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Doom Duellists(ドゥーム デュエリスツ)——果てなき希望——  作者: マッサン
第一部 惹き寄せる者達
12/52

3 獣道の猛獣 4

聖なる力を内に持つ魔性の巨人が動き出す。

ここに三機目が。

——砦の指令室——



 迎撃に出した全機体が倒され、残党達は最後の切り札をきる事にした。

 リーダーの戦士——魔王軍に召喚された数多くの聖勇士(パラディン)の一人——が、操作盤を激しく叩く。

「へ、へへ……お前の出番が来たぜえ」

 モニターには外が映っていた。

 格納庫とは別のシャッターが開き、そこから巨大な生物が出てくる光景も。


 地球の恐竜でいう大型の獣脚類——アロサウルスやティラノサウルス等——によく似た、身長二十メートルを超える巨竜。

 だが聖輝(せいき)が以前倒した個体とは違い、その体の各所は装甲で補強され、巨大な人工の鉤爪が腕に、熱線砲が背中についていた。

 魔王軍で一部の研究者達が熱心に研究・開発していた兵器、改造怪獣……この竜はそのうちの一体なのである。

 元の竜の戦闘力を数倍に高めたこれに、いくら操縦者の腕が立とうと量産型の青銅級機(ブロンズクラス)が勝てる筈が無いのだ。

 青銅級機(ブロンズクラス)出力(パワー)ではこの竜の装甲は貫けずダメージにならない。竜の一撃は容易に青銅級機(ブロンズクラス)を破壊する。0対100の戦いに技量など影響はしない。

 だからこの基地を襲撃した聖勇士(パラディン)は、この改造竜に絶対葬られるしかなかった。



 だがしかし。

 丘の別の場所が開いた。残党どもさえ知らないシャッターが。

 そこから初めて姿を見せるケイオス・ウォリアーが出てくる。


 琥珀色の鎧を纏った獣人型の機体。

 頭はヒョウ。

 左腕には巨大な鉤爪。

 そして右腕の手甲はヘビの頭。


「なんだありゃあ! この基地から出たぞ?」

 残党の一人が困惑している、その時——その機体の操縦席では、聖輝(せいき)が眼をギラつかせ、己の機体に呼び掛けていた。

「初の獲物はあれだ。Aブルートセルポパルド」


 異形の機体の右腕が、その蛇の頭が伸びた。外見からは考えられないほどに。それは改造竜にぐるぐると巻き付き、全身を縛りあげた。

 竜が狂暴に吠え、巨体を捩る!

 だが……ほどけない。千切れない。体格で上回り、人工的に強化もされた竜の力でもってしても。

 それどころか、竜の背に搭載された砲塔が、締め上げられる力に耐えきれずひしゃげて折れた。

 そして先端のヘビの頭が牙を剥き、竜の後頭部に嚙みついた!


 悲鳴をあげる竜。

 そこへ異形の機体は跳びかかった。

 そのまま締め上げても勝てるかに見えるというのに。


 巨大な鉤爪が突き刺され、拘束の隙間から心臓を貫く。

 ヒョウの頭が鋭い牙で、竜の喉笛を噛み破った。


 大音響とともに改造竜が倒れる。

 何一つ抗えぬまま、哀れにも絶命……!


 跳びかかったのは当然だった。

 締め上げ続けるより遥かに早く、容易く仕留める事ができるとなれば。



 司令室の残党達は静まり返った。切り札が一方的に屠られた、信じ難い光景に。

 だが彼らはざわめいた。

 異形の機体の右腕、ヘビの頭が丘に向けられたからだ。

 ヘビの口中から大量の飛沫が飛んだ。それが丘に降り注ぎ——煙をあげて大地が溶解する! 当然、その下に隠された砦も……。


 リーダーは通信機に怒鳴った。

「こ、降伏する! 獲った物は全部やるし、俺達はここから離れてもう戻らない!」

 丘の外に、異形の機体に、確実に届いた筈だ。

 だが、溶解液の雨は止まなかった。

 天井が煙をあげて歪み、そして崩れる——!



 土と鉄とコンクリートが(おぞ)ましく混ざった小山。煙をあげるかつての隠し砦の成れの果て。

 それに背を向け、魔王軍の実験機は歩き出した。

 操縦席でセイキが呟く。

「エルミオネ姫。俺が御救いいたします」

 ギラつく眼は獣そのものだった。

「俺にはできる。俺にだけはできる。この、俺にだけ……!」

 彼は戦いに向かう。他の五機を倒し、秘宝の欠片全てを手に入れるために。


 秘宝を奪い合う者、三人目——最後の皇騎士・聖輝(せいき)

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