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第24話 ドンカ

「る、ルーク君。これは君が書いたのかい?」


「はい。何か不備があれば教えてください。すぐに修正しますので」


「えっ、いや、不備とかじゃなく、あまりに見事でびっくりしたんだよ」


「そうですか。ありがとうございます」


 ほ、本当に8歳児? 絶対に嘘よ。褒められたときの喜び方なんて、もうオジさんの域だし。


「……エリサさん? その図面の物は作れそうですか?」


 ボーッとルークのことを考えていたエリサは我に返ると、すぐに図面に目を落とす。

 なんだいこれは? ベルトに付ける箱みたいだね。こんなスカスカだと中に物を入れてもすぐに落ちちゃいそうだけどねぇ。


 ルークが制作をお願いしたのは2種類のカード入れだった。そのうち1つは、ケースのいたるところに穴が空いていて、ダンジョン内でドロップ現象を引き起こせるようになっていた。


「作れるけど、これは本当に金属で作るのかい?」


「素材はお任せします。魔物と戦っても壊れないぐらいの強度がほしいです。だから鎧とかで使う素材が良いかと」


「そ、そうなんだね。わかったよ。ちょっと待っておくれ。今、うちのヒトを呼んでくるから。どの素材を使うか決まらないと金額が出せないからね」


 少しするとエリサはエリンの父親であるドワーフのドンカを連れてきた。

 赤毛の髪と髭をぼうぼうと伸ばし、服の上からでもわかるほど筋肉質な身体をしていた。

 

「おおっ、エリン。お帰り! 武器を買いに来たんだって? どれワシが選んでやるぞ」


「お、お父さん。もう武器は選び終わったよ。それよりもルーク君が作ってほしいものがあるんだって」


「はぁ? 何を言っているんじゃ。武器選びは難しいのだ。プロのワシが見てやるから、選んだ武器を見せてみろ」


 エリンとシャルは選んだ武器をドンカに渡した。

 その武器を見た瞬間、ドンカの眉がピクッと動く。そして2人に武器を持たせ、様々な動きをさせた。


「……ふむ。思ったより武器を見る目は持ってるようだな。この価格帯の中ではおまえ達に一番合ってる武器かもしれん」


 お墨付きをもらえて嬉しそうにしているエリンとシャルに、ドンカは武器を渡した。そしてルークに向き直る。


「小僧。おまえ洗礼の儀式のときに、禍々しい光で大騒ぎになったやつだな。ここに何しにきた?」


「その2人と同じパーティーのルークといいます。これを作ってもらうために来ました」


 威圧的なドンカに全く臆することなく、ルークはカードホルダーの図面をドンカに渡す。フンッと言いながらドンカは図面を見ると、何度か頷いた後ルークに尋ねた。


「なかなか良い腕だ。これに入れるのはカードみたいなものか? 実物があるなら見せてくれ」


 ドンカは小石のカードを受け取ると、すぐにカードのサイズを測りはじめる。厚さや重さだけではなく、叩いたり折り曲げたりして耐久性も調べてメモをとる。

 そして指でクイクイとルークを呼んだ。


「このケースは何個ぐらいベルトに取り付けるつもりなんじゃ? 例えば戦闘中に付け替えたり、カードの大きさが変わることはあるのか?」


「あっ、それはおもしろいアイデアですね。サイズがかわる可能性も見落としていました。それでしたら——」


 その後、1時間ほど2人は設計に夢中になる。その間、幾度となくガハッハハハハとドンカの笑い声が店内に響いた。

 設計の打ち合わせがおわるとドンカはルークの肩に腕をまわし「こいつはすごい職人になるぞ。お前、学校やめてうちで働け!」と工房に勧誘していた。


 その後、武器とカードケースの料金として銀貨36枚を支払いお店を出た。エリンとシャルは銀貨7枚ずつパーティーからお金を借りての購入だった。

 カードケースは今日中に作ってくれることになり、明日エリンが学校に届けることになった。


「今日はお店で買い物してくれてありがとね。お父さんがあんなに楽しそうなの久しぶりだったから嬉しかった」


「僕も楽しかったよ。正直言うとエリンのお父さんのことを見くびっていた。この町にあんな腕の立つ職人がいたなんてビックリしたよ」


「……ん!」


 そうかな。えへへへへとエリンは照れ笑いし、家へ帰っていく。


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