはモヤモヤしたままルークの後をおった。



 ◇



 ドラン、アリス、サミエル、トムのパーティー『英雄の集い』は、3階層へ続く階段を早々に見つけていた。


 この階層に出る黄色い蛇の魔物リトルスネークでは、ドラン達の相手にならなかった。それもそのはず、リトルスネークはGランクの魔物で討伐推奨レベルは3。それに対してドランとアリスはレベルが10、サミエルとトムはレベルが6だった。


「ドラン、先生が今日は2階層までって言ってたよ。さすがに3階層に行くのはまずくないか?」


「トム……ボクとアリスは剣聖と勇者なんだ。こんな入門ダンジョンのザコ相手に負けるわけないだろ。おまえ達だって、最近レベルが上がらない。もう少し強い相手と戦いたいって言ってたじゃないか」


「そ、それはそうだけど……」


 毎日の放課後、ドランとアリスはシエル先生の指導の下、スタットの町近隣でレベル上げを行って確実に強くなっていたが、最近ではレベルが全然上がらなくなっていた。つまり『強くなりすぎて、弱い魔物からは経験値がもらえない』現象に陥っていたのだ。


「心配するな。ボクとアリスはシエル先生から新しい武器をもらったんだ。なんとミスリル製のショートソードだ! 先生の話だとBランクぐらいの冒険者じゃないと持てないぐらいの凄い武器らしいぞ!」


 ドランは腰から剣を引き抜く。刀身が青白く光っていた。ミスリルは魔銀とも呼ばれ魔力の伝導率が高く軽いのが特徴だ。その鉱石はとても貴重で、それで作られた装備や道具は非常に高価である。


 このときドランだけでなく、アリスも早く新しい武器を使いたくてウズウズしており、ドランの意見に反対しなかった。

 

 3階層に降りた4人は、ドランを先頭に進んでいく。


「おーい、魔物ども! さっさと出てこい!」


 なかなか出現しない魔物にしびれを切らし、ドランは叫びながら歩いていた。アリスはうるさくて気が散ると注意するが、ドランはやめなかった。

 それから少し奥へ進んだとき、サミエルが叫んだ。


「奥に魔物がいる。大きなネズミみたいなやつが3匹いるぞ」


「やっと出てきたか! まずはボクが1人でいく」


「えっ、危ないよ。みんなで行こうよ」


「トム、黙れ! あんなザコ、ボクだけで十分だァァ!」


 そう言うとドランは大ネズミに向かって駆け出し、ミスリルソードを横一線に振り抜く。するとほとんど手応え無く1匹の大ネズミを斬り裂いた。残り2匹の大ネズミはドランめがけて飛び掛かるが、ドランは横にステップしてなんなく躱す。そして振り向きざまに1匹を斬った後、すぐに残りの1匹も倒した。


 サミエルとトムが「すごいよ」「また腕をあげたね」と賞賛した。

 この2人が言うようにドランの成長は目を見張ものがあった。剣聖という職業の恩恵もあるが、放課後に行っているシエル先生との戦闘訓練をまじめに取り組んできた成果も出ていた。


 ドランはアリスにも自慢しようとしたが、アリスの姿が見当たらない。すると通路の後ろからアリスが歩いてくる。


「どこに行ってたんだ? ボクの戦っているところを見ていなかったのか?」


「ハァ……早く2階層へ戻るわよ。魔物の数がかなり多い。このままだとマズいわ」


「何言ってるんだ? あんなザコ何匹いても問題ないさ」


「ルークが言ってた。数は暴力だって。どんな弱い相手でも数が揃うと危険なんだって。だから私は2階層へ戻るから。サミエルとトムも死にたくなければ戻った方がいいわよ。私、今そこで5匹倒したけど、もっと沢山いるみたいだから」


 サミエルとトムは顔を見合わせた後、あわててアリスの後を追った。


「ま、まてよ。ボクも今日のところは戻るから。ちょ、そんな走るなって!」


 アリスには勇者のスキル『危険察知』がある。『危険察知』とは自分に迫る危険を察知することができる能力だ。3人はアリスの『危険察知』スキルのことを知っていたので慌てて撤退したのである。




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