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Doom Duellists(ドゥーム デュエリスツ)——果てなき希望——  作者: マッサン
第一部 惹き寄せる者達
11/52

3 獣道の猛獣 3

物語の舞台は再び「今」へ。

 窓から差し込む朝日が顔に当たり、聖輝(せいき)は目が覚めた。

 ベッドから身を起こすと、隣で寝ていた女も目を覚ます……全裸の、豊かな体の田舎娘が。


「あの……満足していただけたでしょうか」

「ああ」

 心配して訊いてくる娘に、聖輝(せいき)は適当な返事をする。それでも娘は安心したようだった。

 聖輝(せいき)もまた裸である。

 娘とは昨夜男女の仲になったが……聖輝(せいき)は彼女の名も知らない。この部屋を出ればもう二度と会う事も無い。


 貧しい村が腕の立つ冒険者を雇う時、報酬の一部——あるいは大部分——を、女をあてがって賄う事もたまにある。

 以前の聖輝(せいき)なら、そんな報酬は受け取らなかっただろう。

 だが仕えていた姫を失ってから、彼は女も覚えたし、付き合いでしか飲まなかった酒も独りでやるようになった。



——村から少し離れた森の中——



 機体の目を通して木々の隙間から覗えば、丘の側面に人工の入り口が見えた。それが村人達から討伐を頼まれた、魔王軍残党の根城になっている隠し砦だ。

 本来ならそうそう見つかる筈はないが、ずさんに近隣を荒らす残党どもは容易に後をつけられ、村人達に突き止められていたのである。聖輝(せいき)はそれを討つよう頼まれ、引き受けたのだ。


(組織が壊滅して統制が無くなったからか。それとも今いる残党は本来の駐屯部隊ではないのか……)

 そう考えつつも聖輝(せいき)は砦に照準を合わせた。

 そして、機体が装備している弩を撃つ!

 矢は丘に突き刺さった。ほどなく、丘の一画に偽装していたシャッターが開き、中から五~六機の量産型機が出てくる。

『どこだ! どこにいやがる!』

 通信機越しに耳障りな怒鳴り声が届いた。


 聖輝(せいき)は構わず矢を撃った。貫かれた犬頭の機体が倒れ、別の機体から怒鳴り声が響く。

『あそこだ! あっちだ!』

 その機体が自分のいる方を指さしていると見るや、聖輝(せいき)は木陰から自機を飛び出させ、敵へ突撃した。

『一機かよ! しゃらくせぇ!』

 残党どもが殺到してくる。


 先頭の敵機をすれ違いざまに一閃。

 次の敵機を剣で貫き、その横にいた敵の刃を盾で受け止める。

 回り込もうした敵を逃さず横蹴りで転倒させ、剣を引き抜いた勢いを利用し叩き斬った。

 元皇騎士団のエース格と、魔王軍雑兵の生き残りでは、数の差が問題にならない技量差があった。



『ウギャア!』

 爆発! 表に出て来た敵機は全滅した。

 聖輝(せいき)は油断なく構え、しばし基地の動きを覗う。


 何も出て来ない。敵はケイオス・ウォリアー全てを使いきったようだ。

 だが中に生き残りがいないとも限らない。聖輝(せいき)は物陰で機体を降りると、基地の入り口から侵入する。



 剣を手に通路を進む聖輝(せいき)

 すると——なぜか、自分の中へ訴えかける声のような物を感じた……気がした。

(何か……こっちにある、のか?)

 他に目印も無いので、その感覚に従ってみる。警戒はしていたが……それ以上に惹かれる何かがあった。

 ほどなく、長い通路の真ん中で立ち止まる。


 壁だ。

 しかしその向こうから感じるモノに従い、手を伸ばす。

 細い割れ目があった。巧妙に隠された蓋も。その中に小さなレバーも。

 レバーを下すと……壁が開き、扉が現れた。



 扉の向こうは巨大な空間だった。

 壁際に一機のケイオス・ウォリアー。量産型ではない。

 扉の脇にテーブル、その上にマニュアル。薄っすらと埃がかぶっている……長いこと誰も触れてないらしい。

(残党どもはこの部屋を知らなかったようだな)

 聖輝(せいき)はマニュアルに急ぎ目を通した。


 その顔色が読み進めるに連れて変わっていく。

 眼に異様な輝きが灯りだした。

「これが、あれば……」



 インタセクシルには魔法がある。回復魔法も、その最上級呪文として蘇生魔法も。

 だが死からの復活には厳しい条件がある。遺体が欠損している割合、経過時間、生前の生命力……それら次第で、元々高くはない成功率が急激に落ちる。そして一度失敗すれば遺体は消失し、二度目は無い。


 だからそれら条件を問答無用でクリアでき、確実な復活を約束するアイテムは、秘宝として伝説になるのだ。

 その数少ない一つが【ケプリケペラ】。六つに別たれ、魔王軍の試験機に組み込まれた蘇生の宝飾。



「これが、あれば……」

 聖輝(せいき)の脳裏に浮かんでいた。今まであえて忘れたふりをしていた記憶が。

 ナーラー国が滅んだ、あの日。吹き飛ばされ川に落ちながら見た最後の光景。

 エルミオネ姫も乗っていた陸上艦……人造の巨大な鹿が、灼熱の流星で粉々になる様を。


 王族のいた貴人席のある背中に、まともに光が命中し、抉って焼いて砕いた一瞬を。

設定解説


【死からの復活には厳しい条件がある】


 遺体が無い時点で不可能に等しい。

 ドラゴンの糞に蘇生魔法をかければ食われた被害者が生き返る世界もあるのかもしれないが、この世界の蘇生魔法では無理である。

 この話の姫のように「大爆発で粉々になった」場合でもほぼ不可能であろう。

 生き返りにはなかなか厳しい世界なのだ。

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