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目覚めたら死んでから10年経っていた、まずは国に帰ろう  作者: しろねこ。


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新たな家族

少年の話をすればレナンは当然泣き出した。


エリックは今までの経緯として、パルス国で気がついたら子どもの姿になっていたこと、親切な人に育てられ、やがてルアネドに助けてもらった事など、ざっくりとした内容しか伝えていなかった。


詳しい話をすれば心配を与えるし、こうして泣かれるのは目に見えていたからだ。


絶対に男娼にされかけた話はしたくなかった。


泣く予測はしていたのだが、ハンカチが追いつかない。


「そんな……そんな小さい子が、なんでそのような目に」

ずびずびと鼻水を啜りながら、レナンはエリックの話を聞いている。


「だからその子を助けるために、協力してくれるか?」


「わたくしに出来ることならば、喜んでするわ」

涙を拭きながら力強く答えるレナンににこりと微笑む。


「では、今夜ぜひ協力をお願いするよ」

そう言って侍女達を呼ぶ。


「何をするの?」

レナンの専属侍女ラフィアが答える。


「今宵はレナン様のお体をしっかり整えるようにと伺いました。今から徹底的にマッサージやボディケアを受けてもらいます」


「え? え?」

戸惑うレナンにエリックは侍女達の前ではっきり言う。


「久々に夫婦だけで過ごす本当の時間だ。二人の寝室で待ってておくれ」


「え?やっ、それって…」

意味がわかり、顔が赤くなる。


侍女達の中には顔を赤らめる者もいたが、声を上げるものはいなかった。


あれよあれよと言う間にレナンは連れてかれてしまう。


「では俺は残った仕事を片付けに行くが、ニコラには別で頼みたい事がある」


「何でしょう?」


「俺を売った人買い、あいつをここに連れてきて欲しい。頼みたい事があるからここに通して欲しいんだが、見つかれば処罰されるだろう。くれぐれも見つからないよう内密に連れてきてくれ」


「わかりました」

オスカーにエリックの護衛を頼むと、ニコラはすぐに姿を消す。


エリックが今考えていることを頼むのに、人選的に人買いが一番いいと思った。


どれくらいで見つかるか、今どこにいるのか皆目見当はつかないが、二コラならすぐだろう。







夜になり、エリックは夫婦の寝室へと来た。


自分とレナンの二人分の仕事を終わらせてきたので、明日は余裕だろう。


エリックはノックをし、許可を得て部屋に入る。


レナンは恥ずかしそうに毛布の中にいた。


「大丈夫、怖いことなどしないよ」

ベッドに腰掛け、レナンの頭を撫でる。



「怖いわけではないけど、緊張するわ。だって、久しぶりだもの」

恥ずかしさで顔を毛布で隠してしまう。


クスリと笑うとエリックは優しく声をかける。


「そうだな、久しぶりだ。だからこそ俺は今日の日を楽しみにしていたのだが、君は嫌か?」

悲しげにそう言えば、レナンが少しだけ毛布から顔を出す。


「嫌ではないけど、恥ずかしいの」

何年もそんな事などしていないし、年を取って変わってしまった体を見られるのは、恥ずかし過ぎる。


逆にエリックは若々しく、逞しい体つきのままなので、どうしても気が引けていた。


「恥ずかしがるレナンも可愛らしいな」

レナンの毛布を少しだけずらすと唇へキスをした。


柔らかく、少しだけひんやりとした感触に、ますますレナンは顔を赤くする。


体を強張らせ、身じろぎしたら、毛布を更にずらされた。


「やはり、綺麗だ」

薄い夜着からは白い肌が見えている。


恥ずかしさで目を逸らそうとするが、頬に手を添えられ、口づけされる。


「俺がレナンと一つになりたいのもあるが、少年を助けるため協力してくれると言っただろ? さぁ、しっかりと見せて」

仕方なしにレナンは、布から出る。


上品だけれど少し薄目の夜着を身につけている。


素材が薄く、白い肌が透けて見える。


「美しいよ、レナン……愛している」

エリックに抱きしめられ、緊張と期待にレナンは目を閉じた。










レナンが日の光を感じて目を開けると既にエリックはいなかった。


カーテンから入る日差しはだいぶ明るく、朝ではないことを示している。


喉の渇きを感じ、レナンは体を起こす。

体を見下ろすとしっかりと夜着を身につけられ、身も清められていた。


「お水飲みたい……」

サイドテーブルの水差しに手を伸ばすと、手紙が置いてあるのが見える。


エリックからのようだ。


まずは喉を潤そうと水を飲む。


柑橘系の味が微かに感じられ、気分がすっきりとした。


「何かしら」

手紙の封を開ける。


『レナンおはよう。昨夜は無茶をさせてしまってすまない、起きたらベルを鳴らして呼んで欲しい』

まだ眠たい目を擦り、レナンは手を伸ばしてテーブルに置かれたベルに触れた。


言われたとおりに鳴らせば、来たのはエリック本人だ。


「おはようレナン、体調はどうだい?」

優しくお腹をさすられ、レナンはまた赤くなる。


「今日は起きれないだろうと君の仕事は全てキャンセルした。キュアにもカイルにも伝えている」

エリックが直接話したのだろうか?


カイルとは仲が悪そうだったのに。


「ありがとう……」

小さな声でお礼を言えば、エリックはレナンを優しく撫でる。


「今日は起きなくていい、何かあれば俺が世話をするよ。大事な体だ、無理をしてはいけない」

そう言われ、もう一度レナンは目を閉じた。


まだまだ体は休息を欲している。









昨夜、レナンの意識が途切れる前に、エリックは魔法を使用した。


レナンのお腹が光り熱くなる。


「魂を移した、レナンの魔力も貸して」

エリックはそういうと手を取り、レナンのお腹に手を置かせる。


「この子の為に、元気に育つんだよと祈ってあげて欲しい。新たな人生を紡げるように」

汗を掻き、やや辛そうなエリックに言われるまま、レナンは祈った。


どうか幸せになって。


もう大丈夫、わたくし達が必ず守るから。


再び体が光り、ゆっくりと静まっていく。


その光景を見てエリックは安堵した。


「レナン、感謝する」

エリックは疲れ果てて、レナンの上に覆いかぶさった。


「すまない、もう力が出ない」

何とかレナンの横に体をずらし、見つめ合う。


レナンも体力の限界だ。


あっという間に夢の世界に落ちてしまった。








夢の中で現れた少年は、とても小さく体も透けている。


「ありがとう、僕を受け入れてくれて……」

この子がそうなのかと、レナンはしゃがみ込み目線を合わす。


「わたくしで良ければいいのよ。おいで」

エリックには似ても似つかない顔立ちだ。


でもこの子がいたから、エリックはまたレナンのもとに、生きて戻って来ることが出来た。


おずおずと抱き着いてくる子を、レナンは強く抱きしめる。


「辛かったわよね、もう心配ないからね」

じわりとレナンの目から涙が零れる。


自分の為に泣いてくれるのかと驚いたが、少年はそのままレナンの胸で一緒に泣き出した。


「うっ、ううっ……」

声にならない嗚咽が響く。


やがて二人が泣き止むと、少年の体が粒子となり、少しずつ消えていく。


「何で消えちゃうの?!」

叫び声をあげるレナンとは違い、少年は嬉しそうだ。


「大丈夫。お姉さんとお兄さんのおかげで僕は新しい命を貰えそうなんだ」

粒子はレナンの体に溶け込んでいく。


「またすぐに会えるから、だから、待っててね」

不安そうな少年を見て、レナンは胸を張り、約束する。


「ええ、待ってるわ。わたくし達はあなたを必ず幸せにするから、楽しみにしててね」

レナンの笑顔に少年も笑う。


「うん、楽しみにしている」

泣き笑いの表情をした少年の姿は、あっという間に見えなくなってしまった。


だが、レナンはその存在を確かに感じ、愛おしそうに自身のお腹を撫でている。


夢から覚めるまでずっと。







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