表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/52

10 集う決闘者 2

登場人物紹介

挿絵(By みてみん)

アーロン:魔王軍の残した実験機Aヘブンベンヌの操縦者。召喚された西洋軍人で元魔王軍。奇怪な細胞に蝕まれた体を治すため蘇生の秘宝を求める。

挿絵(By みてみん)

リリィ:魔王軍の残した実験機Aグールアンムトの操縦者。病の後遺症で最近まで動けなかった。体を完全に治癒させるため、蘇生の秘宝を求める。

挿絵(By みてみん)

アイル:魔王軍の残した実験機Aワールドハーミットの操縦者。滅んだエルフ国の元王。息子を生き返らせようと蘇生の秘宝を求める。

挿絵(By みてみん)

彩華いろは:実験機Aアビスエルナダハの操縦者。召喚された女サムライ。異性の戦友を蘇生させるため秘宝を求める。

挿絵(By みてみん)

ラン:ナーラー国最強のエージェント。実験機の調査に動く。乗機はSルビーフェニックス。

 退路を塞がれた野盗どもが新しく現れた敵へ襲い掛かる。

 マントを翻し、Aワールドハーミットは両手をかざした。

 風が唸り、吹き荒れ、竜巻となって野盗どもの機体を斬り裂き、吹き飛ばす!

 操縦者の使う魔法が増幅して放たれ、風の攻撃魔術は敵機を一網打尽にした。


 インタセクシルのサムライは一種の魔法戦士でもある。

 その技術をこの世界に召喚されてから学んだ彩華(いろは)には、その魔術で相手の技量が凡そ掴めた。

(強い……!)

 己が命をかけても、勝てるかどうかはわからない……。


 ハーミットからの通信が彩華(いろは)とランに入った。エルフの青年の、美しくも逞しい、そして緊張した顔が映し出される。

『お初にお目にかかる。そちらの……琥珀色の機体に話があるのだが。まだ隊商の護衛として雇われているようだね。私にお付き合い願えるのは何時頃になるだろうか?』

 緊張し、しかし安堵もする彩華(いろは)。都合に構わず襲い掛かってくる相手ではないらしい。



 しかし、ランの機体が急に翼を広げた。

 真紅の鳥人・Sルビーフェニックスが空へと舞い上がる。その右手のパーツが展開して弓となり、紅いエネルギーが充填されていた。

(何事!?)

 思わず身構える彩華(いろは)とエルフの青年・アイル。

 フェニックスはエネルギーの矢を放った。


 二人のいる場所ではない。空の向こうへ、だ。

 彩華(いろは)とアイルが互いに意識を集中しているうちに、上空から近づく機体があったのだ。

 その機体――琥珀色の鳥人機が旋回し、素早く矢を避けた。

 アーロンの乗る実験機、Aヘブンベンヌ!


「また会ったわね。貴方、魔王軍の親衛隊だったそうだけど?」

 以前見かけた後に調べた情報を思い出しながらランが話しかける。

 通信機からアーロンの苛立った声が返ってきた。

『だから邪魔するためにうろついているわけか。目障りな雌犬が!』

 その言葉はランの調査結果を認めてもいた。

「そりゃまぁね。大勢の人様に乱暴狼藉を好き放題働いていた奴を野放しにはできないわ」

 そう言うや、ランは再びフェニックスから紅い矢を放った。

 それを回避し、アーロンはヘブンベンヌで光線を撃ち返す。



(大勢を殺して略奪してたら、やっぱり許されないか。わかってはいたけれど)

 ランの言い分はAグールアンムトの操縦席にいるリリィにも聞こえていた。

 そのアンムトは行商隊の運搬機倉庫の中である。

 リリィは初めから出撃していなかったのだ。



 フェニックスとベンヌが激しい空中戦を始めた。高速で飛び回り、紅い光の矢と太い光線が交錯する。

 互角の攻防――互いに正確な射撃で互いを狙い、互いに際どい所でなんとか避ける。どちらも並の腕前ではない。


 しかし地上からランに援護射撃があった。

 この世界のサムライの技として魔術を習った彩華(いろは)と、元より魔法戦士だったアイル。二人は機体を通して魔術を使い、発動した呪文はケイオス・ウォリアーのサイズと威力に増幅されて放たれた。

 魔法の光球と電光がベンヌを危うい所で掠める。

 元魔王軍と知れば、二人にとってもベンヌが優先すべき敵なのだ。


『おのれ! 劣等人どもがァ!』

 苛立ったアーロンは二門の砲を別々の方向に向けた。片方はフェニックスへ、もう片方は地上の二機へ。

 そして同時に撃つ!

 太い光の奔流は天を焼き、大地を穿って穴を開けた。

 フェニックスは旋回し、地上の二機は素早く跳び退き、危い所でその砲撃を避ける。だが三人の操縦者は皆が冷や汗をかいていた。

(かなりの火力ね! まともに受ければ一撃で落とされかねないわ)

 ランは改めて敵に集中する。


 一方、アーロンは素早く急降下。地上に降り立つと再び砲を構えた。狙いはエルナダハとハーミットの二機。

 しかしなぜ地上で?

 それを理解し、ランが「やばっ!」と焦る。


 ベンヌの射線上には——商隊がいたのだ。

 避ければ彼らを巻き込むように。

 彩華(いろは)とアイルもそれを理解し、動きに明らかな動揺が混じった。

『燃えて散れ! 下等人ども!』

 怒りと喜色を籠め、アーロンが叫ぶ。二門の砲から太い光線が放たれた。


 地面を焼き払いながら伸びた光は二機の実験機を呑み込む。

 それでも止まらず、その後ろにあった行商の運搬機達をも。

 爆発!



 立ち昇る煙を前に笑うアーロン。

有色人種(カラード)と土人が! 身の程を知らんからそうもなる」

 しかし……煙が晴れた時、二機の実験機はそこに立っていた。

 ハーミットとエルナダハ、二機の前には半透明の障壁が造り出されている。どちらの操縦者も魔術を使う戦士……防御障壁の呪文を習得していたのである。

 どちらの機体も致命傷ではなかった。


 さらに、ベンヌのモニターに新たな機体が映る。

 煙をあげる運搬機の倉庫から、別の実験機が出て来たのだ。

 リリィの乗るAグールアンムトが。

(まだいたのか!?)

 驚くアーロン……直後に衝撃が襲った!

 フェニックスの矢をベンヌの背中に受けたのである。


(流石にこの状況では巻き返せんか)

 アーロンはベンヌを空へ飛ばす。迫るフェニックスにさえ目もくれず、遥か上空へ。

 ほどなく機体は雲の中へ突っ込んだ。そこから水平に飛び、行商隊からひたすら離れる。

 しかし、そうして逃亡しながらも、アーロンは胸の内で執念を燃やしていた。

(ここに秘宝の欠片が三つもあるのだ。諦めはせんぞ……)


 既に一つ手に入れているアーロン。ここで三つ手に入れれば後一つ……秘宝の完成まであと一歩の所まで一気にいける。

 死への恐怖、焦り、助かる希望、欲。それらがアーロンの闘志に火をつけていた。

(すぐに戻ってくるぞ……すぐにな!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ