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9 野獣と女達 3

登場人物紹介

挿絵(By みてみん)

聖輝せいき:魔王軍の残した実験機Aブルートセルポパルドの操縦者。元は王家に仕える騎士。主人だった姫君を蘇らせるため蘇生の秘宝を求める。

挿絵(By みてみん)

リリィ:魔王軍の残した実験機Aグールアンムトの操縦者。病の後遺症で最近まで動けなかった。体を完全に治癒させるため、蘇生の秘宝を求める。

挿絵(By みてみん)

ラン:ナーラー国最強のエージェント。実験機の調査に動く。乗機はSルビーフェニックス。

 Sルビーフェニックスを狙うAブルートセルポパルドの蛇の牙。自身の繰り出す斬撃を縫って、それは敵機を捉えるかに見えた。


 だがフェニックスは横へ跳んだ。間一髪、牙は宙で噛み合わされる。

 跳んだフェニックスは崖の真上へ……だがこの機体は飛べるのだ。翼を広げ、上空へ舞う。

「あんた、ナーラー国王族の何なわけ?」

 セルポパルドを見下ろして訊くラン。自身の所属も今はこの国の朝廷である以上、訊かないわけにはいかなかった。

 フェニックスのモニターにセイキの顔が映る。憎悪に満ちた目で。

『ナーラー国の皇騎士、セイキ。おそらく今やただ一人の、な』


 ランがナーラーに来た時、皇騎士団は既に壊滅していた。だがその名称を一応は知っていた。

「それが本当だとして、なぜ天王の元に戻らないわけ? その騎士団はこれから再編が始まる筈よ」

『俺が戻るのは、我が君を蘇らせてからだ!』

 怒鳴ったセイキはセルポパルドの溶解液をフェニックスへ放った。

 フェニックスは回避行動に移るも、ボディの一部に溶解液を浴びてしまう。煙が装甲から上がった。



 直後、セルポパルドを包む燃えるような光。

 それが光量を増すと、爆発を起こした!


 しかし……光と爆炎を、セルポパルドは容易く振り払う。装甲には傷一つ無い。

『なんだこれは? 見た目が派手でも威力はない。まやかし、コケ脅しか』

 小馬鹿にしたセイキの声が、通信機ごしにランへ届く。


 ランは唇を噛んだ。

(ま、通じないとは思っていたけどね)


 不死鳥獣人ランのもつ強大な超能力……敵へ【死】を送り返す力。自分に危害を加えた者を焼き尽くす光。それは不死鳥の纏う炎が捕まえようとした愚者を焼き尽くす事を神通力で再現した能力である。

 ランはこれを「オートカウンターの即死チート」と呼んでいた。

 だが、以前ゼナのAカルネージアポピスと戦った時、この能力は跳ね返された。ケプリケペラは生命の神々が力を籠めて生み出した秘宝、死の魔力に完全な抵抗を発揮したのだ。


(実験機にこの力は効かない……それを確認しただけよ。こうなれば腕で勝負するだけ!)

 正直悔しさはあったが、ランはフェニックスの右腕に内臓された弓を作動させた。そこから紅いエネルギー矢をセルポパルドへ撃つ。

 敵機も溶解液と伸縮自在の蛇の頭で応戦してきた。



 スピードに優れた二機の鋭い攻撃の応酬。致命傷になるほどのクリーンヒットはそう起きない。

 だが完全に避け続ける事もまたできなかった。両機、小さな傷なら既にいくつも負っている。


(こうなると、私が有利……な筈なんだけど)

 ランは機体の状態をモニターで確認した。ルビーフェニックスにはランのもう一つの超能力で自己修復能力が与えられている。ダメージを受けても徐々に回復していた。

 だが敵機のデータをモニターに出すと、損傷度はどうも似たようなものだ。

 つまり……一撃で受けるダメージは自機の方が大きいという事。

 逆に言えば、敵機の方がパワーが大きいという事でもある。

(ハイスピードでハイパワー……なんともわかり易い強さだこと)

 ランが舌を巻いていると、新たな衝撃でフェニックスが揺れた。


 肩口にエネルギー矢を受けつつも、セルポパルドは伸ばした蛇の頭でフェニックスに噛みついたのだ。敵機の脇腹を牙が抉り、衝撃がフェニックスを揺らす。



 一撃を与えながらも、セイキは苛ついていた。

(地上戦ならば、再生能力が無ければ……今ごろ落とせている物を!)

 高速飛行するフェニックス相手に、地上での近接格闘戦を得意とするセルポパルドはあまり相性が良いとは言えない。

(一度捕まえた、あの時。離しさえしなければ……)

 完全に食いついていたのに、Aグールアンムトにぶつけて離してしまった。今となってはそれが悔やまれる。

 敵の矢がまた装甲を掠めた。だがこちらの溶解液も敵機を掠めて煙をあげる。

(際どいか。だが俺が圧し切ってみせる!)

 ほとんど五分の攻防の中、セイキは憎き紛い物の英雄相手に勝負を挑んだ。


 だが勝負を挑むという意味では、ランはセイキ以上だったと言える。

 フェニックスの使える最大威力の切り札をここで切ったのだ。

フェニックスが構える光の弓がさらに巨大化した……上下二枚の翼のごとく。膨大な光量の矢がそこに発生する。

矢が放たれると、それは火の鳥となって敵機を撃つ。


(避けきれない!)

 火の鳥となったエネルギー矢の弾速に、セイキは一瞬でそう判断する。ほぼ反射的に右腕の蛇頭を伸ばし、矢にぶつけた。

 火の鳥とヘビの牙が中空で激突し、文字通り火花を散らす!

(打ち破れる。パワーならばこちらが……)

 セイキがそう考えた、その時。

 フェニックスは既に動いていた。

 紅く輝く剣が火の鳥と重なり、ヘビの頭を断ち割る!

『フェニックス・ダブルブラスト!』

 ランの叫びとともに剣は火の鳥を吸収して纏い、伸びた腕を切り裂き、セルポパルドまで届き、胴体を深々と切り裂いた――。



 ゼナのAカルネージアポピスで使おうとし、結局は中途半端で止めたフェニックス最強の武器。

 最大出力のエネルギー矢を放った瞬間、全速で前進し、斬撃を追いつかせ、重ね合わせて一体の剣と成し敵を斬る。

 この二段技こそ、ランがルビーフェニックスで繰り出す最大最強の必殺技だった。


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