表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/76

【20】黒魔術は使うべからず その1

「ガキのお守りは疲れるな。やっぱり大人の女は違うなと思っただけだ」


「ブロディン酷い!‥‥‥私たちのこと、そんな風に思ってたの?」


 アメリはこれ以上大きくならない位に目を見張った。


(わり)いな、アメリ」


 ショックを受けたアメリの団栗眼に、みるみる涙が溜まる。


「ほんと、ガキはうざいわよね~! アンタ、話が分かるじゃないの!」


 ブロディンに手を握られて、女店主がはしゃぐ。

 ブロディンが女店主の耳元で何かを(ささや)くと、女店主の目は夢見心地になった。


「オレは、ここで悪しき悪戯を買ったやつの情報が欲しい。それさえわかればオレの今日の仕事は終わりだ。あとはここでゆっくり過ごせるぞ」


「じゃあ教えてあげる」


 甘い声の女店主。 

 すっかりブロディンに入れ込んでしまったみたいだったわ。


「何日か前に、『悪しき悪戯』を買いにきた若い女がいたよ。お奇麗なひらひらドレスを着てて、クソ生意気な態度だったわね……ああ、あの女思い出しても腹が立つ!!」


 女店主はカウンターを悔しそうにドンドンと叩いた。


「どんな顔をしてた?」


 女店主はカウンターを叩いていた手を止めて、うっとりブロディンを見つめる。


「ん~、わからないわ。フードを被っていたから」


「その娘は何か言ってなかったか?」


 ブロディンが女店主に距離を縮めて問う。


「あら、やっぱりアンタ近くで見ると相当いいオトコじゃないのお。うーんとねえ……確か、熱を加えても効果あるのかとか聞いてきたわよ?」


 女店主は私とアメリを見下げて、クスクスと(あざ)笑った。


「いったい何に使ったのかしらねえ? アンタたちの知り合いは、あいつにしてやられちゃったってわけね? ああ可哀そう!」


 あっはっはと高笑いの女店主。

 ジオツキーに抑えられたアメリが、ブロディンの心変わりに涙しながらも、女店主の侮辱に全身を震わせて怒っていたわ。

 

 私はまだ笑い続けてい女店主を無視して店のカウンターに進み出ると、小瓶を手に取って千リラ紙幣を三枚置いた。

 

 もうこれ以上、悪しき悪戯を買いに来た者の情報はわからないと判断したの。


「これ、いただくわ」


「小娘はこっちに近づくんじゃないよっ!」


 女店主は私を一喝した。そしてカウンターの紙幣を見ると、さらに目が吊り上がった。


「ちょっとなんだいコレ、三千リラじゃないか! 一万リラって言っただろ!? その小瓶を返しなっ!」


 私は女店主をまっすぐ見据えた。


「……あなたが売った『悪しき悪戯』のために、この『白竜の鱗』が必要なのよ?」


「だから何だって言うんだい? 1万リラでいいってこの男が言ったじゃないか!」


「確かに、私の従者はそのようなことを口にしたかもしれません。でも主人の私は承諾していません」


 背筋をピンと伸ばして声を張り、今度は私がぴしゃりと女主人に言い返した。


「一般的には千リラですから、いくら夜間とはいえ1万リラは法外すぎる金額では? それに悪しき悪戯は魔術法で違法薬物に指定されているのは、勿論ご存じですわね?」


「アンタたち……!」


 女主人は私とブロディンを見てはたと感づくと、ブロデインに噛みついた。


「おいっ、お前! アタシに何をした?」


(わり)いな。ちょっとだけ魅了魔術に付き合ってもらった」


 魅了魔術は相手に少しでも好意を感じていると、効果覿(てき)面だ。魅了魔術をかけられると、相手の望みを叶えてしまいたくなる。

 ブロディンは女店主に気がある振りをして、その魔術を使ったのだった。

 おそらく耳元で囁いたあの時ね。


「何だってえ? だからアタシ、アンタにあの女の話をぺらぺら喋ったのかい!」


「いいじゃないか、話したところで減るもんじゃなし」


 さっきまで好意を抱いていたブロディンに、いけしゃあしゃあと言われて、女店主は悔しそうにぎりぎりと歯噛みした。


「アタシを舐めんじゃないよ! とにかくその小瓶を返しなっ!!」


 女店主は憤怒して目を尖らせると呪文を唱えた。

 私の持っている小瓶を取り戻そうとしたのだ。

 



次回【第21話】黒魔術は使うべからず その2



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ