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第22話 2人の勝負

昨日(1/28)に『プロローグ』(第0話目)を投稿させていただきました。


そちらもお見逃しなく!


 他のパーティーが魔物を求めて行動するなか、『月夜の宴』は1階層をくまなく歩き踏破達成率100%を目指すことにした。


「ルーク君、ドロップアイテムはどうするの? それも全部集めるんだよね?」


「そうなんだけど、ドロップアイテムは魔物がダンジョンに取り込まれるのを待つ必要がある。そうすると行動速度が極端に遅くなるんだよな……あっ! いいこと思いついた」


 それから順調に1階層を歩いていると、シエル先生のいる広間に出た。

 まだ集合までに時間はあるし、一番怪我をしなそうなパーティーの訪問にシエルは首をかしげる。


「どうしましたか? まだ時間はありますけど」


「いえ、ちょっとそっちの通路に行きたいだけで——あっ!」


「「「……!」」」


 ルークが急に驚いた声を上げたので、全員がルークを注目する。


「あ、すいません。何でもないです。アハハハハ」


 シエルがキョトンとするなか、そそくさとルーク達は広間を去る。

 そしてしばらく歩くと、ルークは急に振り返りエリンとシャルに2枚のカードを見せた。


・【スライムの滴】ランクF 2枚


「す、凄いぞ! これは本当に凄い!」


「る、ルーク君、ちょっと落ち着いて。いきなりどうしたの?」


「……ん!」


 ルークは目をギラギラさせながら、エリンとシャルの手をにぎり小躍りする。2人は訳も分からないままそれに付き合う。


「フゥ……よし落ち着いた」


「ルークがそんなに取り乱すの珍しい。そんなにいいことあった?」


「ああ、カード化したスライムがアイテムに換わったんだ。つまりカード化した状態でもドロップ現象は発生する。ん? ちょっと待てよ」


 ルークは腰に付けた鞄からカードを取り出し確認する。そしてすぐに鞄にしまう。


「仕組みがわかった。手に持ったままのスライムのカードにはドロップ現象が発生した。けど鞄に入れてるスライムのカードにドロップ現象は起きなかった。もしかするとドロップ現象を発生させるには、ダンジョンの空気に触れている必要があるのかもしれない」


 エリンとシャルはウンウンと頷く。たしかに大発見かもしれないけど、ルーク君がそこまで驚くことかとエリンは少し疑問を感じた。


「通常、ダンジョンでドロップ現象が発生するのは10%。さらにドロップした中で3%の確率でレアアイテムがドロップすると言われているんだ」


 そして2枚のドロップカードを2人に見せる。


「僕は手に2枚のスライムカードを持っていた。そしてここに2枚のドロップカードがある。その理由を考えると興奮しないか!?」


「す、凄いよ! それが本当ならもの凄いことだよ!」


「……ん?」


 シャルだけが理解していなかったが、ルークとエリンはさらに検証を行うことにした。その結果、カード化した場合のドロップ率は50%ぐらいだった。100%ではなかったが、それでも十二分にすごい確率だったのである。



 ◇



 集合の時間になったので、ルーク達はシエル先生のいる広間に戻ってきた。

 3人は今日のダンジョン攻略の成果を確認する。


---

ダンジョン図鑑

・ハージマル

 魔物(2/8)

 アイテム(2/15)

 踏破(1階層:100%)

---


 スライムの他にも、通路に落ちている岩を動かしたときに巨大ダンゴムシを見つけ、ドロップアイテム【ダンゴムシの皮】ランクFの取得にも成功していた。


 さらに1階層を完全踏破したとき、ボーナスで魔力が1上がった。ボーナスが階層ごとにもらえることが分かりルークは大いに喜んだ。なぜなら中級や上級ダンジョンになると30~50階層ぐらいざらにあるからだ。


「みなさん、今日はこれでおしまいになります。これからもダンジョン探索の授業はありますので、次回に向けてパーティーで今日の反省をしておいてください。それでは学校に戻ります」


 ——今日最後の授業が終わり帰り支度を始める。アリスがルークに話しかけてきた。


「ルーク、今日はどうだった? 私達、スライムを30匹も倒したのよ」


「それは凄いね。僕たちは10匹ぐらいかな。あとは巨大ダンゴムシを3匹ぐらいだよ。今日は踏破を——」


「ギャッハハハハ。なんだお前! いつもあんな偉そうなのに、たったの10匹! しかも巨大ダンゴムシなんていなかったぞ。嘘つくな!」


 ドランはルークとアリスの話に割り込み、ルーク達の結果をバカにした。

 それにムッとエリンとシェルはしたが、ルークは笑顔だった。


「それでドラン達はどのぐらいレベルが上がったんだ?」


「ボクとアリスはレベルが8。サミエルとトムは5だ。あっ、そうだ。どちらが先にダンジョンボスを倒すか勝負しないか? 負けた方が相手の言うことを1つだけ何でも聞く。どうだ?」


 それを聞いたアリスの顔が真っ青になる。


「ば、バカなのあんた! ルーク相手に勝負を挑むなんて死にたいの!」


「この前、お父様に怒られたことと今回は別だ。正当な勝負なんだからお父様から怒られることはないはずだ。そうだよな、ルーク?」


「違うわよ。なにを勘違いしているのよ! 私が言っているのは——」


「その通りだよ、ドラン。その勝負、受けようじゃないか。英雄である君たちが相手だ。不安だけど僕たちなりに頑張ってみるよ」


「アッハハハハ。今の台詞、ハッキリと聞いたからな。もう取り消せないぞ」


「ヒィィィィィィィ! 嫌よ。絶対に私は参加しないからァァ!」


 エリンとシャルはアリスの慌てる様子を見て、小さいときからあの悪夢のようなスパルタを受けると勇者でもこうなるのかと同情した。


「アリス、大丈夫だよ。これは僕とドランの勝負だ。だから罰ゲームを受けるのは僕かドランになる。それでいいよな?」


「ああ。剣聖であるボクとザコ職ルークの戦いだからな」


「よし、ここにいるみんなが証人だ」


 ルークは周りから見えないように、腰の鞄からカードを取り出し『リリース』と唱える。そして1枚の紙を机の上に置いた。


「さあ、契約書を交わそう!」


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