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アザラシまんじゅう

作者: 蒼井ココロ

 ◇1話 アザラシまんじゅうの始まり


 真っ黒な宇宙空間を真っ白な物体が、音速で真っ直ぐに進んでいく。

 真っ白で真ん丸なこの物体は、バレーボールほどの大きさをしている。

 そして左右と後ろに鰭のようなものがついていて、正面には目と鼻と口がついている。

 それから鼻の横には髭がはえていた。


 とてもとても長い時間と空間を移動してきた白い物体は、青い星を見つけた。

 その青い星は地球だった。

 スピードを落とすことなく星に近づく白い物体は、やがて大気圏に突入した。

 安全な突入角度もスピードも知らない白い物体の体は、衝撃を受けて粉々に飛び散った。

 破片は燃えたり宇宙へはね飛ばされたりしたが、いくつかの欠片が大気圏を突破した。

 そして再形成をして手のひらに乗るような、小さな元の姿になった。

 いくつかの小さな白い物体は落下をし続け、そのうちの1つが日本上空にやってきた。

 地上が近づくと3本の鰭をいっぱいに広げ速度を緩め始めた。

 そしてアパートの窓から部屋に飛び込むとテーブルの上に置いてあった小皿の上に、ぴょこんと収まった。


 そこへ、ランドセルを担いだ女の子が学校から戻ってきた。

「ただいまぁ〜!あ、かわいい〜アザラシまんじゅうだ!おいしそう!いただきま~す!」

 と何の躊躇もなくパクリと食べてしまった。

 そして、すぐに女の子はランドセルを置いて遊びに出かけてしまったのだった。



 ◇2話 アザラシまんじゅうの故郷の星


 ここは地球からずっとずっと離れた遠い宇宙の青い星。

 青い空と青い海と白い陸地が広がっている。

 白い陸地と思われたが、陸地いっぱいにアザラシまんじゅうがひしめき合い、地面から15センチほどバウンドしながら動き回っている。


 アザラシまんじゅう達が一斉に「クークー、キューキュー」と鳴き始めた。

 すると海から人間の子供の姿をした女の子が上がってきた。

 全身白いベールを身にまとい、天使のような微笑みをたたえながら、アザラシまんじゅうの中を歩いて行く。

 アザラシまんじゅう達は、微笑みの女の子の周りを歓迎するかのように嬉しそうに飛び跳ねている。

 ひときわ高く飛び上がった一匹のアザラシまんじゅうが、女の子の手のひらに乗った。

 微笑みの女の子は両手でアザラシまんじゅうを抱える。

 その満面の笑みからは、アザラシまんじゅうが大好きで可愛くて、慈しんでいることがとても伝わってくる。

 アザラシまんじゅうも微笑みの女の子を心の底から愛していた。

 とても尊い愛がそこにはあった。

 微笑みの女の子はそっとアザラシまんじゅうに口を近づけた。

 アザラシまんじゅうは目を閉じた。

 そして微笑みの女の子は、アザラシまんじゅうを食べてしまった。

 アザラシまんじゅう達は変わらず微笑みの女の子の周りを嬉しそうに飛び跳ねている。

 微笑みの女の子は、また優しい笑みを浮かべながら歩き出した。


 しばらく歩くと微笑みの女の子の表情が変わった。

 何か落ち着かない面持ちでしゃがみ込むとアザラシまんじゅう達は微笑みの女の子を取り囲んだ。

 ぷ〜う。。。辺りに間抜けなオナラの音が響いた。

 アザラシまんじゅう達はさらに微笑みの女の子を取り囲み、その姿が見えなくなってしまった。

 しばらくして微笑みの女の子は立ち上がると海へ歩き出した。

 その顔には天使の微笑みが戻っていた。

 微笑みの女の子がしゃがんでいた辺りには、豆粒ほどの小さなアザラシまんじゅうがたくさんいた。


 この星には与える一方の愛と受け取る一方の愛、そして生み出される愛が繰り返されている。

 見返りや駆け引きなどなく、純粋な愛だけが存在していた。

 アザラシまんじゅう達と微笑みの女の子は穏やかな愛に包まれて、この星で暮らしている。


 でも中には、無性に冒険心に駆り立てられるアザラシまんじゅうが稀に現れる。

 物思いに空を見上げることが多くなり、ある日ポヨンポヨンと小刻みに飛び跳ね始める。

 だんだん飛躍が高くなる。

 そのジャンプが始まると他のアザラシまんじゅう達は「クー!クー!」と鳴き声を合わせて応援を始める。

 どんどんジャンプは高くなり、最高潮に達すると空へと舞い上がって、そのまま宇宙へ飛び出して行く。

 そして宇宙空間を自在に飛行し、愛に満ちた新天地を探す冒険の旅に出るのだ。


 ◇3話 新天地「地球」


 故郷の星に似た青い星を見つけたアザラシまんじゅうは、どんなに期待して地球を新天地としたのだろう。

 バラバラに落下した、いくつかのアザラシまんじゅうは、どうなったかというと。

 あるものは落下中に鳥に食べられ、あるものは海に落ちて魚に食べられ、ジャングルに落ちたものはサルに食べられた。

 アジアに落ちたものは野良犬に食べられ、ヨーロッパの町中に落ちたものはホームレスに食べられた。

 食べられるということが、与える究極の愛の形だとアザラシまんじゅうは感じているのだ。


 ただ1つだけすぐに食べられることのないアザラシまんじゅうがいた。

 落下スピードをうまくコントロールできずに、地面に叩きつけられたアザラシまんじゅうは瀕死の状態だった。

 そこはアメリカの広大な小豆畑の真ん中だった。

 アザラシまんじゅうは、人にも動物にも見つけられず青い空をただぼんやり見上げ、最期の時を待つのだった。

 そして力尽き死んだ。


 その体は腐敗していき土の一部となり小豆畑の栄養となった。

 そう、このアザラシまんじゅうも微生物よって食べられ分解されたのだ。


 ◇4話 アザラシまんじゅう商品企画


 日本の大手和菓子メーカーで新商品の開発会議が行われていた。

 開発担当の中堅男性社員がいた。

 アイデアはどれも垢抜けず、ダメ出しばかり食らっていた。

 今日もどの企画も通らず頭をかかえた。

 男性社員は仕事を終えると家族の元へ帰宅した。

「ただいま!」

 と元気な声で玄関ドアを開けた。

 男性社員は仕事の気分を家庭に持ち込まないと決めていた。

 小学生の娘に声をかける。

「今日の学校はどうだった?」

 娘は父親の質問には答えずに質問で返してきた。

「アザラシまんじゅう、すごく美味しかったよ!お父さんの会社のおまんじゅうだよね?」

 すると母親が出てきて

「この子、学校から帰ってきたらテーブルの上に置いてあったアザラシまんじゅうを食べたっていうの。美味しかったから、また食べたいっていうの。でも、そんなおまんじゅうは用意してないのよ。」

「食べたもの!お父さんの会社の試作品とかじゃなくて?」

 と娘がいう。

「え?!アザラシまんじゅう?どんなおまんじゅうだった?」

 と父親が聞くと

「このくらいの大きさで。。。」

 と手のひらを見せて

「上用饅頭みたいな大きさで、真っ白で、真ん丸のかわいいアザラシの形で、中の餡は小豆のこし餡なんだけど、どこかクリーミーな味わいだったよ!とにかく美味しかったの!また食べたい!食べたい!食べたーい!」

 父親は娘の話を聞きながら胸の高鳴りを感じた。

「作るよ!また食べれるよ!」

 男性社員は答えると目が輝くのだった。

 この胸の高鳴りを感じるのは、男性社員だけではなかった。

 女の子のお腹の中で消化されているアザラシまんじゅうも一緒だった。


 お腹で消化されたアザラシまんじゅうは、あくる朝には女の子の体内から排泄され、トイレから下水処理場へ流された。

 下水処理場の浄化槽をいくつも渡って、水の一部になったアザラシまんじゅうは川に流され海に流れ着いた。

 そして海水の一部となって水蒸気になると雲になり、雨となってやがて地球上に降り注いだ。

 動物に食べられたすべてのアザラシまんじゅう達もみんな消化され、排泄されると土の栄養になって地球に浸透していった。


 ◇5話 アザラシまんじゅう量産開始


 男性社員の新商品アザラシまんじゅうは、みごと企画会議を通過した。

 アザラシまんじゅうの小豆餡はアメリカの小豆を使うことになった。

 そう、アザラシまんじゅうの1つが墜落した、あの畑で作られた小豆が使用されることになったのだ。

 試作品のアザラシまんじゅうが出来上がると男性社員は家に持ち帰った。

 娘に食べさせると

「美味しい!やっぱりお父さんの会社のおまんじゅうだったんだね!」

 と嬉しそうに食べた。


 売り出されたアザラシまんじゅうは、あっという間に話題になり人気商品となった。

 中国や韓国にも輸出されるようになった。

 さらに見た目の可愛さやクリーミーな味わいが欧米にも受け入れられ、日本を代表するお菓子の地位を得た。

 日本のアザラシまんじゅう工場は生産も輸送も追いつかず、国外にも工場を建設することになった。

 世界でアザラシまんじゅうを知らない人はいないくらいに人気は広がっていった。


 ◇6話 アザラシまんじゅうの鳴き声が聞こえる


 世界中でアザラシまんじゅうは食べられ、世界中の人が排泄したものが、世界中の水や土に溶け込んでいった。

 その大地や水で育った小麦やサトウキビなどが、アザラシまんじゅうの材料となっていく。

 量産されたアザラシまんじゅう内のアザラシまんじゅう濃度が徐々に高くなっていった。

 そんなことを人間達は知るよしもなかった。


 ここはある住宅の台所の棚の中。

 忘れ去られたアザラシまんじゅうが、消費期限を迎えようとしていた。

 アザラシまんじゅうは小刻みに振動し始めた。

「クー、クー。。。」

 アザラシまんじゅうが鳴いたのだった。

「クークー、クークー」

 何度も鳴いた。

 住人の女性が鳴き声に気がついた。

 台所に行き、棚の中から聞こえてくることを突き止めた。

 恐る恐る棚の扉を開けると鳴き声は止まった。

 女性はアザラシまんじゅうを見つけた。

「忘れてたわ。あら?今日が消費期限だわ。」

 と言うと、アザラシまんじゅうを食べた。

 この現象は世界のあちこちで、ほぼ同時期に始まっていた。

 最初は都市伝説のように語られていたが、だんだんそれが日常的になっていき、アザラシまんじゅうは消費期限を教えてくれる食べ物となっていったのだった。

 さらにしばらくすると消費期限を教えてくれる食べ物が、アザラシまんじゅう以外にも出始めたのだった。

 これは、水や土に含まれるアザラシまんじゅうの濃度が増していき、地球で育った植物に影響を与えたからだ。

 植物由来のパンやジュース、お菓子などの加工食品が食べることを忘れられていると「クークー。。」と鳴いて教えるようになった。

 人間に忘れ去られようとする食品をアザラシまんじゅうの鳴き声が思い出させてくれた。

 世界中の人々が食品ロスを意識できるようになって、捨てられる食品がなくなっていった。


 海洋学者や地質学者達は海水や土の微粒子の中を飛び回る微細なアザラシまんじゅうを見つけていた。

 世界中でニュースにもなったが、悪影響を与えていないことから騒がれることはなかった。

 地球に浸透したアザラシまんじゅうが影響を与えたものは、植物だけではなかった。

 この頃から、地球環境が徐々にアザラシまんじゅうによって改善されていたのだった。

 水や土、大気の汚染が除去され、海洋プラスチックまでも分解され、気温が安定して異常気象がなくなった。干ばつや水不足もなくなり、作物は大地で豊かに育った。疫病の発生も激減した。

 しかし、これがアザラシまんじゅうのお陰だとは誰も気づかなかった。

 人間達は自分たちの改善努力が実を結んだとしか考えていなかった。


 ◇7話 愛と悲しみ


 アザラシまんじゅうの鳴き声は食品ロスを大いに削減した。

 人間たちもその鳴き声が可愛かったし、便利に思っていた。


 人の心は移ろいやすいもの、流行りなど継続しない、永遠に変わらないものなんて地球上には存在しない。

 アザラシまんじゅうは、そのことを知らなかった。

 そしてアザラシまんじゅうの人気もかげり始めていた。


 ここは一人暮らしの男性のアパート。

 冷蔵庫の中から「クークークー」と鳴き声が聞こえる。

 扉を開けた男性が、消費期限を迎えようとするアザラシまんじゅうを見つけた。

 冷蔵庫には5個入りのケースに入ったアザラシまんじゅうがあった。

「ああ、忘れてた。。。もらったんだった。俺、甘いの苦手なんだよね〜」

 と言いながら、アザラシまんじゅうを手に取ってみたけれど冷蔵庫に戻してしまった。

 明くる日も明くる日もアザラシまんじゅうは冷蔵庫で鳴き続けた。

 とうに消費期限は過ぎてしまった。

 そして男性はごみ捨て日の朝、鳴き続けるアザラシまんじゅうを他のゴミと一緒に、ゴミ袋に入れて捨ててしまったのだった。

 ゴミを回収したゴミ収集車の中では、アザラシまんじゅうの鳴き声が聞こえていた。

 それは男性が捨てたアザラシまんじゅうの鳴き声だけではなかった。

 消費期限を迎え、捨てられた他の加工食品からも聞こえていたのだ。


 だんだん人間達にとって、消費期限を教える鳴き声は面倒に思えるようになってきたのだった。

 鳴き声を無視して、次第に罪悪感も薄れていき、食品ロスは以前の水準に戻りつつあった。

 大量に製造されたアザラシまんじゅうは在庫を余らせていった。

 消費期限間近になったアザラシまんじゅうも店舗で廃棄されるようになっていった。

 ゴミ焼却炉の中で、アザラシまんじゅうの鳴き声が聞こえる。

 鳴き声はやがて燃え盛る炎にかき消され、聞こえなくなった。

 燃え尽きて灰になったアザラシまんじゅうは、最終埋め立て地に運び込まれた。

 食べられず、忘れ去られ、捨てられ、燃やされ、灰になって、埋められる。


 どんなに無念だろう、食べられることで与えるだけの愛を喜びにしていただけなのに。

 その灰は、風に揺れているのか、それとも意識的に揺れているのか、虚しさが感じられるのだった。


 ◇8話 歪むアザラシまんじゅう


 アザラシまんじゅうを最初に食べた日本の女の子が学校から戻ってきた。

「お腹すいた〜!ママ、おやつは?!」

「ずっとこないだからアザラシまんじゅうが鳴いてるわよ。食べてよ。」

 と母親が言った。

「え〜、違うおやつがいい。」

 母親は、お皿に乗せたアザラシまんじゅうを女の子に持ってきた。

「はい、食べて。」

「だって、飽きちゃったんだもん。違うの出して!」

 と女の子は言うとアザラシまんじゅうを突っぱねた。

 その勢いで、お皿のアザラシまんじゅうが床に転がってしまった。

 ころころ転がるアザラシまんじゅうを母親と女の子は見ていた。

 アザラシまんじゅうが後ろ向きに止まった。

 そして、震えたように思えた。

 2人は息を飲んだ。

 後ろ向きだったアザラシまんじゅうは、ゆっくりと振り向いた。

 落ちた衝撃からか、可愛いアザラシまんじゅうの顔はやや歪んでいた。

 その歪んだ顔は、ゆっくり変化していった。

 可愛かったその顔は、悲しみに満ちた表情になった。

 女の子が近づこうとすると母親が怪訝な面持ちで止めた。

 するとアザラシまんじゅうの顔は、目と口がつり上がり眉間にシワが深く刻み込まれ、一気に怒りの顔に変化した。

「きゃー!!」

 女の子と母親は、その恐ろしい顔に悲鳴を上げて部屋を飛び出した。

 世界中のアザラシまんじゅうの形相が一変した瞬間だった。


 このアザラシまんじゅうの変化を合図にしたように、最終ゴミ埋立地の上空に雲が集まってきた。

 雲は渦を巻き、強い風が吹き始めた。

 風に巻かれて大量の灰が舞い上がっていく。

 灰色の大気が辺り一帯を埋め尽くしていった。

 雲は静電気を帯び始め、雷鳴が轟いた。

 灰色の大気は巨大な壁のように街に襲いかかった。

 逃げ惑う人間達を灰は飲み込んでいった。

 この灰は世界のいたるところで現れ、同じように街を襲った。


 全世界で海面が低下し始め、猛スピードで海水が蒸気に変わっていった。

 蒸気は巨大な雲となって、地球上を覆った。

 嵐が吹き荒れ、人間達は何が起こったのか分からず、逃げ場もなく右往左往するだけだった。


 ◇9話 愛のかたち(最終話)


 そのころ、アザラシまんじゅうの星で1匹のアザラシまんじゅうが悲しげに鳴いた。

「クー。。。」

 周りのアザラシまんじゅう達も鳴き始めた。

 その声に反応したように、海から微笑みの女の子が上がってきた。

 微笑みの女の子の姿を見るとアザラシまんじゅう達は落ち着いたように静かになった。

 少し困ったような表情をした微笑みの女の子は空を見上げ、手を合わせた。

 合わせた手を開けると手の中には、一本の注射器があった。

 注射器の中には淡い桃色の液体が入っていた。


 地球の地下深くから低い地鳴りが聞こえ始めた。

 その地鳴りは、まるで重低音のあの鳴き声だった。

「クー、クー。。。キュー、キュー。。。」

 この地鳴りを聞いた人間たちは、地球に浸透しているアザラシまんじゅうのことを思い出したのだった。

 アザラシまんじゅうの与える一方の愛が、すべてを奪う憎しみとなった。

 地面が揺れ始め、世界中で地割れが起こった。

 巨大な津波、砂嵐、竜巻、洪水、あらゆる災害をアザラシまんじゅうは操り、人間達の築き上げた文明を容赦なくなぎ倒していった。

 与えたものを一気に回収するかのように、今まさに地球を飲み込もうとその勢いは最大になった。

 その時、黒雲渦巻く空に現れた巨大な手。

 その手には注射器が握られていた。

 注射器は地球に刺さり、淡い桃色の液体が注入されていった。


 地震も嵐も止み、空は澄み渡り、津波や洪水も引いていった。

 地球上は静寂の世界になった。

 ビルが倒壊し廃墟となった街のいたるところから生き残った人間達が這い出してきた。

 すべてが止まったかのように何も聞こえない。

 次の瞬間、地球上から無数の白い光の糸が北の空に向かって伸びていった。

 無数の光が一点にまとまると大気圏を通り抜け、宇宙空間に出た。

 地球のすぐ外の宇宙には、地球を抱えられるほどに大きな微笑みの女の子がいた。

 光は、微笑みの女の子の手のひらに乗るほどのアザラシまんじゅうになった。

「クークー」

 とアザラシまんじゅうは、微笑みの女の子の手のひらに乗って鳴いた。

 優しい笑みを浮かべて、微笑みの女の子はパクリとアザラシまんじゅうを食べた。

 そして微笑みの女の子は、一点の光となって消えた。


 地球からアザラシまんじゅうは除去され、人間達は救われた。

 人間達は多くを失ったが、清浄化された地球が戻った。

 この先の人間達は、アザラシまんじゅうが残した地球を保つことができるだろうか。


 アザラシまんじゅうの星では、今日も微笑みの女の子とアザラシまんじゅう達の穏やかな、究極の愛に満ちた日々が続いている。

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