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第15話 商談

 ルークは冒険者ギルドへ行く前に、太陽教の教会に寄った。


「珍しいねぇ。ルークじゃないか。何しに来たんだい?」

「マドリー様、今日はハイポーションを買いに来ました」

「ハイポーションかい? 今はケアルの実が手に入らなくて作れないんだよ。だからハイポーションはこのスタットの町で売ってないさね」


「ルーク君、手に入らないんだって。どうしよう……」

「それは知っています。材料を持ち込むので、こちらで作ってもらえませんか? ケアルの実と良質のヒーリル草があれば作れますよね?」

「あ、ああ。その材料があれば作れるけど、お前持ってるのかい?」

「はい。あっ、あと洗礼の儀式のときの賠償についても聞きたいので、どこか話の出来る部屋はありますか?」


 マドリー司祭はルークの真意をすぐに理解すると「こっちだよ」と部屋へ案内した。


「ここなら誰かに見られたり聞かれることはないさね」

「ありがとうございます。話が早くて助かります。それではまずハイポーションの材料をお渡しします」


 そう言うとルークは『リリース』と唱え、袋のカード化を解除した。目の前に突然現れた袋にマドリーは驚く。


「これが洗礼の儀式のときに聞いた『コレクト』と『リリース』のスキルかい。これは凄いもんだねえ。ルークが教会本部への報告を誤魔化してくれと言うのもわかるよ」


「「エェェェェェェェ! 報告を誤魔化す!?」」


「あれれ……マズったかい。この2人を一緒に部屋まで連れてきたから、てっきり知っているもんだと思っちまったよ」

「いえ、話すつもりでしたので問題ありません」

「あら、自己チューの塊みたいなお前が、ずいぶんと他人を信用してるんだねぇ」

「人を見る目には自信がありますので」

「フンッ、本当に可愛くないね。このバカはドランの件の賠償分で、このババアに賄賂をおくったのさ。自分の職業とスキルを目立たないようにしてくれってね。普通なら賄賂なんてもらわないんだけど、ルークは面白いからねぇ。ちょっと協力してやることにしたのさ」


 エリンとシャルは口をパクパクさせていた。この二人、自分達の前で平然と不正をしたと話している。しかも8歳の子供が司祭相手に賄賂をおくったと。二人の鋭い目つきが冗談ではなく本当の話だと物語っていた。


「その件は上手くやっておいたから、お前が目立ったスキルの使い方をしなければバレることはないさね。あとお前の家族の賠償に銀貨10枚払っておいたよ」

「ありがとうございます。ドランの件はこれでお終いとしましょう。次はこれを見てください」


 そう言うとルークは机の上においた袋を広げた。すると中にはケアルの実と良質なヒーリル草があった。マドリーの眉がピクリとあがる。


「こいつは驚いたね。どうやって手に入れたかは教えてくれないんだろ?」

「はい。秘密です。まずはこれを使ってハイポーションをできるだけ作ってください」

「金はあるのかい? 後払いは受け付けないよ」

「いくらになりますか?」

「そうさねぇ……この材料だと3本ってところかね。材料持ち込みだから作成料として1本あたり銀貨3枚だよ」

「アハハハ。なかなか足下みますね。その価格なら他のケアルの実も合わせて、錬金ギルドにお願いすることにします」

「……チッ、錬金ギルドは止めておきな。アイツらは商売っ気がありすぎるからね。今後もケアルの実を持ってこれるなら、1本あたり銀貨2枚でいいよ」

「今の市場価値を正確に知るには商売っ気が必要そうですね。彼らなら銀貨1枚で作ってくれますよ。試しに聞いてみましょうか?」

「ほんとクソッタレだね……銀貨1枚。もうこれ以上は下がらないよ!」

「ありがとうございます。はい、銀貨3枚です。あとケアルの実は定期的に持ってきますので、冒険者ギルドと商業ギルドを通さず直接でお願いします。そちらの方々から変な詮索を受けたくないですからね」

「ここは都市国家バルムだよ。商売すれば税金が発生する。それはどうするんだい?」

「太陽教がやっているいつものやり方でお願いします。その代わり定期的に納品するケアルの実は今までと同じ仕入れ価格でいいですよ。それにハイポーションの買い取りもお願いするというのでどうでしょうか?」


 それを聞いたマドリー司祭は大爆笑した。


「アッハハハハハ。お前は本当に何者なんだい? こんな図々しい取引をふっかけられたのは初めてだよ」

「けどマドリー様も十分に利がある話ですよね。それに……」

「ああ、完全に脱税だよ。しかもお前に支払ってもほぼ確実に儲かる仕組みだ。どうやったらこんな悪ガキが育つんだい。負けたよ。面倒なのはこのババアがやってやるから、お前はとにかくケアルの実を定期的に納品しな」


 ルークはペコリと頭を下げた後、マドリー司祭と握手した。

 そして今作ったばかりのハイポーション2本をマドリー司祭に銀貨6枚で売った。1本あたり銀貨3枚。原価となる材料は自分達で採取しているので、1本あたり銀貨2枚の利益だった。



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