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【31】役者たち その1

 私たちが歌劇場に戻ると、ミカを心配していた支配人マルコス、それにジュリエット役のスピア、『白竜の鱗』で回復したクララがすぐに話を聞きにやってきた。

 

 私はミカがクイーンから贈られた手鏡の魔道具によって、()()()()()にかけられ、劇場に来れなくなってしまったと説明したわ。

 ミカが老婆の姿に変えられてしまったことは、私はどうしても皆に話すことはできなかったの。……だって、同じ年頃の女性として、他の人には知られたくないんじゃないかしらって思ったの。そしてミカを魔術聖殿にお願いしたと説明した。

 きっと彼等は、このカルド国の魔術聖殿に預けたと思うはず。夢にもトゥステリア王国の魔術大聖殿とは思わないでしょうし、そのほうが私も自分の出自を詳しく説明しなくていいしね。

 幸いみんなそれ以上質問しなかったので、助かったわ。


 楽屋は今夜の公演のために動き出していた。人がひっきりなしに出入りして準備が着々と進められていた。

 私はあのあと『クイーン』から何か届いていないか心配になって、クララに訊いてみた。


「今のところ、何も来ていません」

 

 少しだけ安堵した表情でクララは答え、そしてスピアに尋ねた。


「そういえば、スピアには届いてないの?」


 スピアがあの主演女優の魅力的な笑みを浮かべながら答える。


「私に、クイーンから? いいえ、私には贈り物もカードも来ていないのよ。そういえば殿下、あなたには来ていないの?」


「いや、僕のとこにも何も来てないよ?」


 とりあえず、今この三人にはクイーンからは何も届いていないのね。

 私はとりあえずホッとしたわ。


「マルコスさん、念のため他の出演者にも聞いていただけます? それからクララさん、今日の舞台は出演されるんですの? またクイーンに目をつけられてしまうかもしれないんですよ……?」


「フィーさん、ご心配ありがとう。でも私、出演するわ。ミカには悪いけどこれは私には大きなチャンスだし、ミカも私がきちんと勤め上げることを望んでるはずよ。それに舞台を成功させるのは、代役の私の責任だと思うの」


 アクティスもスピアも、クララの決断を止めることもくな見守っていた。

 役者たちは、きっと自分の仕事を愛してるし、誇りを持っているのね。舞台をなんとしてでも成功させようという強い熱意が伝わって来たわ。

 

 スピアとクララが楽屋に戻っていくのを見送るアクティスの顏には、さすがに疲労の色が浮かんでいた。


「ねえアクティス、一休みしたほうがいいんじゃない?」


「うん、さすがに疲れたから、悪いけどそうさせてもらうね。公演まで時間があるから少し休むよ。こんな状態だけどお客さんにはベストな僕を楽しんでほしいしさ」


「殿下! おやすみなさい!」


 笑顔で手を振るアメリに、アクティスは親譲りの二枚目レジェ―ロ伯爵そっくりの輝く笑顔で手を振り返すと、自分の楽屋のドアを閉めた。


「はぁ~、フェリカ様、殿下ってやっぱりカッコイイですよねえ」


 アメリは胸の前で両手を組んで、目を輝かせる。


 アメリの気持ちはわからないわけではないけど、昔からアクティスを知っている私は淡々と返事をしたわ。


「そうね、あそこの親子は美形だから」


「フェリカ様、なんともないんですか?」


 アメリが不思議そうに私を見て訊ねてきた。


「アメリ、なんともないって、何が?」


「――うーん、そういうとこなんですよねえ……」


 アメリが腕組をして溜息をついている。


「? ねえ、そういうとこって、何が?」


 それを耳にしてブロディンも私に話しかけてきたわ。


「お嬢、オレでもあいつの(まぶ)しさわかるぞ?」


「ですよねぇ?」


 二人でこそこそわかりあっちゃって。

 なによお、その私だけ除け者にした感じ?


 私は二人が何を言っているか、イマイチよくわからなかったわ。




お読みいただきありがとうございます。


物語が少しでも面白いな、続きが読みたいなと思われましたら、ブックマーク、★、感想で応援よろしくお願いいたします(^^)/


次回【第32話】役者たち その2

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― 新着の感想 ―
フェリカにとってアクティスはあくまで「同級生」なのですね。 容姿で人を判断しない、とてもいいことのはずなのに。 号泣マークを押したくなる残念振りが、なんともフェリカらしいです。 それにしても。あのお…
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