【43】さあ婚活本番!
私はアクティスに連れられて、広いホール内のあちこちで紹介をしてもらったわ。
そのアクティスが、余興の始まるまではと一旦ホールから退けたので、私はいよいよ一人で行動することになったの。
さて、ここからが私の婚活の本番よ!
私は背筋を伸ばして深呼吸すると、ホール全体を見渡したわ。
こんなに沢山お相手候補がいるんだもの。今日こそお相手ゲットするわよ、フェリカ!
私は拳をギュッと握って、自分で自分を奮い立たせたわ。
まず一番最初にすることはね、飲み物を手に取るの。
ちょっと意外? でもこれ、マストアイテムなのよ。
お互い初対面同士だもの、スムーズには話せないはず。話題に詰まったら飲んで場をやり過ごせるし、飲むふりをしながら話題を考えられるから、お相手と話す前にまずグラスを手にしておくのは大事なの。
なので、給仕を呼び止めて、量の少ない飲み物をもらう。この量が少ないって、ポイントよ。
どうしてかっていうとね、一緒にお話した人ともうちょっと話したいなと思ったときに、グラスをさっと空にして『次に何か飲みません?』とお誘いすることもできるでしょ? 逆にイマイチだなってときは、空になった飲み物を言い訳に失礼できるってわけ。
ただね、量の少ない飲み物は強いお酒が多いから、そこは気を付けて選んでね。だってダンスを踊るかもしれないでしょう? 私はね、いつも慎重に選んでいるせいか、あまり酔ったことは無いのよ。
それから、何か食べておくことも大事よ。私は近くのテーブルに置いてあったカナッペを少しつまんだ。胃が空っぽだとお酒も回りやすいし、もしお腹が鳴っちゃったら恥ずかしいじゃない?
私はホールをぐるっと観察する。
えーと、私とフィーリングが合いそうな殿方は……
口を動かしながら、目は凝らす。
すでに男女二人で話している者もいれば、グループで談笑している者、私のように食事している者もいれば、壁に立って様子を見ている者もいた。
……私だって昔はね、もっと恥じらいある少女だったのよ?
こういうパーティの時どうすればいいかわからなくて、恥ずかしくて誰にも話しかけることも出来ないから、ずっと壁の華になってたわ。緊張のあまりに全然タイプじゃない人と話しちゃったりとか。
繰り返し参加しているうちに(コ、コホン!)こうしたパーティに慣れてきちゃって、勇気を出して話しかけられるようになってしまったわ。おまけに誰に声をかけようかしらなんて、図太く考えられるようになっちゃった。
私は食べるふりして、ホールの男性たちをしっかり観察した。広いホールだから奥の方も確認する。
お相手ってお顔で選んでいる人も多いみたいだけど、私はお顔だけじゃなくて、どちらかというと佇まいとか衣装の趣味がある程度私にしっくりくるかっていうところで選んでいる。
そうね、その人の醸し出す雰囲気があるじゃない? 雰囲気で選んでいる気がするわ。
あっ、あの人! いい感じがするわ!
私は、奥の方になんとなくいい雰囲気の人を見つけたの。
壁の傍に一人で立っていて、あまり目立たないようにしているような様子だったわ。
私も本来はそういう気持ちだから、似た者同士っていうか、ああいう人が目に留まっちゃう。
服の趣味はここからではさすがに遠くて見えなかったけど、全体に黒っぽい服装をしているようだった。あまり派手な色合いでないのも、イイかなって。
さあ、好みの雰囲気の男性のほうへ移動開始よ! と思ったら、ふいに横から声をかけられた。
「私も、貴女と同じものを私も貰おうかな」
「はい……?」
隣を見ると、キラリと眩しい笑顔で、結構な至近距離から微笑みかけくる男性がいた。
「このカナッペ、美味しいですね。きっと美しい貴女が隣にいるから、そう感じるのかもしれませんが」
うっわ~っ、気障!
しかも距離近すぎない? それにその真っ白すぎるスーツ……引いちゃうわ。
「よかったら、少しお話しませんか?」
と誘われたけど、私は笑顔を無理矢理作りながら、ここはやんわり断ろうっと決めた。
「ありがとうございます。でも私ちょっと……」
お断りしかけたら、男性が私の言葉を遮ったわ。
「ああ、大丈夫ですよ? そう言うことじゃないから」
え、どういうこと?
『大丈夫ですよ、そう言うことじゃない』って……?
……じゃあ、どういうこと?
その気障な男性は好奇心いっぱいの瞳で私を見て、口を開いた。
「実は私、俳優のアクティス・レジェ―ロの大ファンで! ねえ、ちょっと聞きたいんだけど、彼の素顔ってどんな人!?」
お読みいただきありがとうございます!
次回【第44話】人気俳優アクティス・レジェ―ロの魅力













