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【52】推理――犯人は誰? その1

 宿の特別室に帰ってくると、部屋に用意してある紅茶道具の一式を使って、アメリが得意の生活魔法であっという間にお茶の支度を整えた。


「みんな、疲れたでしょう?」


 そう言って、一昨日アルマンの街で買ってきたという白いメレンゲクッキーを出してくれた。アメリは趣味のスイーツ店巡りをして、あれこれ買い込んできていたの。

 パーティである程度食事を済ませていたから、これぐらい軽いものがちょうどいい。

 メレンゲクッキーって、少し歯応えある独特の柔らかさに(とりこ)になっちゃうのよね。

 あら、これただのメレンゲクッキーじゃなくてオレンジ味だわ! オレンジの香りが爽やかで適度な甘さがあって美味しい。さすが、アメリのスイーツ選びは気が利いているわね。


「これ、メロン味だね? アメリちゃん美味しいよ!」


 喜ぶアクティス。

 え? メロン味?


「俺はイチゴだったぞ?」

と不思議そうなブロデイン。


「うふふ、面白いですよねぇ? 実はこれ、それぞれ違う果汁が使ってあるんですって!」


 アメリが人差し指を立てながら、その反応待ってましたとばかりに嬉しそうに説明する。メレンゲクッキーには、卵白に果汁を混ぜ込んで焼き上げてあるそうなの。見た目はみんな白かったけれど、よく見るとほんのり色付いていたわ。


「よく見てくださいね? 殿下は、緑色のメロン味にしたんです」


「本当だ面白いね! アメリちゃん、これどこのスイーツ?」


「歌劇場の近くで、コジコーヌっていうとこです」


「あのシュクレームで有名なところ!? へぇこんなのあったんだ、今度買おうかな」


 そんな話題で盛り上がっていると、馬車を宿に預けたジオツキーが戻ってきた。ジオツキーはアメリが勧めたメレンゲクッキーを上品に口に運ぶと、すぐに話を切り出した。

 

 ……ジオツキーが食べたメレンゲクッキー、何味なのかすごく気になったんですけど。


「それで、パーティ会場で何があったんですか?」


 淡々と話を進めるジオツキーにそんなことを訊けるわけも無く、私は薔薇園での出来事を伝えた。


「ええっ? そんなことがあったんですか!? フェリカ様、怪我とか、ドレスとか、御髪とか、大丈夫だったんですかぁ?」


「それがね、(かば)ってくれた人がいて大丈夫だったのよ。それに風魔術であらかた吹き飛ばしたし」


「ええっ、庇ってくれた人って……? きゃあ、それってもしかして男性ですかぁ?」


 口元に両手を当てて目をキラキラさせるアメリを無視して、ジオツキーが私に意見を求めた。


「フェリカ様はどう考えてるんです?」


悪戯(いたずら)、……とは言えないものね?」


 事を荒立てたくないから、大事に考えたくは無いけれど……


「悪戯でそこまでの魔術を使うか? 誰だ、そんなことしやがって……!」


 ブロディンが見えない魔術者に憤慨して、拳で殴る振りをする。


「でもそんな恨みを買うような心当たりは無いもの。パーティで知り合った人とは楽しく会話したのよ? それにほとんどアクティスの話ばかりだったし」


 アクティスが申し訳なさそうに、肩を(すく)める。


「フェリカ様は、『大人気俳優アクティス・レジェ―ロ』にエスコートされてるんですよ? 妬まれているのかもしれません。何か思い当たりませんか?」


 ジオツキーの問いかけで、アメリが思い出す。


「フェリカ様、昨日楽屋で会ったヤトキン嬢は? パーティに居たんでしょう?」 


 私は思わずアクティスと顔を見合わせた。


「まあ確かに、私のことは良くは思ってないだろうけど……まさかそこまでしないんじゃないかしら? だってパーティの主催者なのよ?」


「彼女は僕のファンだからね……癖はあるけど純真な子だよ? あまり悪く考えたくはないな」


「……二人とも、甘いですね」


 ジオツキーは、私とアクティスに冷たい視線を向けた。


「そんなことでは犯人は見つけられませんよ?」


「……わかったよ、ジオツキー。じゃあエルムである可能性もあるとしよう。でも他にも僕のファンはいたからね、その誰かかもしれないよ?」


 そうね、アクティスのファンはとても沢山いたもの……。

 それから私は、さっきから思っていることをジオツキーに提案してみた。


「私、パーティの一件は歌劇場の事件と無関係ではないような気もするのよ」


「どうしてそう思うんです?」


「えっ? ただなんとなくよ、最近事件が続いているし……」


「――明確な理由が無いのはどうかと思いますが、まあ確かにその可能性は否定できません」

 

「お嬢は、パーティの事件もクィーンの仕業だと言いたいんだな?」


 私はブロディンに頷いた。


 だって、こんなに次々事件が起こるんだもの。ジオツキーには理由が無いと言われてしまったけど、そうだと思ってしまうわよね……?





お読みいただきどうもありがとうございます。


モジるのが好きな作者ですが、某有名な『コジコーヌのシュクレーム』美味しいですよね! 元ネタおわかりになりましたか?


昨日ご案内した、前作のラストシーン読んでくださった皆様、電光石火の速さすごいです(@_@)&ありがとうございますm(_ _)m まだの方もお暇なときにでも覗いてみてください♪


次回【第53話】推理――犯人は誰? その2




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